奴らの動きは目で追うのがやっとな程に素早かった。 バットやナイフを持つ相手は、それなりに腕のたちそうな風だったのに、なまえ達が動き始めたらたちまち悲鳴を上げた。あまりに呆気なく、恐ろしい速さで仲間達が倒れていくことに恐怖を感じたのだろう。 右足の蹴りを手刀で弾いて鳩尾に重い一撃を食らわせるなまえ。 殴りかかってきた相手の拳を軽く躱し、背を反らせて敵の顎を蹴り上げたベル。 俺が動作の全てを確認できたのはこれだけだった。あまりに身軽に、何の躊躇もなく敵を潰していくなまえ達を前にして、奴らが殺し屋だという事実にやっと実感が出てきた。 「本物だ…こいつら」 「す…すっげぇC−」 「…ウス」 顔色一つ変えずにどんどん敵を減らしていく。 こいつらにとっちゃこんなのは日常茶飯事なんだろう。(現に俺達でも、こんだけ大勢に囲まれてる今より、一昨日のブチ切れたXANXUS一人を前にした時の方がよっぽど鬼気迫るものがあった) 「ク、クソォ」 「ぐあああ!」 「おぐっ」 ―――俺達とそう歳も変わらないのに、生きている世界が、まるで 「くらえっ、スコットゥロ・デ・ベソクソアーロ!」 「う゛お゛おぉおい!!」 「十八番とられたからって一々喚くなよ、スク先輩うぜ」 「ンなもん十八番にした覚えはねえ!!テメェ等おろすぞぉ!!」 「ケチケチしないで、よ!っと」 「…ハッ」 どこか生き生きと相手を倒しているなまえをじっと見つめて、俺は思わず笑ってしまった。 (なんだあの爽やかさ面…。ったく、ずっとあれでいりゃいいんだ) そして、真っ青になった首謀者一人以外の全員が地に伏すまで、かかった時間はたったの15秒程であった。 ガタガタ震える男に近付いたスクアーロは、そいつを壁に押し付けてどこからかギラついた剣を取り出した。まさか殺すんじゃねぇだろうな、と俺は嫌な汗が額に滲むのを感じる。 「う゛お゛おぉぉい!!!!」 ビリビリ空気を震えさせる大音量でがなりつつ、剣を男の喉元に突き付けたスクアーロ。かと思えば途端に低く低く唸る様に男に囁きかける。 「てめぇがどこのどいつだか知らねえが、これ以上の人間率いたところで結果は同じだぁ!」 「…ひ、ぃい!」 男はスクアーロと剣の両方にビビりながら、今にも失神しそうなほど血の気の失せた顔で目の前の男を見上げていた。 「今回はその命、奪わずにおいてやる。だが、次はねえ。 もし、また次にテメェがなまえの前に現れるような事があれば……俺じゃねえ、」 一度言葉を区切ったスクアーロは、暗殺者らしい残虐な笑みを浮かべて言った。 「奴が、直々にテメェをカッ消しに行く!!」 覚悟しときやがれぇ!!!最後にそう怒鳴ったスクアーロ。男は悲鳴を上げ、情けなく白目をむいて崩れ落ちた。 「しっしし、気絶してんじゃんコイツ」 「弱すぎて話んねぇぞぉ!」 死屍累々。まるで戦地のような有様に改めて呆然としていると、頭の垂れたなまえがおずおずと近付いて来た。 「…あの、さぁ」 俺はなまえが何を言いたいのかすぐに察せた。 その表情はまるで悪戯は見つかった時の子供ようで。叱られるのを恐れているような…俺達の反応を伺っているような、そんなふうだった。 僅かな沈黙に決意を固めかねているなまえだったが、やがて呟くように俺達に尋ねた。 「……あたし達が怖いかな?」 答えて、ボーイ! ×
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