「皆、おっはよー!」

ただならぬ雰囲気の漂う教室に、不釣り合いな明るい声が響く。
「あ、あれれ?」
多くの目に一斉に見つめられて亜里沙は目を丸くした。
亜里沙の腕には、思った通り、大袈裟なまでの処置が施されていた。私と視線を交えて、あからさまに肩をビクつかせる。
「なまえ、ちゃん」



「離せよ!」ベルの手を振り払った彼、名前を、確か…柴田君だっけ。
亜里沙ファンクラブの会長だったかな。
どうでもいいけど。

「こんなサイトに登録して、出会い求めてよ、お前みたいなゲス女にかまう奴なんていねーんだよ!!」

朝からめちゃくちゃ絡まれてんだけど、とは言わない。
逆上した柴田君の言葉で、周りのクラスメイト達の怒気もうなぎ上り。向日と宍戸が、亜里沙の傍に立った。

「亮、がく…きゃ」

向日が亜里沙の頭を引き寄せて、自分の胸に押し付けた。


「知らない奴はもういねェと思うが、改めてお前らに教えてやるよ」
宍戸の瞳は怒りに燃え、
向日もまた恨みがましく私を見ている。

「昨日、亜里沙を階段から突き落としたのは…この苗字だ!」

「私はやってません」

「侑士の目の前で突き落としたんだろ!」
「今更しらばっくれても遅ェんだよっ」
「だから、あれは誤解で」


「いい加減にしろよ」

冷たい声に遮られて顔を上げる。私は声の主を見つめて、驚愕した。

「……ベ、…ル…?」

なんで

マトリョーシカ

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