短編 | ナノ
意地っ張りな二人への5題:ジャブラ

「覚えとけよ、女狐!!」

「んふふ、負け犬の遠吠えね」

嘲笑を浮かべた彼女に背を向け、ジャブラはその場を離れた。

喧嘩の原因は言うほどでもないくだらないことだが、結局は今日も女狐に口で言い負かされた。
口から先に生まれてきたのではないかと思うくらいに口が回る彼女には、一度として口喧嘩では勝ったことがない。

「ったく、なんなんだアイツは」

がりがりと頭を掻いて溜息をつく。

喧嘩を売られるのはいつものことだが、たまにあの目を見なければいけないのが困る。
ジャブラ自身も彼女自身もある種、喧嘩はコミュニケーションの一つとして楽しんでいる部分もある。
けれど、彼女には売りたくもないのに喧嘩を売ってしまう時があるようだ。
そんな時、あの目をする。
ジャブラの悪口を言った後、少しだけ目を泳がせてから捨てられた犬……いや、子狐の目をするのだ。

「本当にアイツだけはよく分からねェ」

吐き捨てるように呟いて。
それでも、嫌いになれないことは自分が一番分かっている。


02:悪態をついて、それから



「ほとほりが冷めたら、会いに行くか」

どうせ、彼女からは謝れないのだから。


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10/02/28

by追憶の苑

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