『こいつの友人だよい。…つっても、まぁ何年か前の元彼でもあるけどな』


その男の後ろ姿には見覚えがあった。あれは確かまだ、ナマエと出会って間もない頃の事だ。

『朝帰りならぬ朝お見送りか?お前にもちゃんとした男が居たんだな』

『さっきから何か勘違いしてるようですけど、さっきの彼とは別にそんなんじゃないので』

恒例の如くあいつと軽い言い合いになって交わしたそのやりとり。俺が見たのは、あのパイナップルみたいな頭をした男の後ろ姿だった。高級スーツをサラっと着こなし、まるで何年も前からここに通い詰めているかのような雰囲気を身に纏い、そうして何の迷いもなく前を向いて去って行く。その後ろ姿を。ただそれだけの事だったが、不思議と未だに頭の片隅に記憶にあった。

「…………何がそんなんじゃねぇだ。ふざけやがってあの女…」

そうは言っても別に俺がいちいちそれについて咎める権利もなければ、ナマエを縛り付ける理由もない。それを頭では理解していても苛立ちは無限に募る。そんな自分が情けなくもあり、だがそれ以上に一体これが何に対しての怒りなのかが分からず、そして一番厄介な問題でもあった。




「で?俺にどうしろと」

「……………」

デニムのポケットに忍ばせていた煙草ケースの中から一本取り出し、目の前の男は心底面倒臭そうな顔をして勢いよく天井に向かって煙を吐き出す。その姿を前にここ最近感じている苛立ちは増し、俺も怒りを抑え込むかのようにカチ、と自分の煙草に火をつけた。

「その男の情報を集めろ」

「何ですか、また急に…」

「うるせぇな、ゴチャゴチャ文句言ってんじゃねぇよ。期限は明日までだ、良いな」

「はいはい、りょーかいです」

やれやれ。とでも言わんばかりの雰囲気で、その場に深い溜息と大きく肩を竦めたペンギンを睨みつける。そのままテーブルの端に置いていたジョッキに手を伸ばし、残りのビールを勢いよく喉に流し込んだ。それに気付いたペンギンが「すいません、生もう一つ…あーいや、あと二つ追加で」と店の店員に追加オーダーをする。こういう場でのこいつの働きは毎度ながら良い動きをするな…とかぼんやり考えつつも、話の続きに戻った。

「にしてもそのマルコって奴、ナマエの元彼にしてはかなりスペックの高そうな男ですね」

「………あぁ?」

「何をしている男なのかは、まぁ今から調べるんであれですけど。キャプテンの話を聞く限り結構な男だと思ったんですがね」

「……………」

「ま、俺の勘は大して当たらないんで別に気にしないで下さい」

そう言って、感情を抑え込むかのようにクスクスと笑うこの男は俺と同格並みに歪んでいると思う。それを理解した上での付き合いだが、ある意味鬱陶しい奴だ。何が可笑しいのは知らねぇが、いちいち俺に対して噛みついてくるかのような発言も含め、唯一周りの中でも読めない男でもあった。

「知ったような発言するんじゃねぇよ。お前には関係ねぇだろうが…」

「関係ないなら、いちいち俺なんか使わず自分で調べて下さいよ」

「あぁ?」

「あー、いや。何でもないです。失礼」

「……………」

何か文句を追加してやろうかと思ったその時、店の店員がジョッキを抱えて俺達が座るテーブルまで辿り着いては「お待たせしました」と軽快にテーブルの端に酒を置く。そこで一瞬間が空いた事で一気にどうでもよくなり、「ある程度纏まったら俺に連絡しろ」とだけ告げた。

