亜里沙にはひとつだけ確かな自信があった。あの女がどう足掻いたって知る事のできない重大な、私と、ザンザス先生の、二人だけの秘密。

ベルフェゴールも、
スクアーロ先生も、
ゆっくり時間をかけて亜里沙のものにしていくの。だけどまずは、ザンザス先生が欲しい。あの女は邪魔なのよ。


「フフフ…」

亜里沙は怪しい笑みを浮かべながら校舎の角を曲がる。
すると、校舎裏にいた多数の生徒達が一斉に彼女の前に跪く。――これが私の、本来在るべき正しい姿。
恍惚に息を吐いた亜里沙は腕をくみ、言い放った。


「あなた達、アレが欲しかったら今すぐ"苗字なまえ"を消してきなさい」



**

「わ、かりました亜里沙さま」
「いますぐに行ってきます」
「わたしたちは亜里沙様のお命のもと…」

濁った眼をした生徒達は、高らかに笑う亜里抄に背を向けて彼女の元に向かう。

(殺さなきゃ)
あの人を殺さなきゃ、私達が死んじゃう

――バタン

屋上に飛び込んできた彼らを迎えたのは、朗らかな笑みを浮かべたなまえだった。彼女の手元には「例の」音楽再生機が握られている。

「いらっしゃい」

来ると思ってましたよ。そう続けてなまえはフェンスに寄りかかった。口元に浮かべていた笑みを取り払い、能面のように表情を冷たくさせたなまえは続ける。

「私に何かご用ですか?」

(まあ、さっきの会話聞いてたから大体分かるけどね)

彼女たちが私の質問に答える事は無かった。まずは一番手前にいた少女が切羽詰まったような奇声を上げて襲いかかってくる。それを合図に、背後にいた数人の男女も一斉に飛びかかって来た。


結果は 目に見えていた。

「…」

一斉にばたばたと崩れていく様を、なまえは憐れんだように見つめる。
だって、相当可哀そう。
何の関係もないのに。
亜里沙なんかと出会わなければ平穏無事に過ごせたろうに。
変なモノを覚えさせられて、それ無しじゃ生きられないようにさせられた。

「アルギットは外道だね」

こくり、と少女の首が揺れる。なんだよ亜里抄はこんな一般人にまで自分の情報をバラまいちゃってんの?もしかして殺されたいのかな…

「助けてあげようか」

こくり、と。また一つ頷いた後に、彼等は気を失った。

「なまえも物好きだよなー」
「あ、ベル…居たんだ」
「居るっつの」

ベルにしては珍しく機嫌が良かった。しし、と怪しく笑む彼に向きなおる。
「俺だったらコイツ等みーんな抹殺してるし」
「ベルは血の気多いもんね」
「分かってんじゃん」

さて、この子たちをボンゴレの病棟に送り届けた後、ゆっくり始めますかね。
あっちも私を潰しにかかってくるみたいだし?丁度良い。頑張れ、わたし。

「まずは、ベル、お願いがある」
「?」

こそこそ

たくらみの彼女

(え?それマジでやんの?王子じゃなくてもよくね?)
(スクアーロは演技下手だからすぐバレる。ザンザスは…あれ、うん、無条件でダメ)(…)

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