06.弱さと甘さと未来へと



「ぎゃぁぁああああああ!!!ちょ、ちょっと待って…!!シャチ早い!!」

「待ってろナマエ!!今この俺が助けてやるからな!」

「だったらその足を止めんかい!!」

大勢の人混みを掻き分けて前に進むこの足が鉛のように重い。「待てぇえ!」と背後から正義と書かれた白いコートを羽織って追ってくる大量の謎の集団に冒頭から死亡フラグが立ちまくっている。てか誰!?怖っ!あとどのくらいの距離を走れば奴等を撒けるのかと首だけ捻って状況を把握すると、撒くどころか倍以上にさっきより追手の人数が増えていた。えぇっ!?どっから湧いてきたのこの人達!しかも心なしか皆んな顔が似てるんですけど!?

「ナマエ!お前魔女だろ!?何か一発であいつらを倒せる魔法とかねぇのかよ!」

「ある訳ないでしょ!そんなの出来てたら今こんな状況になってる訳ないじゃん!」

「はぁっ!?まじ使えねー!!」

「一目散に逃げたシャチにだけは絶対言われたくないんですけど!?」

やたら逃げ足だけは早いシャチにやっと追いついて、2人して肩を並べたまま全速力で船へと向かう。ぎゃあぎゃあと互いに責任の押し付け合いをしながらも辿り着いたそこは、歓楽街を通り抜けた質素な古い町並みだった。人通りも少ない為か道の幅もやや広い。ここなら民間人を巻き込まずある程度は大きい攻撃を仕掛ける事も出来るだろうと脳内で思考を切り替えて急停止をし、そこに勢いよく振り返った。

「ヒナさん!あのキャップ帽を被った奴は七武海のトラファルガー・ロー率いるハートの海賊団のクルーです!」

「そう、ご苦労様。あの隣にいる少女は?あれも仲間?」

「はっ!それが我々の元にも彼女の情報は入っておらず、いまいちどういう存在なのか今の所不明でして…!」

「あっそう。役立たずね、もう下がっていいわ」

道の両脇に連なる大勢の追手達が真ん中だけを避けて額に手を当てたまま敬礼をしている。その中心核からカツカツとヒール音を響かせて登場したその美女は、面倒臭そうにシッシッと左右に手を振って他の者達を一瞬で黙らせた。口に咥えた煙草を燻らせながら「ヒナ、疑問」と呟いたその美女はシャチと私に「あんた達仲間なの?」と淡々と疑問を口にした。

「うっせぇ!そんな事海軍のお前等にいちいち説明する義務はねぇんだよ!」

「か、海軍…?」

「そもそもキャプテンは七武海だろうが!海軍と協定を結んでいる限りお前等は俺達に無闇に手は出さねぇ筈だろ!?」

海軍…七武海…全く聞いた事のないフレーズだ。とりあえず話の流れはよく分からないけれど、我らがローさんのお陰で通常ならこの人達に追われる身ではないとそれだけは理解出来た。

「坊や…世の中にはねぇ。理屈だけではどうにもならない事柄があるものよ。お前達が海賊である限り、正義を身に纏った我々海軍に例外はないわ」

「!」

「さぁ、さっさとその奪った物を此方に差し出して、潔く私の檻の中に捕まりなさい」

そう言って、美女は左右に手を広げて両腕の下から鋼鉄の黒い檻を一気に生やした。見るからに範囲の広いそれに内心青ざめていると「ひっ!」と小さく声にならない恐怖が襲い掛かってくる。

「わたくしの体を通り過ぎる全ての物は……禁縛される!!」

シャチと私を目掛けて捕獲するように腕を前に振りかざした美女の攻撃を何とか避けると、道端に転がったシャチと私の姿を確認して「ヒナ、心外」と彼女は心底悔しそうに呟いた。顔はとてつもなく美しいのにやる事全てがえげつない。何なのこの人!めっちゃラスボスって感じ!と大パニックになっている私の真横を大きな砲弾が派手な音を立てて横切っていった。

