「お久しぶりです。…なまえ」
「ねえ骸ここで何してるの?ヴィンディチェは?」
「あの男の姿で近付けばハグのひとつもしてもらえると思っていたんですがね…。クフフ、とても残念です」
「ねえ骸あなた暇なの?なんで無視なの?」
「それより、前見たい時よりも怪我が増えているようですが。僕は一体誰を殺せばいいんでしょう」
「くそ、話が通じない…!」

頭を抱えた私の背中にドスンと衝撃が走った。前に数歩よろけながら振り返ると、ツンツンと固そうな頭が見える。
腰に回された腕。容赦なく腹を締め付けるそいつは、私を見上げてニィッと口角を上げた。


「なまえ!!!久しぶりらびょん!」
「犬…!?」
「ちょっと犬、離れなよ。」
「千種も!ひさしぶり!ってか、皆何でそんなナチュラルに出現してんの!?」
「なんか骸さんが」
「ちょ、タンマ待って」


人目につくのを恐れた私は、取りあえず三人を連れて傍の空き教室に入った。

「この前スーパーで沢田綱吉に会って、なまえが日本に来てるって聞いたから」
「骸様がどーしてもなまえに会いに行くって言って、今に至るびょん」
「犬、いい加減なまえから離れなさい」

骸に言われて大人しく私から距離を置いた犬。
すかさず骸が私の腰を引き、耳元で甘ったるく囁いた。

こいつ私よりいくつか年下のくせに、なんでこんなナチュラルにボディタッチしてくるんだろう。恥じらいとかはないのかしら。というか、XANXUSに殺されるんじゃないかな。

「ここにはヴァリアーの面々もいる筈なのに、貴女は今にも殴られそうでしたね」

骸はするりと私の袖をまくり、見るからに痛々しい痣の浮いた腕に指を這わせた。


「そして、この有様。クフフ…理由によっては、僕は今からザンザスにちょっと顔を見せにいくつもりですよ」

おっと。殺される心配するどころか、この人ザンザスとドンパチやる気満々だった。
こりゃいかん。

「骸。これは違うの…うん。まあ聞いてよ」


あくまで微笑んだまま腹の中で着々と仄暗い計画を企てているであろう骸に、今回の一件をざっと話す事にした。話を脇で聞いていた千種や犬も、内容があらわになるにつれて顔を険しくさせていく。

「………アルギット」


彼らはもう思い出したくもないであろう、古い傷跡を少し抉ってしまった。
私は目を伏せながら、頷いた。

「この任務を果たして、アルギットを根絶やす。」
「……なまえ」
「そうしたらイタリアに帰れるの。皆、私に協力して手を出さないでくれてる……」

だから、わかるでしょ?骸。


「もう少しで、きっと終わりにするから」
私がそう言うと、骸は深く息を吐いてから、軽く微笑んだ。

「……仕方のない人ですね。貴女は」
「ごめんね」
「でも、極力傷は負わないように」
「そうらびょん!」
「肌、綺麗なんだから…。」
「あはは。分かった、ありがとう」

私は時計を確認した。
部活が始まって、30分ほど経ってしまっている。


「じゃあ、私そろそろ行くから」
私がそう言うと、骸は私の頭をゆっくり撫でつけて頷いた。

「辛くなったらいつでも僕らのところに来なさい」
「…黒曜で待ってる」
「俺がいっぱい遊んでやるびょん!!」


私は強く頷いて、三人に手を振った。鬱々としていた気持ちを振り払ってコートへ向かう。
「……よし。」

がんばろう。

あたたかいなあ

亜里沙、あんたはさ、持ってないだろうね。

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