短編 | ナノ
意地っ張りな二人への5題:カク

「覚えとけよ、女狐!!」

「んふふ、負け犬の遠吠えね」

それはエニエス・ロビーでは見慣れた光景。野良犬と女狐の喧嘩だ。
戦闘となれば司法の塔を半壊させたぐらいにジャブラが勝つが(よくスパンダムが巻き込まれている)、口喧嘩では女狐に軍配が上がる。
言い負かされて走り去るジャブラを、冷ややかな微笑と共に腰に手を当て見送る彼女。

ジャブラの姿が視界から消えた瞬間、崩れ落ちるように地面に両膝をついた。


「死ね!渦潮に呑まれて死んでしまえ!!あたしのバカヤロォ!!」


拳を地面に叩きつけて絶叫する彼女に溜息をつきながらも、一部始終を見ていたカクは彼女の傍に寄る。
出来ることならば見ない振りをしたいが、そうやって無視をすると後が怖い。
認めたくはないが、一つ年上の彼女には故郷にいた頃から頭が上がらないのだ。

「いつものことじゃろ」

「いつものことだから嫌なんでしょ!?なんでよ!?人間って日々進歩する動物でしょ?なんであたしは毎日毎日、十年間もこんなこと繰り返してんの!?いい加減に学習しなさいよ、このバカ女がぁっ!!」

雄叫びを上げながら髪をかき乱す彼女に、よく自分のことが分かってるじゃないかと感心する。
彼女は好きで毎日ジャブラに喧嘩を売っている訳ではない。
本当は好きな相手の傍にいたいだけなのだが、気付けば喧嘩になっているらしい(本人談)。
そりゃ、偶然身体が接触しただけで指銃を繰り出されれば怒らない方がおかしい。
異常なまでの照れ方だ。
そして、何より口が悪い。
すぐに謝ろうとしても、何故か口から出るのは罵詈雑言らしい(本人談)。
一度、病院にかかった方がいいのではないかと本気で心配だ。

「薬があればいいのに……」

沈んだ表情でぽつりと呟く彼女に、カクは表情を緩めた。

「素直になれる薬か?」

女狐のくせに、可愛らしいことを言うものだ。


01:素直になる薬があればいいのに



「………違う。喉を焼く薬」
「は?」
「こんな喉、いっそ焼ききってしゃべれなくなった方がマシよーっ!!」
「ちょ、まっ、落ち着くんじゃあっ!!」



10/02/28


by追憶の苑

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -