日も落ちきった、人通りのない公園。





スパーン、スパーン





「……」




「今、だけ、…です、っから」




スパーン




スパーン




「ちゃんと、わすれてください」





スパーン





「…っ」


信じてもらえないのは、いたいです



「くそ、!」

宍戸はラケットを地面に、力任せに叩きつけた。跳ね返ったボールは打ち返されることもなく、林の中へと消えていく。

――「目を開け。そんなに簡単に、見落としてんじゃねぇよ」
繰り返し聞こえる跡部の声。
さっきから鮮明に思い出される、なまえの悲痛に満ちた言葉の数々。

見落としてる?お前らじゃなくて、俺達が?何で跡部はそう思うんだ。亜里沙と長いことやってきたのに、亜里沙じゃなくて、アイツを信じる理由は、何なんだ…―――!!


「もう、わかんねぇよ…」


――「亜里沙は俺達の仲間だ。」
俺の言葉に泣き腫らした顔で笑った亜里沙。


――「……護るから、俺が…助けてやるから、泣いてくれ…!」
今まで堪えていたものを、張り詰めた糸を、緩めたようにようやく涙を溢したなまえ。



亜里沙の痛々しい痣を思い浮かべても、今日見たなまえの身体の傷の方がよっぽど重症に思えちまう。俺達のつけた傷が全部じゃないことなんて、見ればすぐに分かった。
正直、俺はあれだけ身体に痣が残った経験をしたことがない。
テニスの練習や試合でもあれだけボロボロにはならない。あんな、ふうに

(俺達が、やった)



でも、あいつは亜里沙を殺しかけた。
俺達のしたことだって間違いじゃない。(やり過ぎだ)

亜里沙を護るためだ
(一体誰から)

なまえ、が亜里沙を、また痛めつけないように
(本当にあいつはやったのか?)

襲われたのだって自業自得だ
(ならなぜ、俺はあんな事を言ったんだ)

仲間と信じさせるためだ。長太郎だってそうだ。そのつもりだったんだ
(あいつが泣くのを見てほっとした)

信じさせて、裏切ればいい
あいつは泣くかな

(見たい、とは、おもわねえ)


もっと泣かせればいい、もっと傷付ければいい、亜里沙の受けた痛みの、

半分でも、

あいつに…―――――!!!



「宍戸、君でしたっけ?」
「ああ。」
「その式、一行目からすでに間違ってますよ」
「!」

「大丈夫ですか? その問題けっこーむずい、ですけど」


「……、っ」

掻き消えろ、
分かんねえよ、畜生

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