銃声と同時に地を蹴った綱吉が鳥居を押さえた。弾かれたバズーカは滑り込んだスクアーロによって受け止められる。

「な゛!い、一体誰が、どっどこから…!!!?」
事態が理解できずに、撃ち抜かれた腕を押さえて叫んだ鳥居。
引き金を引きかけた鳥居の腕を撃ったのは、他の誰でもない私だ。うん、ただ、一つ問題がある。

「…ごめんね!ザンザス。コートに穴開けちゃって…」
「許さねぇ」
「え…えええ」
「他に手段がなかったとは言わせねェぞ、ドカス」
「いやなかったじゃん!武器持ってるのあたしだけだったし…バレないように抱き着いたまま撃つとなると、やっぱザンザスの隊服は犠牲にするしか」
「テメェで直せ。いいな」
「げ!」
「ルッスーリアに頼もうなんざ考えるな。出来で分かる」
「どういうことだ!」


「流石だな」
ぴょんと私の肩に飛び乗ったリボーンはニヒルに微笑んだ。
「布越しでもピンポントで狙った場所を撃てるなんて並大抵の腕じゃねぇ」
「えへへ…リボーンに褒められるとはね」

「今の撃ったのなまえだったのかよ!」
「まるでスナイパーではないか!」
「すげーのな!ザンザスとどっちが上手いんだ?」
えげつない山本の質問にはスクアーロが「ザンザスに決まってんだろうがぁ!」とゲンコツ付きで返答し、事態の収拾がついたことを察したボンゴレの部下達も続々と館内に入ってきた。


「それにしても綱吉。あたしが撃つって分かってたの?」

ボンゴレチームに拘束した鳥居を受け渡して、こちらへ歩いて来た綱吉に尋ねた。
「うーん…確信は無かったけど」
グローブを外しながら彼は、私とザンザスを照れたように見交わす。


「鳥居亜里沙が話してる時、ザンザスがなまえのスカートに手を入れてるの見たんだ」
「え。」
「いや!お、おれもさ!この人なにやってんだー!って驚いたんだけど……その中から銃が出て来るのが見えて」
「…うん…そうなの…スカートのとこに…ふじこちゃんみたいに……挟んどいて。……え。何この羞恥」

そこにあるのはザンザスも気付いていたらしく、私が何も言わないうちに取ってくれたのだ。まあ、その際の手つきがいやらしかったこととかは忘れることにしよう。綱吉に見られてたなんて恥ずかしい。
ザンザスは恥ずかしがるどころか、明らかにこちらを馬鹿にしている。

「ハッ、ドカス共が恥じらいやがって」
「おれも!?……そう、それで、ザンザスがそれをなまえに渡してるのが見えたから、もしかしたら撃つんじゃないかって」
「なるほどね…。でも考えなかったの?私が鳥居を殺すんじゃないかとか」
少しでも考えていたら、拘束を目的としてあんなふうに飛び出したりはしないはずだ。(だってもう殺してるんだし。)

私の問いに、綱吉は笑って首を振った。
あたりまえじゃないか。とそう言わんばかりに。

「俺達、なまえが『殺さない』って跡部君達と約束してたのを見てたからさ」

「……ふふ。」
やっぱ、彼を守れてよかった。
さあ、最終局面へ

私はザンザスと視線を交わして、そしてくるりと進行方向を変える。
そう。
地面にうずくまって泣く、彼女の元へ。

「…鳥居亜里沙。」

私が向けた拳銃の音に、亜里沙はゆっくりと顔をあげた。
濁りきったその目にはもう、生きる意志など見当たらなかった。

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