探求

しめて七つ目の鬼火を還したときには、鬼灯に抱えられて自分から首に腕を回して支えられるまでに回復していた。
いつの間に、そんな事を口にしながらしがみついていれば今更かと鬼灯に呆れられたが、そういえば段々と自由も利くようになってきていた。
もう自力で歩けるのではと思い、いつもより離れた眼下の地面を見ていればそんな様子のヒサナに気づいた鬼灯がゆっくりと彼女を下ろす。
地に足をつけてはみたのだが、しかし体重を移した途端膝の支えとはなんだったかと思うくらいカクリと膝を折った。
幸いなことに膝を打つ前に、脇に腕を差し込んで支えてくれた鬼灯のお陰で直撃は真逃れた。

「まだ難しそうですね」
「ご、ごめんなさい…」
「大人しくしていなさい。今ので最後、回収作業は終わりです」
「七つだったんですね…なんでしたっけ現世の漫画喫茶で見たやつありましたよね。そうだ七つ集めるってドラゴンボールみたいですね」
「まさにそんな感じでしたよ。全て集めれば願いが叶うのですから」

彼女がこの世に在り続けるように。
己の回収理由から聞くまでもない願い事の内容に、少しだけ口許を綻ばせていれば鬼灯が膝裏に腕を回してきたのでヒサナも察して自然と首を借りて抱きつくと再び抱えあげられた。

「さて、戻りますよ」
「何処へ?」
「…この後の話、覚えてないんですか」
「おぼ、覚えてますよ…!一度駐屯所に戻るのかどうするのかって意味です」

馬鹿にするなと反論すれば、鬼灯は考え込むように視線をヒサナの腹へと落とす。
恥ずかしくなって腹部を遮るように腕を回せば、鬼灯はそのまま視線をヒサナの顔へと流してきた。

「戻って手こずっても嫌ですから、時間も惜しいのでこのまま閻魔殿に戻りましょう。道中奴に連絡は入れます。…腹はくくれました?」
「………くくってなくても、鬼灯様にはさして問題じゃないでしょう…」
「まぁ拒否権なんて有り得ませんけどね。あの物語もそうですが、宝具を七つ集めただけで願いが叶うわけではありませんから」

朧車内故に確信には触れてこないが、腹を抱えた腕に僅かに力を込める。
内心、腹の子のお陰か微塵も嫌ではないのだが、そんなことは素面では口が避けても言えはしない。
他愛のない話をしながら朧車まで戻ってくると、閻魔殿までと一言告げてさっさと乗り込んだ鬼灯はヒサナを中央へ座らせるとその背を支えながら胡座をかいた自分の膝に移動させて抱え込んだ。

「…鬼灯様重くないですか、壁とかに寄りかからせていただければ多分座れますよ」
「揺れたときに倒れたら?」
「それくらいもう堪えられますよ」
「こちらこそヒサナ一人一日抱えて過ごしたって支障はありませんからご心配なく」

でも、と渋ろうとすれば、黙って任せなさいと言いきられてしまった。
確かに支えてもらってて安定感はこれに勝るものはないが、なんだか申し訳なくて落ち着かない。
なんとなく鬼灯の顔を見上げれば、こちらを見ていた鬼灯と目が合う。
まさか見つめられているとは思わず狼狽えるが目がそらせない。

「腹、くくっといてください」

先程も同じことを言われた。
首をすくめて鬼灯の出方を伺っていれば、念を押したくせにヒサナが頷くのを待たずに立てた膝に頬杖をつき、視線を反らし口を閉ざしてしまった。
頬杖と同時に手のひらに覆われた口元からは何も読み取れなかったが、鬼灯も何か思うことでもあるのだろうか。
ガタガタと朧車から伝わる振動が着実に目的地へ近付いていることを告げる中、落ち着かない気持ちにヒサナは胸に手をあてた。

20160801

※注意!
次は裏描写になります。
飛ばしても話が繋がるようにはしますので、そういった行為が苦手な方、18歳未満の方は閲覧をご遠慮願います。
どんなものでも大丈夫だという方のみでお願い致します。

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