「しっしし、うじゃうじゃいてキモいんだけど。殺してい?」
「護衛対象だぁ!駄目に決まってんだろぉ!!」

「なっ…」
「ザンザス先生に、スクアーロ先生…!?」
「それに、ベルフェゴール??」

体育館後方の扉から現れた3人は、真っ直ぐステージに向かって歩いた。
ただならぬオーラを背負う彼らの前方には、すぐに道ができる。




「ザ、ザンザス…!!!」
亜里沙の顔は驚きから一転、ニヤリとたくらみのそれになった。

「ザンザス先生っ、助けて!」
ザンザスに駆け寄った亜里沙は、改めてその後ろに控えるベルとスクアーロを見た。

「あれ、二人まで…なんでその隊服を…!?(ザンザスは『ヴァリアー』のボスだから分かるけど)」
「…しし、何でだと思う?」
「……!も、っもしかして、二人も…!?」
「俺達の顔も知らねぇとはなぁ…。名前も、聞いたことねえかぁ?」

スクアーロは剣を、ベルはナイフを取り出して、亜里沙を威圧した。
数歩下がった亜里沙は、必死で状況の理解を試みる。そして記憶の奥底に眠っていた情報をふっと思い出したらしい。



「…スペルビ・スクアーロ…!?」

――ちょっと、スペルビ・スクアーロって言ったら、ヴァリアーで一番強い剣士じゃなかった…?かつて剣帝を倒したとか。じゃあ、ベル君って…あの切り裂き王子…ベルフェゴール???


「…っすごい!!」
――こんな人たちが傍にいて、亜里沙なんで気付かなかったんだろう。
そうだわ、ザンザスと一緒にいるって事は、こいつらも亜里沙が目的でここに来てたって事でしょ?
幸い映像はまだ見てないし…
亜里沙の新しい駒にして、なまえもろともここの生徒ぜーいん血祭りにしてもらおっと!
(私にかかれば、皆私の虜にできるもん!)


亜里沙は涙を拭いながら、ザンザスの腕をぎゅっと握った。

「助けてください!おねがいっ、私なまえちゃんに…殺されちゃう!」
「……あ゛?」

亜里沙は震えながら、ステージの上の私を指差した。

「見てください!あの子…あれが、あれがあの子の本性なんですよ!本当は敬語なんて使わないし、すごく喧嘩が強いの…優等生なんて演技だったんです!だから、」
「3秒あげる。」
「え?」
「ザンザスから離れて。1、2、3。」

次の瞬間、亜里沙の視界に映ったのは至近距離の地面だった。どうやら、首元を掴んで投げられたらしい。遅れて痛みがやってきた。
「ゲッホ、ゲホ!あ…んたぁ…!!」
「あんたなんかが、触っていい人じゃないの」
「、何をっ」
「あんたなんかが、呼んでいい人じゃないの」

私は亜里沙にそれだけ言うと、ぐるりと彼女に背を向けた。
「…遅かったじゃん」

「…ハッ、何て面だ」
「だってむかつく」
「しかしよく飛ばしたなぁ!」
数メートル先で床に這いつくばりながら、恨みがましくこちらを睨む亜里沙を見てスクアーロは言った。
「なまえ、お前また力強くなったんじゃね?」
「え。何それかわいくない」
「もとからだろうが」
「な、なんだと!?」
「…ほらよ」
「あ!!…ありがとう。取ってきてくれたの?」
「黙れ。ついでだ」
「嬉しい!グラッツィェ、ザンザス」

人目も気にせず抱き着いたら、周囲が再びざわめいた。おっと…

「何でよ……何でよ!…その女より、亜里沙の方がずっと可愛いのに!!!なんで、あんたなんかが、ザンザス達に助けてもらえるのよ!!」
「……えええ」

まさかこいつ。まだ気付いてないの…?

「じゃあ教えてあげる」私はザンザスに抱き着いた体勢のまま、亜里沙に返事を返す。言葉で?いいえ、行動で。

―――ちゅうっ
「つまり、こういうことだからだよ」
「………てめぇ」
「!!!!…ッ最悪!サイアク!ありえない!頭おかしいわよ、どうせあんたの勘違いでしょ!?だってありえない。ザンザスはマフィアであんたは凡人で、釣り合うわけな」
「だぁかぁらぁ…なんで分かんないかな。」

私は、ザンザスから受け取ったものを思いっきり広げて、袖を通す。
亜里沙は悲鳴を上げた。
「う、うっそ…ウソよ!!」

私が身にまとったのはヴァリアーの隊服。
私が、一般市民で無いことの。闇に身を置く人間であることの、証。私の、誇り。

「独立暗殺部隊ヴァリアーは、私の家だよ」

NOT・一般人

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