「てんめェ、クソベル!!!誰がマリオだぁ!!」

ドアが閉まってボーイの青年の足音が遠ざかった所で、目を三角にしてスクアーロさんが怒り出した。一方のベルは、鼻をつまんで「プーン」とマリオジャンプの音を何度も繰り返してスクアーロをからかっている。


「しっしし!いいだろ別に。偽名ボスしか決まってなかったんだしさ」

「あ、そうだったんだ」
じゃああれは全部アドリブか…。さり気なくザンザスさんもやってたし。凄いな皆。



「それにしてもVIPルームって」

「当然だ。」

「下手に小狭いマンションなんざ用意したらボスが一瞬で灰にするからなぁ」

「しっししし。王子も泊まるんだしこんくらいフツーじゃね?」

「だ、だってこんなに豪華じゃ目立つんじゃ」

「こういうのはコソコソしてた方が逆に目立つんだぁ!なまえも慣れねぇだろうが堂々としとけ」


そういうものだろうか。とりあえず頷いて、改めて部屋を見回す。
ザンザスさんはさっそくソファについてくつろいでいるし、ベルは冷蔵庫の中を漁っている。何やら資料を持ち出してザンザスさんの前に腰かけたスクアーロさんは、きっとこれから仕事の話でもするんだと思う。


(これなら…少しだけ…こっそりはしゃいでもいいかな)

まずはずっと気になっていた窓辺に駆け寄った。
「う、わぁ…」

高い。下の方に見える車はミニカーのようだし、人なんか米粒大だ。遠くには学校も見える。これ、夜はすごく綺麗なんだろうな。
乳白色の大理石のバスルームは広々として優雅だし、その隣のベッドルームのベッドは言うまでもなく天蓋付きの豪華なものだった。少し助走をつけて飛び乗ると、弾力でニ、三回は弾んだ。ちょっと興奮がとどまるところをしらない…。

「これ、絶対ミラコスタにも勝るよ…」

こんな呟きが、隣の部屋にいる、とっても耳の良い暗殺者の三人に筒抜けであることは、知る由も無い事であった。


(はしゃいでやがるな)
(はしゃいでんなぁ)
(しし、庶民って幸せだよな)

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