私はザンザスの腕の中で何も言わずに赤い瞳を見上げた。同じようにザンザスも、私を見下ろす。ザンザスの目に映る私は酷く動揺しているようだった。 「…ザンザス、何でいるの」 「…」 「私の任務だよ。私、一人でだって完璧にやってみせる」 感動の再会なのに、私可愛くない。でもだって…確かめずにはいられない… 「私、この任務投げたりしたくな」 「ドカスが!」 ゴチンと頭にゲンコツが降る。いってー!いってー!こんなシリアスな雰囲気でよくそんなことできるね!涙目で見上げれば不機嫌そうなザンザス。 「アルギットの危険度がボンゴレで再検討された」 「…!」 「ここでの任務にあてる人員を増やせってのが、本部からの伝令だ」 「で、でも、ザンザスが来るなんて」 「ジジイの許可は取ったつってんだ、ドカス!」 「…何でますます不機嫌になるのよう」 「ぐだぐだ煩ェ…少しは素直になりやがれ。俺を」 ザンザスはそこで一度言葉を区切り、溜息のような深呼吸をした。 「……呼んだだろ」 「!!」 ザンザスは私の銀色の髪を撫でつけ、そこに唇を寄せた。噛み締めるように、もう一度それを繰り返す。 「俺を、呼んだだろうが」 「…う…ん呼んだ」 呼んだよ。当たりどころのない殺意や、体中の痛みに耐えながら何度も。 呼んだよ。気持ち悪くてどうしようもない時も、そうすれば気持ちが和らぐ気がして。そうせずにはいられなくて。 「…っ呼んだ、ね」 来てくれるなんて思わなかった。今の私はクールビューティーで、本当はですます敬語で話してて、滅多に笑わない氷帝の転入生だけど、今だけは 「…っ会いたかった」 心細くて、毎日会いたくてたまらなかった。 私、自分がこんなに弱いなんて知らなかったよ。 「来てくれて…ありがと、ザンザス」 ずすっと鼻をすすりながら言ったら「遅ェよ、ドカスが」と抱きしめられた。こんなに近くにザンザスがいる。ザンザスがいる。 それだけで、私はもう誰にも負けないくらい強くなれる気がした。 「う"お"お"ぉ"い!!!」 「いつまでもイチャついてんじゃねーっての!」 「ベル!スクアーロ…!」 忘れかけていた上空のヘリから顔を出して叫ぶ2人。かたっぽの手でティアラが飛ばないように押さえつけながら反対の手を振ってくるベルと、ベルが落っこちないように掴みながら叫び散らしているスクアーロ。 「他の奴らは留守番だが」 「?」 「テメェの事は血相変えて心配してやがったぜ」 ザンザスの取ってつけたような報告は、後で連絡してやれ、という意味を孕んでそうだ。私は笑って、目の端に浮いた涙を拭った。冷え切っていた心が温もりを取り戻すのを、私はひしひしと感じていたのである。 君の声が聞こえた ×
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