「了解です。にしてもキャプテン、相当ナマエに入れ込んでるみたいですね」

「…………あ?」

「だってわざわざ大してそんなに面識もない男を調べさせるなんて、よっぽど自分の中で引っ掛かる事があるんだなと普通は思うじゃないですか」

「はっ…馬鹿言ってんじゃねぇよ。別にそんなんじゃねぇ。ただあいつはやたら鈍臭ぇ女でな。また変な男に捕まってこっちが被害被る前に阻止してやるってだけの話だ」

「ほーぉ…それはそれは。また過保護な事ですね」

「うるせぇな。てめぇ、それ以上馬鹿な事抜かしやがったら本気で捻り潰すぞ」

「それだけは勘弁なんで、じゃあそろそろ俺は黙る事にします」

「あぁ、そうしろ」

そこで一旦会話は途切れた。店員が持ってきたビールを傾けて淡々と喉にそれを流し込むペンギンと、煙草を燻らせたまま窓の向こう側へと視線を流す自分。その姿は至って普通の居酒屋内の光景だが、互いにこれ以上は何かを口にするのは危険だとそれぞれが判断をしての行動だ。ある一定の場所までは情報を共有し、そしてある一定の場所に差し掛かった所で互いに一線を引く。昔から俺とこいつは、その感覚がある意味共通している。確かに誰よりも読めねぇ男で苛立つ事も多少なりともあるが、その逆を返せば誰よりも信頼出来る男でもあるのは確かだ。

……………そんな事よりも問題なのは、

「キャプテン、」

「あ?」

「灰…落ちますよ。何をそんなに考え込んでるのかは知りませんけど、正気だけは保って下さい」

「……………」

ほらこれ、どうぞ。そう言って自分の手元に灰皿を手繰り寄せ、そしてまたそれを俺に向かって差し出してくるこいつに舌打ちをする。言われた通り灰を落としては再び口に咥え、そのまま肺に一旦収めた煙を勢いよく吐き出す。わざと目の前に座るこいつに向かって。

「…………何の真似です?煙たいんですけど」

「あぁ、そりゃ悪かったな。たまたまだ」

「よく言う」

「おい、酒が足りねぇ。さっさと追加しろ」

「はいはい…」

いつもながら不服気に対応をするペンギンを横目に、煙草を燻らせながらふと脳裏に浮かぶのは、この前のナマエの発言だった。

『…………ほ、本当の話…です』

正直、何故あの時そんな事を問い詰めたのかが自分でもよく分からずにいた。だが何となく聞くなら今しかない、とも思った。どっちにしても答えを聞こうが聞くまいが、俺の中での苛立ち度は変わる事はなく、寧ろ答え合わせをしてからの方が倍以上苛立ちは募るばかりだった。……そもそも何だ、あいつは。もう何年も前に別れた男を未だに家に入れてんのか。馬鹿なのか、あの女は。いや、馬鹿だからこそのあの行動なのか。だとしたなら救いようがねぇな。

「…………気分悪ぃ」

あの時と同じだ。ただただ気分が悪い。あの最後に見たマルコって奴の後ろ姿を見た時からずっとこれだ。別に何かを指摘された訳でも文句を言われた訳でもない。だが、それ以上に目が俺に語っていた。


『こいつは俺の物だ』と。


「酒、何にします?」

「あ…?」

「また生にしますか?あーそれとも…」

「ウィスキー、ロックでな」

「了解です」

考えを巡らせていたそこでペンギンによって遮られ、一旦思考を停止させた。そこでまたしても灰が溜まっていた事に気付き、灰皿に煙草を押しつけては火を消す。そのままテーブルに頬杖をつき、ただぼんやりと無の状態のまま無言を貫いた。そんな俺に見かねたのか、ペンギンはそれを押しのけるようにして俺に別の話題を提供し始める。恐らく空気を読んでの行動だろうが、今の俺には何一つ響かず、文字通り正に上の空って奴だった。




「ねぇ、次いつ会える?」

「…………あ?」

翌日。俺は自分の中での苛立ちを一旦紛らわせる為にも、仕事終わりに街中で適当に捕まえた女を抱くだけ抱いて、さっさと帰ろうとベッドから抜け出そうと考えた、その時だった。上半身裸のまま、気怠げにベッドのヘッドボードに身を寄せた名前も知らねぇ女が、俺に期待を含んだ視線を向けてくる。それにいつもながら嫌悪感を募らせつつも、「さぁな」と適当に返事を返した。

