「あのアマ…ぶっ殺す。」

現時刻4時13分。このままバックれやがったら、死にたくなる程苛め倒してやるあの女。
阿含がイラつきながら携帯を閉じた時、向こうの角をドリフトして曲がり込んできたバイクが目に移った。ギャーという悲鳴と共に。

「ル、ルイさんんんん!!しぬーー!!」
「カッ!ビビりが!テメェほんとにヒル魔の妹かよ!」
「よー兄と並べないでよう!!」
「おら!着いたぜ!」
キキキィッ
「急ブレーキィ!?ぐええっ」

あれは…


「さっさと降りろ。テメーのせいで予定が狂っちまうぜ」
「あ、あ、あしがふらふら」
「カッ!なっさけねぇ。…それといいか?ヒル魔には俺の後ろに乗ったこと死んでも言うなよ!」
「どうしてですか?」
「どうしてじゃねーだろ、このポンコツ女が!俺が殺されるっつんだよ」
「ぽんこつ…」
「分かったな!」

――葉柱か…?
そしてその隣にいる小柄な女の姿を見て、俺は腰かけていたベンチから立ち上がった。
葉柱は俺に気がつくことなく、去り際に少し躊躇いながら奴の頭を撫でて(!)走っていった。

「…」

ぼけっとその背中を見送るなまえ。
俺はその後ろに立って、肩に手を置いた。

「俺との待ち合わせに遅刻したうえ、男に送ってもらうとか、イイ度胸だな」
「っっっ!!!」

ビクゥッと肩を跳ねさせたかと思えば、ガクガクと膝を震わせて前のめりに転ぶなまえ。


「ギャー!!ごべっごべんなばい!!!うわ、わあわわ」
「お…おい」
「あっ阿含さん……怒…らないで」
「……こっち向け。」

地面にへたり込んだまま首を後ろに向けるなまえ。
小動物さながらなその動作に、阿含はもはや怒りなど感じなかった。

「怒ってねェから」
「……ほんとだ」
「つーか早く立てよカス。目立ってしょうがねえ」
「…」
なまえはすう、と息を吐いて阿含を見つめた。

「バイクと阿含さんのWパンチで腰が抜けました」

 

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