約束した通り素の状態でジローと話しながら帰った帰り道はすごく楽しかった。もう暗くなっちゃったからマックはまた今度でいい、と言ったジローと別れて、屋敷への道のりを歩く。
帰って夢だった、なんてことないよね。
早く皆に会いたくなって、ゆっくりだった歩調は小走りになり、終いには全力疾走。

息を切らして玄関に飛び込んだ私を受け止めてくれたのは、丁度その場を通りかかったらしいスクアーロだった。


「う゛お゛ぉ゛おい!!なまえテメェ遅ぇぞぉ!!」
「よかった。本物だ。妄想じゃなかった」
「何分けわかんねぇこと言ってやがんだ!」
「何でもない!ただいま!ひさしぶりだねスク!」
「…ハァ、何でンなにテンション高ぇんだ」
「会いたかったー」
「そんなのはザンザスの野郎に言」

スクアーロがピタリと口を閉ざした。私は彼から体を離して笑顔でスクアーロを見上げる。
「そりゃ言うよ!ね、ザンザスどこ?」

しかしスクアーロは一点を見つめたまま微動だにしない。
それどころか段々顔から血の気が引いていくようだった。
「おーい、スクア」
「カッ消す」
「え?」
「ち、ちっち違ぇぞぉ!!俺は」
大慌てなスクアーロは次の瞬間にはブハァ!と吹っ飛んでいた。何だそこにいたんだ。

「ただいま!」
「遅ぇ」
不機嫌そうに言い放ったザンザスは私の腕を引っ張って抱き寄せ、ようとした。
「っっ!!!」
「……おい、ドカス」
「あ、はは…なんでもねっ!」
「逃げんな」

今度はがっつり二の腕を掴んだザンザス。私が冷や汗だらだらで逃げようとするも、この男が逃がしてくれるはずがない。嫌がる私の袖をぐっと引き上げたザンザスは分かりやすく顔を険しくした。

「……」
「…あ、は。ザンザス」
「…」
「ざ、ザンくーん」
「誰にやられた」
「カッ消す気満々じゃないすか」
「殺さねぇ。」

内臓をいくつか潰すだけだ。とあくまで淡々と述べるザンザス。だめだからね。中学生なんて内臓潰したらイチコロだからね。
でもすごく心配されてるらしい事が嬉しくて、顔は勝手に緩んでしまう。

「何ニヤけてやがる」
「べっつにー」
「フン…さっさと冷やせ」
「うん。あ、ザンザス」

ちゅ、と唇に触れるだけのキス。
自分からしといてあれだけど、ちょっぴり恥ずかしい。

「ありがとう。大好き!」

手のひらの幸福
(う"ぉ"お"おい……余所でやれぇ)
(なんか遠くでスクアーロが照れてる)(カッ消す)

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