「『α』…?」 綱吉は頷いた。 私たちより先に事情を知ったらしい彼らはみな重々しいものを顔に浮かべている。 「リボーンの知り合いの情報屋が、確かな筋でその話を入手したらしいんだ。 ――劇薬『α』。 アルギットが秘密裏に開発を重ねていた新薬っていうのは、たぶんこの事だったんだ」 綱吉はザンザスを見た。 ザンザスは無言で、続きを促す。 「お前らここに来る前に資料を見ただろ」 「しし。見たぜ?あのエグイ写真だろ?」 「そうだ。ただ、あの段階じゃ『α』はまだ開発中だった」 「…じゃあ、それはもう完成したのね。」 「そういうことだ。」 「……5月28日午後1時」 ザンザスがボソリと溢した言葉に、リボーンは目の色を変えた。綱吉や、獄寺達も。そして当然、私達も。 「こういうことだろ」 「…知ってたのか?ザンザス」 ザンザスが口をとざしたため、リボーンが説明を求めるように私を見てきた。 「…ヴァリアーの隊員を数名、アルギットに送り込んでるのは知ってる?」 「ああ」 「彼らが集めてきた情報の中には当然、取引や会談の日取りや場所、鳥居の行動パターンなんかがあるわけなんだけど……。その中に不自然にブランクだらけの取引が出てきたの。――それが5月28日。つまり、明日行われる取引。」 私から言葉を引き継いだスクアーロ。 「平日の真昼間からする取引なんざ聞いたことねェし、取引の中身も場所も、取引先の情報もゼロ。どうやらこの取引の中身は鳥居以外知らねえらしい」 「で、どうしたもんかっつって俺らで考えてたとこにそのネタきたら、もう確実だろ」 リボーンは頷いた。 「取引されるブツは『α』で間違いねぇ。」 「相手は?もう割れてんだろ」 「ああ。お前らもよく知ってる。」意味深に一度言葉を濁したリボーンは続けた。 「チャンファミリー」 「……ウェンロウかぁ!!」 スクアーロが殺気立って立ち上がるのを隣の山本がなだめるが、熱くなったスクアーロにはあまり聞こえていない。 「あの野郎…やっぱ生きてやがったなぁ!――ザンザス!俺に許可を出せぇ!掻っ捌いてきてやるぜ!!!」 「待機してろクソカスが」 「あ゛んでだぁ!?」 ウェンロウ率いる中国マフィア、チャンファミリーは、先日ボンゴレ相手にクーデターを引き起こしたばかりであった。もともとボンゴレの傘下であったチャンの起こしたこの暴動は、おもにヴァリアーによって鎮圧されたわけだが…… 「首謀者のウェンロウと、その部下数人の死体だけがどうもあがってこなかったんだよなー」 ベルは当時の惨劇を思い出しながら愉快そうに笑った。 「しししっ。まさかこんな早く動き出すとは思わなかったけど」 「奴らもそれが狙いでしょ?」 「リボーンさん。」獄寺は声をひそめて訪ねた。 「何だ?」 「ヴァリアーの包囲網掻い潜ったって事は、そいつら腕がたつんスか?マフィア界じゃあんまり聞かねェ名ですけど」 「いや。ザコだぞ」 「ザコだ」 「ザコだぜぇ」 リボーンとザンザス、スクアーロの返答は被り、獄寺は混乱しているようだ。 「逃げられたのは、単に逃げ足が速かったからだよ。私らが危惧してるのは奴らじゃなくて『奴らが持って逃げた』"ある装置"の方なの」 「装置?」 これに関して綱吉達は何も知らないらしい。 「Air converter.」 リボーンの眉がぴくりと動いた。 うん、つまりそういうこと。 「これで、アルギットがチャンを。チャンがアルギットを求めた理由がはっきりしたな」 筋道 (…ごめん、なまえ、どういうこと?) (死ね沢田) (ちょ!ザンザス!) (ランボさんにも、分かるように説明するんだもんねーっ!) (俺もだ!何を言っとるのか極限に分からん!) (芝生頭!アホ牛!テメーらはお外で遊んでやがれ!) ×
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