「って!考える暇もないじゃん!何これ何これ!いよいよ私の最期も近いって感じ…!?」

「ナマエ!こっちだ!ここに抜け道があるぞ!」

「!でかしたシャチぃ!今行くぅう!」

最早藁にも縋る想いで一目散にシャチの元へと駆け出した私に「お待ち!そこの少女!」と美女が声を張り上げる。誰が待つもんかとべーっ!と舌を出してヒラヒラと手を振ると「奴等を取り逃がすな!追え!」という掛け声と共に再び大勢の追手達が此方に向かってやってくる。いい加減面倒だと痺れを切らした私がそこに振り返ると、敵があともう少しで此方に手が届きそうな寸前の所で掌を前に翳して片眉をつり上げた。

「無駄足だったね!ご苦労様…!」

「!?ギャァアアアっ…!」

ニヤリと不敵な笑みを向けて掌から威力の強い攻撃魔法弾を放つと、あともう少しで私に手が届きそうだった追手達が次々と空高く舞い飛んでいった。鈍い音を立てて地面に叩きつけられた部下達を冷めた視線で目をやった美女が「あなた、名前は?」と少し離れた場所から私に質問を問いかけた。

「ローさんをこよなく愛する美魔女!ナマエよ!暫くの間はあなた達に再会する事はないでしょう!さようなら!」

意気揚々とそう宣言をして、深く頭を下げては直ぐに踵を返した。既に少し前に逃げていたシャチに追いついて「てかあいつ等何者!?海軍って何!?七武海って!?」と一気に捲し立てたが「説明は後だ!とりあえずさっさと船に戻るぞ!」とシャチが口にしたので、確かに今は逃げる方が先だと判断をして全速力でローさん達が待つ船へと向かった。





「で?お前ら肝心の物は奪ってきたんだろうな」

「は、はい!勿論ですキャプテン…!」

椅子に腰掛けて、長い足を組んで座っているローさんの美しい顔に1人見惚れていると「ナマエ、てめぇ聞いてんのか」と辛辣な言葉が前方から降り注いだ。怒っても美しい。死ぬ程イケメンだ。うんうんと深く頷いて得意げに頷いた私の横からゴツン!と軽くシャチに肘で小突かれた。

「聞いてます!好きです!付き合ってください!」

「何一つ聞いてねぇな。ペンギン、後でこいつに説教しとけ」

「了解です」

御意!とでもいうようにそこに礼儀正しく膝跨いだペンギンを無視してシャチが「にしてもあの海軍の女…会う度にほんっと厄介すね!」と横から話を遮った。確かにシャチの言う通りだ。あの美女、見た目以上に結構な強さだったなぁ…と、一人ぼんやりとそんな事を考える。そもそもあの人達に追われる筋合いはない筈なのに。(まぁ物を奪ってきたから当然かもだけど…!)船に戻ってあの一連の流れと意味をシャチから説明をして貰った私は益々意味不明すぎて横に首を傾げた。

「まぁ大方奴等はこれに手を出した俺等に相当な怒りを覚えたんだろうがな…」

そう言って、シャチから手渡された長い鎖を握ってそこに視線を落としたローさんが気怠そうに椅子の肘おきに頬杖をついた。キラキラと黄金の光を放っているその鎖の下で振り子のように揺れているのは古い懐中時計だ。蓋が付いているアンティーク調の時計で正直とてもお洒落な見た目である。年代物でもあるので、動いているのが最早不思議なくらいだが針はカチカチと正確に時を刻んでいるようだった。

「何で急にそれが必要になったんですか?キャプテン」

「そーっすよキャプテン。ログでもあるまいし、そんなもんに価値があるとは思えねぇんすけど…」

「……………」

「それ、海軍の管轄の懐中時計でしょ?俺知ってるよキャプテン!前に新聞で読んだから!かなり古い時代から大切にされてきた懐中時計だって書いてあったよ!」

「へぇー!これがぁ…?」

ベポから説明をされた内容に興味を持った私は、まじまじと下から睨むようにして懐中時計を見つめた。確かに綺麗だし、年代物の古い時計だから価値はあると思うけれど…でもわざわざ海軍が総出で追って来るほどの代物なのだろうか?

