「じゃあ中学生諸君にもよく分かるように説明するから、ちゃーんと聞いてね!」

私はホワイトボードの前に立ち、眼鏡をくいっとあげた。服装はスーツ。気分は女教師である。
ちなみにスタイルについてはツッコまれ済だ。
最前列はもちろん綱吉。(良平とランボは多分聞いても分からないだろうということで、少し離れたところで戯れていた。)


「綱吉達の運んできた情報と、私達の持ってた情報を合致させると…」

キュッキュッキュ…

「こうなるわけ。」


・アルギットファミリー(鳥居)
『α』
人間の体内に入り込み血中に混ざると皮膚や血管を壊死させる、即効性の劇薬。

・チャンファミリー(ウェンロウ)
『Air converter』
別名:空気変換機
液体系、固体系の薬物を粉末化させ、空気中の酸素と結合させて排出させることのできる装置。


◎チャンとアルギットの取引
日時:5月28日13時00分
場所:
品物:アルギット『α』
   チャン『Air converter』



綱吉達は青い顔で頷いた。
「…絶対食い止めなきゃいけない取引だって事がよく分かった」
「ようやく理解できたかカスが」
「ダメツナめ」
「俺だけ!?」
「ともかく、この二つが揃ったらえらい数の人間が死ぬ。そういうことだよね?」

私の問いにリボーンは頷いた。

「九代目には今連絡を入れたぞ。ボンゴレ総力をあげて奴らの現在地を割り出すそうだ」
「こっちもヴァリアー本部にゃ報告済みだぁ!」



「後は…取引場所か」
この場所に関しては、お互いひとつの情報も握れてはいなかった。

「あそこは?この前ボスとかと鳥居が会談したホテル」
ベルの仮説に、スクアーロは首を振る。
「とっくに裏はとったが、その日は別の企業が商談で使うようだぁ!」
「フーン?確かかよ」
「そもそもあそこはボンゴレの手が回ったホテルだろぉ!害虫の侵入なんざすぐ分かる!」


「取引って薄暗いトコでやるもんだろ?普通。」と山本。
「川の近くにあるでかい廃工場とか、それっぽくね?」
「廃工場…」
「野球バカのくせにいい事言うじゃねーか!そうっすよ十代目!あそこなら人目にもつかないし」
「無理だぞ」
「なっ、なんでッスかリボーンさん!」
「あそこの廃工場の周りにあるのは川と畑だけだ。兵器の効果を実証するには人間がいな過ぎる」
「…ってことは、まさか街中で!?」



「…」


やっぱり、不自然だ。


「どうした」
私はザンザスを見た。――――どうも、何かがひっかかるのだ。

「…取引の時間帯が割り出せた時、私たち、疑問に思ったよね」

ふつう、取引は夜だ。
誰の目にもとまらぬ暗闇でひっそり悪をやりとりするために。


「それで…考えた。理由を。」

ザンザスは、皆は、口を閉じて私の言葉に耳を傾けている。
考えがまとまらないのに、どうしてか不安にも似た違和感が、私の胸を騒がせた。


「昼間にやるって事は、人目についても構わないってこと」

「取引の中身が知れた今……それはつまり、人の多くいる時間をあえて狙って、より多くの人間を殺そうとしてる。こう考えるのが普通だよね」


「―――でも、待って」


「それなら夜でも別によくない?」

「確かに。」ベルが頷いた。
「しかも明日って金曜だろ?金曜の夜とか、昼よかよっぽど人多そうじゃね?」
「そうだなぁ」
「奴らがわざと昼間を選んだ理由が他にあるのか…?」

平日の昼間でなければいけない理由
そこでなければ殺せない人間………?


「…なまえ」
綱吉が不安そうに、青白い顔で私を見つめてきた。

「聞いても、いいかな」


綱吉もきっと同じ違和感をずっと感じていたのだろう。――そして、それを私よりも明確に、掴みかけている。
私は得体の知れない恐怖におされながらも、ゆっくり頷いた。
「予想が外れればいい」綱吉の心の声が聞こえて来そうだった。


「5月28日の午後1時、『きみら』は、何をしてるの…??」




「……――――!」

その言葉で、一瞬にして全て繋がった。
鳥居の創り出そうとしている地獄絵図をが、いともたやすく想像できた。



「全校集会」



明かされた目論み


私は「場所」の脇に「氷帝学園・体育館」と震える字でそう付け足した。
そこは、全国の資産家や政治家の息子、企業の御曹司、財閥の跡取り。次世代の日本を担う彼らを一掃するには、最適の場所であった。

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