「さぁなって…さっきはあんなにも激しく抱き合った仲じゃない。酷いわロー…」

「気安く名前を呼ぶんじゃねぇよ。うぜぇ」

「だったら次いつ会えるか教えてくれたら呼び捨てを止めるわ。ねぇ、私こんなにも絶頂を味わせてくれた男は初めてなの。だから今後もローと関係を結んでいきたいわ」

「黙れ、こっちにそんな気はねぇ。分かったらとっとと失せろ」

「そんな事言わないで…ね?お願い…」

「……………」

そう言って、気分を良くした女の腕が俺の腰廻りに絡みつき、その後の展開を期待しているかのような発言を口にする。そのまま徐々に女の腕は俺の腰から首元へと移動し、自分に誘いを掛けてくるのが嫌という程よく分かった。それを横目に軽く舌打ちをし、そのまま女の存在を無視して「退け」と腕を払い除ける。

「あん、つまんない。ねぇ、ローってばぁ」

だから勝手に呼び捨てにするんじゃねぇよ。そう心の中で苛立ちを重ねつつも、部屋の中央にあるテーブルの上に放置していた携帯を手にして画面に視線を落とした。どうやらペンギンからの連絡が何件か入っていたようだ。あいつにしては珍しく手こずったな。そんな事を考えつつも画面をスライドし、迷う事無く電話帳を開き発信画面をタップする。

「俺だ。今何処に居る。……あ?あぁ、分かった。直ぐに行く」

簡潔に用件だけを口にして、即座に通話を切った。そのままソファーの上に投げ捨ててあった自分のシャツに腕を通し、一つ一つ前のボタンを閉めていく。その俺の後ろで、未だ裸のままベッドに寄り掛かった女が、「もう行くの?」とか何とかかんとか訳の分からねぇ事を俺に質問してくる。見りゃ分かんだろうが。いちいちそんな分かりきった事を聞いてくるんじゃねぇよ。

「じゃあな、会計は済ませてある。後は好きにしろ」

それだけを口にして、女の反応を待たずさっさとこの部屋を後にした。エレベーターで一階のフロントまで降り、ホテルの出入口にあるタクシー乗り場まで急ぐ。運転手に行き先を告げ、そのまま身を委ねるかのように後部座席のシートに身体全体を預けては小さく息を吐いた。自業自得とはいえ、やはり女って奴は性欲を吐き出す以外は何の特にもならねぇな。一緒に居てもただ息苦しさが残るだけだ。

「…………くだらねぇ」

吐き捨てるように独り言を呟いては、胸ポケットに忍ばせていた携帯を取り出し、ペンギンへと連絡を入れた。「あと10分以内にそっちに着く。何か適当に酒を頼んどけ」と。




「外資系の商社に勤めてるみたいですよ、あのマルコって男」

「……あぁ?」

「あー…あとどうやらキャプテンと一緒で、仕事は出来ると社内でも有名で未来の重役候補にも入ってるみたいです」

「……………」

「それとー…そうですね。後は、」

「おい、ペンギン」

「はい?何ですか」

「誰があいつの社会的立場を調べろなんざ言った。俺が知りてぇのはそこじゃねぇ」

前回と同じ店で、大勢の客達で賑わっている店の一角で、タブレット片手に淡々と俺にかき集めてきた情報を報告してくるペンギンに対し眉根を寄せては睨みつける。恐らくその俺の態度に奴は一瞬にして空気を読んだのだろう。「あーはいはい、そうですよね。分かりました、じゃあこの辺は全力で飛ばしていきます」と、いつもながら軽い返事を俺に返し、人差し指で画面を横にスライドさせつつも面倒臭そうに続きを口にする。

