6時間目は急遽全校集会が行われることとなった。理由は言わずもがな、ザンザス達の突撃訪問の全貌についてだ。

『ええ〜、今日から本校に就任した先生を二人紹介します。えー、皆さん既にご存知かとは思いますが、イタリアからいらっしゃったザンザス先生と、スクアーロ先生です。お二人には3年生の英語と数学を受け持っていただきます。なお、文化圏の違う国からの教師の正式採用はここ数十年で我が校初の〜……』


ひとしきり喋り終えた校長は満足したようにステージの裾に引き上げていった。
椅子に腰かけて話を聞いている二人から漏れ出す黒々しいオーラに、私はヒヤヒヤしっぱなしであった。



「おい、なまえ」
「…?」
「あいつら、お前とどんな関係だ」

いつの間にか傍に来ていた跡部は私にそう尋ねた。一度は近づきかけた跡部との距離も昨日の一件で離れてしまったと思っていたが…。何のつもりだろう。

「何でもありませんよ」
「アーン?言えねぇのか?」
「いいえ、言いたくないだけです」
「チッ」
「…跡部君」

私は跡部を呼びかけてから、一度ステージの上をチラりと見遣り、(スクアーロがマイク無しの大演説をしていた)彼にだけ届く様な声で尋ねた。

「私、テニス部を辞める気はありません」
「…」
「ただし…。
 私を誘って説得し、入部させたあなたが辞めろというまでは、ですけど」

目を見張った跡部が何かを言う前に、私は彼の脇を通り抜けて人垣を抜けた。
まだ寒さの残る体育館の開け放たれたままの扉から外へ出る。すると、壁にもたれかかったベルが「お!」と口元を歪めた。


「何してるの、ベル」
「転校生で呼ばれんの待ってたんだっつの。でも、なまえが来たんなら行く必要ねーや」

ベルは私の隣に並んで、校舎へ続く外階段を上る。
体育館のマイクは確かにベルの名を呼んでいたけどベルはまったく気にしていないようだった。

逃避行
後でスクアーロにどやされるだろうけど、まあ、いっか。

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