「近ぇ…」

「はっ!すみませんローさん!あわよくばチューも出来たら良いなと思いまして」

「何があわよくばだ…意味不明な事言ってねぇでさっさと離れろ」

「はぁい」

指示された通りにニッコニコの笑顔で元の位置に戻った私に、ローさんはいつもながら呆れた表情で重たい溜息を吐いていた。そしてそのままクルー達に質問された内容に淡々と回答を口にしていくローさん。どうやら話を聞いていくと、この懐中時計はある3つの条件さえ揃えば不思議な場所へと連れて行ってくれるのだとローさんは説明してくれた。

「ふ、不思議な場所って…まさかキャプテン!ラフテルとか…!?」

「ある訳ないだろ、そんな事。どんな飛び級だよ」

「じゃあ何だってんだよペンギン!お前には分かるのかよ!」

「いや?全く検討がつかない」

「じゃあ黙ってろよお前…!」

そんなコントのようなシャチとペンギンのやりとりに笑いを堪えきれなくて肩を震わせていると、空気を読まないベポが「ねぇねぇキャプテン、つまりどういう事?」とローさんに答えを急かす。それにチラっと視線を向けたローさんの鋭い瞳と最後に視線が重なっていつもながら卒倒しそうになった私を横に居るシャチに頭を支えられた。ローさんの余りにも高いイケメン具合に最早私の体力と心臓は持ちそうにない。

「時計の針が正午を差した時、水平線に浮かぶ太陽が大海原を照らし、その海面に浮かび上がった島には古くから伝わる幻が見える」

「…………え?」

「キャプテン…どうしたの。ポエム?」

有り得ない発言をしたベポのフワフワした頭をペンギンがペシン!と軽く叩く。何の前振りもなくそう口にしたローさんの瞳がユラユラと揺れ動く懐中時計を追うように右に左と視線が泳いでいた。

「3つある内の2つの条件は、まぁ恐らくこの懐中時計と太陽だろうが…」

「………?ど、どうしたんですかローさん。そんなにまじまじと見つめられたら吐血して私死にますけど!」

「……………」

そこまで口にして、ローさんの動きがピタリと止まった。穴が開く程ジィっと見つめられて、真正面に正座をしている私は最早溶けそうだ。

「今日情報を得た島の店主が言うには、どうやら島が浮かび上がる前にある一つの色がキーパーソンとなるらしい」

「ある一つの色って…!?」

「ま、まさか…!」

「そうだ、ナマエ。お前の…」

「深い愛ですね!?」

「違ぇよバカ」

秒で拒否られた想いが華麗にスルーされた所で、ローさんはこれでもか!という程そこに大きな溜息を吐いた。やり直しだとでもいうように、再び話題を元に戻したローさんの人差し指がすっと自分の左耳に触れ、そのままローさんの切れ長の藍色の瞳が私を捉えた。

「ナマエ、お前のそのピアスの色によく似た…ターコイズブルーの色だ」

「…………え?」

「俺が思うに、お前のそのピアスが何らかの引き金になると俺はそう確信してる」

「……………」

真っ直ぐと向けられたローさんの強い眼差しがやたらと眩しく思えて、それを避けるように床に視線を落とした。そして同時に前回の島で判明した事柄がふと脳裏に過ぎる。

『いつか大きくなったお前に再会出来る日を今から心待ちにして、ターコイズブルーに光る遠雷の中、最果ての場所にて我は待つ』

あの場所に刻まれていたのは、紛れもなく父が私に宛てたメッセージだった。それは間違いない。ただどうしても分からない事がある。何故父はこの異世界の場であの文字を刻む事が出来たのだろうか。そもそもあれはいつ頃刻まれた物なのだろうか。考えれば考える程謎は深まっていくばかりだ。

