青い空を背景に、白い雲が右から左へ流れていく様をぼんやりと眺める。そよそよ髪を揺らすこの春風は上空では少し強さを増すらしい。先程鳴ったチャイムは5時間目の開始を知らせるものだ。校庭では体育の授業でもやっているのか度々ホイッスルが鳴らされる。どれもこれも私にとっては眠気を誘う要素でしかないのだが。

「…」

――うとうとしながら私は、お昼休みの出来事を思い出していた。






「うえええええ!!?出るって、もう!?」
「ああ。商談の前にもう一つ仕事が入った」ネクタイを緩めながらザンザスはさも愉しそうに笑う。

「ロッジオファミリーの残党が日本に逃げ込んでいたらしい」
「え。それこの前根絶やしにしたとこじゃん……アラスカで」
「端末だな。」
「ふうん。ちなみにどこいくの?」
「大阪」
「お、おおおお、大阪ぁ!?」
私は慌てて時計を見上げた。現時刻は12時半。商談は確か、4時…?
「普通に無理じゃね?」
「ドカス。ジェットがあんだろ」
「確かにすごいのあるけど。でも着替えたりなんだりしなきゃでしょ?そしたら4時なんて」
「着替える必要なんざねぇ」
「え?ああまーザンザスは返り血なんて浴びないよね。それでも血の匂いとか……ハッ!」

ザンザスの口端が持ち上がる。
――つ、つける気だ。血の匂いバッチリつけて商談望む気だ!
アルギットをビビらせられるし憂さも晴らせるし仕事も片付くし時間も潰せて、まさかまさかの一石四鳥!?さすがボス!あっぱれだ。

「もういっそ返り血とか浴びてきちゃえば」
「ドカス」
「いひゃひ!」
「クズの血浴びるなんざ反吐が出る」
「ほうでひた!(そうでした!)」

ザンザスにほっぺたを離してもらった後、私は着々と準備を進めるザンザスをぼんやり見つめながら無意識に呟いた。
「いいなぁ」
「あ?」
「私も暴れたい。」
「てめェがいたところで何も変わらねえよ」
「グサグサッ」
「大体、暴れたじゃねぇか」
「?」
「昨日ベッドでさんざ「ぎゃああー!!」…」あー!びっくりした何言いだすのこの人いきなり!
「昼間っから下ネタは止めて」
「夜ならいいんだな」
「そっ」
「なら、家でイイ子にして待ってやがれ」

屈んだザンザスが頭のてっぺんにキスを落とした。言いたい事はたくさんあったものの口をつぐんで、私はその体にぎゅっと腕を回す。
(本当は…)
本当は、私も行きたかった。
一緒に連れてってほしかった。
さすがにそんな事は言えないけど、ザンザスにはお見通しだったみたい。

「気をつけて。ボス」
「てめぇがな」
「大好き」
「…ああ」

彼らがまとうは血の香水

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