「そういうわけで、ベル子さんです」
「うしししっ!よろしくカス共」

昼休み、心配して来てくれたツナくん達の反応は皆様のご想像にお任せする。

「つーわけだから、王子、じゃねーや姫達今青春満喫中なのよね〜。もうテメーらの手助けもいらねーしって感じ?ねーなまえ」

「あの、ベル子さんその(偽物の)胸押し付けるのやめてもらってもいいかな……色々つら、「やだ〜、なまえ照れてんの?かわいー。っつーかまじ泣かしてー」助けてツナくんんん!!」

「や、やめろよ!ベ、ッベル……子さん!!」

「は?何お前王子に楯突くとか殺すよ?」

「ベル子さん!?」

盛大なキャラ迷子、というかもうあんまりキャラを立てる気のないベルは私の片腕をがっつりホールドして離さない。

「でも同じクラスに仲間居んなら安心なのな」

「こんなナイフ野郎逆に危なくてしかたねーよ!」

「カッチーン」

「ま、まあまあベル。これでも食べて落ち着いて」

ザンザスさんがホイップをクリームしているうちに同時進行で作っていたお弁当を彼の口に運ぶ。
ぱくりと、おさまった肉団子を咀嚼しているうちにベルの機嫌が直っていくのを感じて安堵した。

「(なまえ……ベルフェゴールの扱いがもうプロ級だ)」

「それで、調査の方はどんな調子なんだ?」

びっくりしないぞー。
気配なくリボーンくんが背後から現れたってもう驚かないぞー。

「それが全くなし。家中ひっくり返しても盗聴機一つでてこねーの」

「(ああ、家中ひっくりかえされたわけか……とほほ)」

「術者の可能性はねーのか?」

「わかんね。だから、今ボスがマーモンをジャッポーネに呼ぼうかって言ってたとこなんだけど」

「その必要はありませんよ」

皆の顔色がさっと変わり、全員が勢いよく屋上の入り口を見た。

「あれ、吉岡先生?」

英語教師の吉岡先生だ。
彼はにこやかに笑って私を手招いた。腰を上げかけた私の腕を、側にいた隼人くんが掴む。

「え、」

「俺らから離れんな」

「う……うん」

じっと先生を見据える隼人くんから、視線を先生に戻す。彼は相変わらずの笑みを浮かべている。

「クフフ、そこまで警戒されてしまっては、何もできませんね」

「しなくていーんだ、よっ」

「ベル!!」

ベルが懐にしまっていたらしいナイフを先生に投げつけた。最悪の結末を想像した私だが、先生はそれを軽々とかわしてこちらに歩いてきた。
あれ、ていうか先生ってこんなキャラだったっけ?もっと大人しげで優しげな感じじゃなかった?あれ、イメチェン?あれ?

「骸、だよな?たぶん」

「……たりめーだろ。あの教師に憑依してやがる」

「ど、どうしてお前がこんなところに」

「お黙りなさい。君たちには用はない」

先生は私の目の前に立つと、片膝をついて私の右手を取った。

「会いたかったですよ、
私の愛しいなまえ」

薬指に寄せられる唇。
こちらを見上げるオッドアイには覚えがないのに、その奥にひそむ色を、わたしは確かに覚えていた。

「…………むくろ、君?」

彼の唇が綺麗な弧を描いた時、先生の姿は一瞬滲んだのちに、見覚えのある青年へと形を変えた。

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