「10分間しかないから手短に話すわね。あんた、邪魔」

わお。

「…昨日のことがあって調子に乗ってるんじゃない?」
「……昨日のこと」
「すっとぼけんじゃないわよ!」

三階B-22。空き教室。私は、怒りで真っ赤に染まった亜里沙に冷めた視線を送っていた。
(もちろんここにもカメラはあります)

「ザンザス先生にお姫様だっこしてもらって、さぞ気分がよかったでしょうね」

よし、ここで頬でも染めてやろうか。
ぽっ

「っっ、あんたみたいなブスが調子のってんじゃないわよ!!」
死ね亜里沙
「私はあんたよりザンザスを知ってる」
呼び捨て…だ、と……
コロシテヤロウカ

「あんた、ザンザスと知り合ってからどのくらいたつの?」
「3年…ですけど」
正確には+10年ほど。
「3年……長いわね。」
「?」
「でもあなたは何も知らないじゃない。何も聞かされてない。…信頼されてないなんて、かっわいそー」
「…」
亜里沙が何を言いたいのかよくわかった。

「どういう、いみ…ですか?」
「……教えてあげる」

亜里沙は顔をグニャリと歪めて、私にこう言った。





「あなたの知ってるザンザス先生はね、本当は、先生なんかじゃないの。―――マフィアなのよ」

「………っっ!!!」




し、知ってる〜







「なんの冗談ですか?」
「信じられなくても無理はないわ。でも確かよ。ザンザスはボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーのボスなのよ!」

亜里沙はおかしそうに笑っているが、私の胸はこれっぽっちも痛まない。当たり前である。
もしあなたが、海を泳ぎ回る魚だったとして、つい最近浜辺で遊んだってだけの山猿に「海って広いのよ」なんて言われてみろ。殺意がわくはずだ。


「ヴァリアーの人間の素性は、裏の裏のさらに裏情報だから、マフィア界でも知らない人が多いのよ?私だってボンゴレとの対談で会わなきゃきっと気づかなかったわ」
「……」

私は困惑した表情を浮かべた。
きっと亜里沙は、私とザンザスの信頼関係を崩したいのだろう。

「ザンザスは私、鳥居亜里沙の人間性をはかるために氷帝に来たそうよ」
あながち間違っちゃいない
「だから、あんたやベルフェゴールやスクアーロ先生はみんな、フェイク!ザンザスの目的は、はなから私一人なのよ!!」
……うん。あながち間違っちゃいない




しかし、まあ…なんだかなぁ

(すっげ、ムカつくわね)



「ザンザス先生がマフィア…」

私は窓を開けて、思い切り息を吸い込んだ。新鮮な空気が肺に満ちる。
怪訝そうにこちらを見る亜里沙には、絶望した表情をして見せなければいけないんだろうけど、どうにもこうにもそんな気にはなれなかった。
―――だから


「ふふ。先生よりも、そっちのほうがずっとしっくりきますね」

「…っな!!」
「―――どうだっていいんですよ。あの人がマフィアだろうが、教師だろうが、どうだって……。」

怒りにひきつった亜里沙に、柔らかく微笑みかける。

「わたしは、
ザンザスの中身がすきなんだから」

無抵抗

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