昼休み終了のチャイムを遠くで聞きながら、なまえは携帯の電源を入れた。可愛らしい待ち受け画像を右に3回スライドさせ、さらに画面を軽く叩く。 ――トントントン。3回。 叩いた場所にピンク色の花の粒が弾け、更に決められたテンポで画面を叩くと今度は真っ暗になる。数秒後、画面中央に現れたパスワード枠に数字8ケタを入力。そうすることでようやく画面がボンゴレのシンボルマークに移り変わる。 「毎度のことながら面倒臭い」 呟きながら、監視カメラの映像をチェックする。 第一校舎3階廊下…いない 第一校舎2階渡り廊下…いない 第二校舎2階女子トイレ…いない 第二校舎3階階段…… 「みーっけ」 手鏡で前髪を気にしながら階段を上る亜里沙。 「大丈夫だよー、そんなことしなくてもかわいくないから。つーか転べ!いまだ!ころべ!」 「お前ひとりごとウッサイ」 「あ、ごめ」 「んじゃオレ先行くぜー」 「んー」 ベルが出て行って暫く、フェンスに寄り掛かり、眼下の街を一望した。ふと、ある歌が脳裏をよぎる。 「…」 「Partirono le rondini dal mio paese freddo e senza sole cercando primavere di viole, nidi d'amore e di felicita.」 (ツバメ達が去っていく 寒く日のささないこの地から 愛と幸せの巣と春の花々を探して) 耳の奥でフルートが囀る。目を閉じれば、イタリアの美しい街並みが脳裏をかすめた。 こうしている間にもあちらの夜は進んでいるのだろうし、ルッスーリアやレヴィやマーモン達は愉快に暗殺しているに違いない。 「Non ti scordar di me: la vita mia legata e' a te. Io t'amo sempre piu, nel sogno mio rimani tu.」 (私を忘れないで 君こそが我が人生 いつまでも愛し続けるよ 夢の中に君はいるから) 「…」 ―――がんばろう。 早く終わらせて、皆でイタリアに帰るんだ。 故郷 忘れな草(Non ti scordar di me)/クルティス ×
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