「亜里沙、あんた確かボンゴレを傘下にするとか言ってたよね。綱吉にはもう会ったでしょ?どうだった?」 「ぁ、う…」 「傘下になってくださいってお願いしたんだよね?あんだけ自信満々だったんだから。そしたら、綱吉なんて?快くOK出してくれた?そんなわけないよね。だって、綱吉の隣にはこのザンザスがいたんだから。ザンザスは、格下の人間につくような人じゃないから。」 「、い、いかげんにしてよ!殺すわよ!!」 私はくるりと指先で銃を回した。 「こっちは殺しのプロよ?」 「…ッ!あんたじゃない、あんたの家族を殺すわ!」 「あっはは!それはもっと無理」 「殺せるわ!だって、ローマのあなたの実家には、アルギットの部下が何人も」 「言ったよね?…私の家はヴァリアーだって」 「でっでも、だって、あんたは動揺したじゃない!!ローマにあるあんたの家に、部下を送り込んだって言った時」 私は人差し指を揺らしながら不敵に笑んだ。 「自分だけが演技してると思ったら大間違い」 「…!!」 「アンタは怠った。だから分からなかったんだよ」 「分からなかったって…」 「イタリア、ローマに送ったっていうアンタの部下達とは、アレ以降通信が途絶えてるはず。大丈夫。殺さずに捕虜として、今はボンゴレ本部の地下にいるよ」 「うそよ!」 「信じなければそれでもいい。ただ、私の家族はヴァリアーだけ。」 「…!」 「私の家族を壊したければ、そうしてみればいい。……言っとくけど」 「ひっ」 銃口をこめかみに突き付けられた亜里沙は、顔を白いほど真っ青にさせて、短く息を吸い来んだ。 「そしたら私はアンタを許さないよ。一生かけて、恨んでやる。殺さず、生かさず、永遠に」 「……も、やめ」 「ま、あんたがザンザス達に怪我の一つでも負わせられるなんてとても思ってないけどね。あんたみたいな、箱入りお嬢様にはさ。……じゃあね。 ッバーン!!!」 「キャ―――――ッ!!!」 悲鳴を上げながら、ブクブク泡を吐いて倒れる亜里沙。笑い転げるベルをそのままに、私は時計を見上げた。 (…もう時間がない) 「跡部、説明を始めて」 「分かってる!」 マフィア?ファミリー??何でアイツ等武器持ってるんだ!何がどうなってるんだ! 混乱状態のまま置き去りにされていた生徒達に向かって、跡部は良く通る声で言い放った。 「今から、重大な説明をする。全員一言たりて聞き逃すな。――お前らの命に関わる事だ…!!」 「…!?」 そう前置いてから、跡部は語り始めた。限られた時間の中で。 私達の正体と目的。アルギットファミリーの真の企み。利害一致から、氷帝がボンゴレと手を組んだこと。今から起こるであろう、大がかりな駆け引き。その全てを。 不思議と、跡部の話している間、騒ぎ出すものはひとりとしていなかった。 誰もが現実離れした出来事を受け入れ切れていないのだろう。―――受け入れ切れていない生徒達は、こうしてその後叫び出す。 「マフィアとか兵器とか、そんなのいきなり言われてもわかんないよ!!」 「私達死ぬの!?ねえ!」 「そんな話、まるごと信じろって方が無理だ!」 「先生、どうにかしてよぉ!!」 「大体俺達に関係ねぇだろ!」 「そうだ!だって全部、全部亜里沙が悪いんだから!!!」 「「ごちゃごちゃ煩ェ」」 飛び交う煩わしさの中、私はステージ上のジローの脇に立ち、驚愕した。その更に隣でベルやスクアーロも唖然と二人の方を見ている。 「見た?てか聞いた?」 「見た」 「三人とも、お化けでも見たような顔してるC−」 「お化けより貴重なものだよ…」 「俺も、ボスさんと誰かのハモりなんざ初めてみたぜぇ」 「しし…こんなことあんだね。王子なんか感激」 私達がこんなに驚くのは、ザンザスの言動・行動が、横暴で、勝手気儘で、予知不可能な程気が短く、しかも限りなく口が悪いという理由からだ。ザンザスと言葉をかぶせるなんて…跡部の奴なかなかだ。 私達の熱い視線を受けながら、跡部は生徒達に話しかける。 「お前らも、今回の事でよく学んだはずだろ。自分達の信じる者が、必ずしも正しいものじゃないと!俺達はとっくに無関係なんかじゃねぇんだよ。 …マフィア同士の抗争も、兵器の開発も、非現実的で受入れがたい。 ―――だがこれが現実(リアル)だ。」 再び静まり返った体育館。 カチリ 時計が針を刻んだ。 real ×
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