「えー、恐らくキャプテンが一番知りたいであろうナマエとの関係ですけど、」

「「ナマエがまだ20代前半の頃、二人は行きつけのバーにて知り合った」」

「……………あ?」

「え?」

「なんだぁ?これ、お前とナマエの事じゃね?」

なぁ!マルコ!そう言って、陽気な声でペンギンと声を被せてきたであろうその男の顔を目を見開きつつも凝視する。吹き抜けの廊下からひょっこりと顔を出し、そのままペンギンが手にしている資料を斜め上から一緒に内容を読み上げた男は、如何にもという程明るそうな奴だった。心底自分とは気が合わなさそうだ。そう瞬時に脳内で判断しつつも「誰だてめぇ」と迷う事無く敵意を示す。

「おーおー、そんな噛みつくなって。まぁ待て待て、落ち着け。ご本人の登場だ」

「あぁ?」

「おい、サッチ。お前何他所のテーブルに顔突っ込んでんだよい…って、あ?お前この前の…」

「……………」

決して穏やかではない沈黙がその場に居る全員に駆け巡った。暫く無の状態のまま、呆然と事の次第を目で追っていたペンギンがわざとらしく咳払いをし、そしてここぞとばかりに低い声で「キャプテン、」と俺に声を掛ける。

「なんだ…」

「取り敢えず、お二人に此処に座って貰いましょうか」

「……あぁ?」

「だってよく考えてみて下さいよ。いちいち資料を追うより、本人に直接聞いた方が早いじゃないですか」

「……………」

「はい、じゃあそういう事で」

良かったらお二人とも、此処に座りません?そう言って、ニコニコと得意の営業スマイルを向けたペンギンが後の二人へと誘いを掛ける。どうやら奴は丸ごと俺の意見は無視するつもりらしい。まぁ別にかと言って、特に異論もねぇがな。

「え?良いの?邪魔でない?」

「いえいえ、そんな事ないですよ。俺もキャプテンも大勢で飲む方が慣れてますし、そっちの方が好きだったりするんで」

「あらそう?んならちょっとだけご一緒させて貰おっかな。な、マルコ!」

「………あぁ、そうだな」

「……………」

恐らくこの陽気な男もペンギン同様、ある程度空気が読めるタイプなんだろう。あのパイナップル頭をさりげなく誘導して、さっさと席については店の店員を呼びつけて初っ端から強い酒を注文している。結果的に異様な空間の中、俺の目の前の席へと腰を降ろした例の男が、「何か悪ぃな」と俺に軽い謝罪を入れてきた。それに対して眉を寄せつつも、「別に」と素っ気なく返事を返しては煙草に手を伸ばす。取り敢えずの所は一旦自分の気持ちを落ち着かせる為にも、ニコチンは必要不可欠だ。そんな事を考えながら。




「あいつ、変わった女だろい」

「……………あ?」

あれからある程度時は過ぎ、俺の真横でそれぞれの身の上話や仕事の話に花を咲かせているペンギンとサッチという男を横目に、前方から聞こえてきた男の声に反応する。突拍子もないその発言に若干苛立ちを感じつつも、「何の話だ」と返事を返した。

「ナマエだよい。あいつは昔からあんな奴でな。俺が最初に出会った時からずっとあの調子で昔から手を焼いててね」

「……………」

「でもその分、急に面白い発言したり訳分かんねぇ行動したりするから一緒に居て飽きなくてな。…まぁ、要するにいつも振り回されてるって訳だ、俺は」

「…………へぇ」

そこまで口にして、男は気怠げに椅子の背もたれに体重を預けたままグラスに口付ける。そのまま何口か酒を喉に流し込んで、「お前も俺と一緒だろい」と話の続きを口にした。

「……………あ?」

「あー、それとこの前悪かったな。マンションの下であいつを急に掻っ攫って。あの後あいつに怒られたよい。あれは無いってな」

「………………」

「その後機嫌を取り戻すのに苦労したよい。色々試行錯誤して、たまたまあの日土産に持って来てた香水を手渡してからはようやく何とか事を終えたけどな」

「香水?」

「あぁ、あいつ香水マニアなんだよい。知らねぇか?あいつのリビングにあるだろ、香水だけを無駄にズラズラと並べた棚が」

「………………」

そう言われてみればと、ふと脳裏にあいつの部屋の間取りを思い浮かべる。確かにあるな、そんな棚が。こいつの言う通り、様々なブランド物の香水が並べてあったような気がする。