「ナマエ…だ、大丈夫…?何か意識が何処かに飛んでるよ!?」

「…………え!?あ、あぁ!ぜ、全っ然大丈夫!余裕余裕!」

「……………」

「分かりました、ローさん!いや全く意味は分かってないかもですけど、とりあえず私…その時が来たら海に向かってローさんへの愛を叫びますね!」

「頼んでねぇよ…そんな事」

最後にいつものように話を茶化してニヒヒ!と笑った私に、ローさんはそこに頬杖をついたまま無言で此方に視線を送っていた。暫くの間そうしてやんややんやとシャチ達と戯れていた私の頭を軽く撫でてローさんは一人部屋を後にする。いつもならウザい程ローさんの後ろをチョロチョロと付き纏うけれど、何故か今はそんな気分にはなれなくて気を紛らわすかのようにベポのふわふわとした毛皮にギュっと抱きついた。





「寝れねぇのか」

「!ろ、ローさんっ…!?何で此処に…!?」

「安心しろ、たまたまだ」

あれから何時間か経過した今、私は何故か珍しく眠りが浅く夜中に目が覚めた。気晴らしに何か飲もうとやってきたキッチンにてガサガサと物を漁っていた私の背後から現れたローさんは、食料庫にある冷蔵庫に手を掛けて一本の酒瓶を取り出しながらそう言った。ある程度喉を潤し終えて此方に振り向いたローさんと視線が合う。置物のようにそこに突っ立っていた私に「お前も飲むか?」とぶっきらぼうに酒瓶を差し出したローさんに無言で左右に首を振ってやんわりと断った。

「また悩み事か」

「え?」

「聞いてやる。どうした」

「……………」

やれやれとでもいうように、小さく息を吐いたローさんが船の甲板へと移動した。その後を追うように少し離れた場所からローさんの後ろ姿をぼんやりと見つめていると「何してやがる。さっさとこっちに来い」と呼び寄せられた。夜の海は真っ暗で何だか少し身震いしてしまう。穏やかな波の音が周囲に響く中、手摺りに背を預ける形でローさんがゆっくりと此方に振り向いた。

「いや…悩み事というか…」

「……………」

「考えれば考える程よく分からなくて…」

「あの刻まれた文字の事か」

「…………え?」

図星か。そう言って、ローさんは小さな息を吐き出した。そのままローさんの藍色の強い瞳が真っ直ぐと私を捉える。真っ暗な世界の中、唯一頭上から降り注ぐ月明かりがやけに綺麗で、唯一無二の存在感がローさんに似ているなと、そんな事を頭の片隅で考えた。

「単刀直入に聞く。あれはお前の親族が刻んだ文字か」

「はい…」

「やっぱりな。あの時文字を目にしたお前の感じがいつもと違うと思ってたからな」

「……………」

「お前、家族は。元の世界にはいねぇのか」

引き続き喉にお酒を流し込みながら淡々とそう口にしたローさんの質問に声が詰まる。ローさんと私の間に夜の肌寒い風が吹き抜けてサイドの髪が大きく揺れた。

「いますよ、普通に」

「……………」

「ただ…父とだけは6歳の時から逢えていないですけど…」

「……………」

「優しい父でした。……昔から」

あまり2人で過ごした記憶はないけれども。そう言って、暗闇に目が慣れてきた私がローさんの背後に見える水平線を見つめながらも小さく呟く。

「雪が、好きって言ったじゃないですか。私」

「あぁ…」

「父と、最後に遊んだのはそんなよく雪が積もった日で。2人で一緒に雪だるまを作ったんです」

「……………」

「物凄く大きな雪だるまで。父と2人でまた一緒に作ろうね!って…最後に約束をしたんです」

「……………」

「約束した、けど…」

その日を境目に、次の日父は突然姿を消しました。

そこまで口にして、頬に一筋の涙が溢れた。……あれ?私何泣いてるんだろう。泣くほど辛い想い出だったのか?と、冷静に頭の片隅でそんな事を思う。ローさんはそんな私に全てを悟ったのか「もういい。悪かった」と罰が悪そうに謝った。違うよ、ローさん。別に謝って欲しいとかじゃなくて。

