「なまえちゃん、ちょっと話したいことかあるんだけどぉ…」 「却下」 「……ベル」 「俺達今忙しンだよ。見てわかんだろ?」 そう言いながらトランプをシャッフルするベル。亜里沙の頬がピクリとひきつった。 私はため息をおとして彼女を見上げる。 「あなたと話すことはありません」 「あ、亜里沙にはあるよぉ?」 「なら、ボディガードのひとつでもつけてください。ほら、あそこで私を睨んでる彼女達なんてどうですか?」 「なまえちゃん…聞いて」 「あなたと二人でいると、ありもしない噂がたってしまうので。」 「なまえちゃん!」 「…」 亜里沙が私の手を握る。這い上が〜〜る、と〜り〜は〜だ〜〜。 「亜里沙はね、殴られたって別に良いの!」 「はあ…。」 「殴られたって、なまえちゃんとはちゃんとお話ししなきゃいけないと思うの…、」 亜里沙…、なんて教室のそこかしこから上がる声。 アウェー感。ひたすらアウェー感。 ベルは一人でトランプのお城を作り始めている。 「はあ…、わかりました。じゃあ次の休み時間にでも。」 「ほんと!?よかったぁ…ありがとう、なまえちゃん!」 「いえ…」 チャイムが鳴り、教師が入ってくる。 じゃあ後でね。なんて友人に話しかけるかのような笑顔でそういった亜里沙は席にもどってゆく。 「なあ、なまえ…お前まじで行くの?」 「ええ。もしかしたら、彼女も改心したのかもしれませんし…」 ベルが首をかしげる。 私はウィンクして、斜め前に顎をしゃくった。すると口角を持ち上げるベル。確実に彼にも届くような小声で、私に話しかけてきた。 「また何かされたらどうすんだよ」 「大丈夫ですよ。彼女ひとりくらいなら…」 「この前みたいなことがあったら?」 「その時は、まあ、その時です」 「…てんめ、バカかよ。」 「私は強いですから」 「毎日あんなボロボロにされてるくせに」 「へのかっぱ、です」 「………携帯画面、俺の電話番号にしとけ。すぐかけれるように」 「過保護ですね。」 「しししし!生意気」 「…ありがとう」 ベルはキョトンと私を見る。 そんな顔されても、言いたくなってしまったんだから仕方ない。 「ありがとう、ベル」 理屈とかじゃないんです 本当に言いたければ、伝えたければ、心からするりと漏れ出してくるものだから ×
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