「俺、たまたまこの前まで海外に出張行っててよい。免税店であいつがずっと欲しがってた香水見つけては気付けばレジに並んでて、そん時は流石に自分でも笑ったよい。何してんだ俺は…ってな」

「………………」

「んでこっちに戻って来て直ぐにあいつに会いに行って、帰りを待ってたらお前が肩にあいつを担いでてよい。そん時ハッキリと自分の中で、ここ数年もの間疑問に感じてた自分の気持ちが確信に変わった」

「………あぁ?何の確信だ」

回りくどい言い方に引き続き苛々しつつも、それを抑え込むかのように自分なりに冷静に勤めては男へと相槌を返した。その時自分でも引くぐらいの声の低さに若干驚いたが、そんな事よりも男が次に口にするであろう言葉を脳内で予想しては眉を顰める。ある意味こういう時にやたら勘が外れない自分の頭のキレの良さが邪魔なくらいだなと、ふとそんな事を思う程だった。

「………俺は、今でもナマエに惚れてる」

「……………へぇ」

「だから俺とお前はライバルだな」

「あ…?」

「まぁ、そうは言っても仲良くしていこうじゃねぇか。今日の所は一時休戦って事にし、」

「おい」

「………あん?」

何故か機嫌良さげに、俺のグラスに焼酎を注いでくる男の言葉を制して会話を遮った。何故なら、この男が最後に口にした発言に激しく疑問を抱いたからだ。………俺とお前がライバルだぁ?何馬鹿な事言ってやがるこいつは。

「何だ、そのライバルって奴は…ふざけた事抜かしてんじゃねぇよ」

「あ?違ぇのか。まさかお前、見た目と違って自分の事に関しては鈍感な奴かよい」

「あぁ?」

「まぁ…別に気付いてねぇんならこっちにとっちゃ好都合だけどよい。んな事より飲め飲め。お前酒強いタイプだろい?遠慮せずいけよい、今日は俺が奢る」

「話聞けよ、てめぇ…」

その後、何度この男に問い掛けてやろうが何しようがことごとく無視をされ、そんな扱いを受けたのは人生初の出来事で俺の調子が狂ったのは言うまでもない。そしてこの強引さはナマエと少し似てるな、ともぼんやり思った。そこでまたしても地味に怒りは湧き、かと言ってこの状況ではどうする事も出来ずに見事に不可抗力となって終わった。


『だから俺とお前はライバルだな』


…………何がライバルだ。ふざけんな。誰があんな鈍臭くて手の焼く女になんざ惚れるか。例え天変地異があったとしてもそれだけは有り得ねぇ。

そんな事を何度も心の中で罵倒を重ねつつも、目の前に座っている男に煽られて、俺の酒のペースは徐々に上がっていく。こうなったら飲むしかねぇ。これまでの人生経験を糧に、そう瞬時に脳内で判断したもう一人の自分が俺に指令を出す。パイナップル頭に注がれたグラスの中の焼酎を一気飲みし、それを勢いよくテーブルに叩きつけては「さっさと次入れろ」と指示を出した。その俺の姿に口の端を上げて楽しそうに笑う男を睨みつけながらも、今日一番の問題の人物をぼんやりと頭に思い浮かべては、こんな事を思った。


『ロー』


………ナマエ、全部てめぇのせいだ。お前のお陰で俺の思考回路は見事破滅の道へとまっしぐらだろうが。次会った時にはいつもの倍にしてお前を可愛がってやるよ。

あぁ、そうだな。お前がよく俺に向かって例えを出してきやがる、『大魔王』とやらにでも変身してな。

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