「わ、私…父に…っ、ずっと逢いたくて…」

「ナマエ、」

「ずっと、良い子にして待ってるよって…っ、そう言いたくて…」

「もう良い、ナマエ…俺が悪かった」

「良い子にしてたら…っ、か、必ず戻ってくるからって…そう言ってたのに…!」

嘘つき。そう泣き叫んで、そこに膝から崩れ落ちた。床に頭を俯かせてわんわんと泣く私はガキそのものだ。普段からローさんに相手にされないのも理解できる。それでも頭では分かっているのに身体というものはとても正直で、自分でも対処しきれない程の大きな寂しさが私を襲う。

「父に逢いたい…っ、私の願いは、ただそれだけなんです…」

「……………」

父と再会出来たその時に、交わしたい言葉や想いが山程ある。私は元気にしてたよって。良い子にして待っていたよって。そう伝えたくて。ただそれだけの事なのに、張り詰めた想いががんじがらめに絡まって一向に一つの線が見えてこない。まるでこの夜の海みたいに視界は真っ暗で、いつだって途方もない願いに感じた。

「俺が…見つけてやる。お前の父親を」

「…………え?」

「だからもう泣くな。……お前は1人じゃねぇ」

「ローさん…、」

いつの間にか私との距離を縮めていたローさんにぐいっと腕を掴まれて力強く前に引き寄せられた。ローさんの手から離れた酒瓶がカランと音を奏でて床に転がる。ローさんの大きくて暖かい腕が私の身体をすっぽりと包み込み、背中に廻ったローさんの手の温もりがじんわりと広がった。出逢って初めて見せた私の情け無い弱さを馬鹿にする訳でも、笑い飛ばす訳でもなく、ただただローさんは「大丈夫だ」と何度も繰り返し優しく頭を撫でてくれた。

「ローさん…」

「……何だ」

「…は、鼻水つくかもです」

「好きにしろ。どうせ明日お前が洗うんだろ」

「ですね…!全力で愛を込めて洗います…!」

「………お前、泣いてもそこはテンションが変わらねぇんだな」

「えぇ、まぁ…大好きですから。ローさんのこと」

「……………」

涙を拭いながら、頬を綻ばせた私にローさんは眉を下げて困ったようにして笑っていた。どうしてローさんは毎回今一番欲しい言葉を言ってくれるんだろう。不思議な人だ。言葉はぶっきらぼうなのに、不器用な優しさがいつも伝わってくる。だからみんなローさんの事を心から信頼しているのかな。

「ローさん、」

「何だ」

「今日、一緒に寝たいです」

「…………」

どさくさに紛れてさらっと願望を口にしてみる。下からローさんの顔を見上げて見ると、珍しく目を丸くして此方を凝視するローさんと目があった。けれども直ぐにその視線は逸らされてしまい、ローさんは無の表情でぼんやりと夜空を見上げたまま何かを考え込むかのように眉根を寄せる。

「床で良いんならな…」

「駄目です!それじゃ一緒に寝れないじゃないですか!」

調子に乗るなガキ。そう言って、ローさんは小さく笑った。厳しい条件をあれやこれやと私につきつける割に暖かいその手にギュっと手を握られて、私の頬はだらしくなく緩む。「行くぞ」とそのまま手を引かれて甲板を去ろうと一歩前に進みだしたローさんにはバレないように「ありがとう」と小声で呟いた。ゆらゆらと揺れる海の波音に穏やかな風が頬を撫でる。世界で一番大好きな人に初めて全て心を開いたこの夜の事を、きっと私は生涯忘れる事はないだろう。






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