怒りの三つ編み
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「ここか」
「授業中だから、ほどほどにしとけよって聞いてないな」
めいがいるであろう教室の前についた俺は中の様子を伺った。
彼女は知らない男と実験をしている。それだけでなく、何やら楽しそうに会話をしている。
あとでめいにお仕置きをしなくては。あいつが話していいのは俺だけだから。
「ムカつく」
「は」
「めいと話してる男ムカつく。めいもめいだ。ちょっとかっこいいからってあんなに楽しそうに」
「かっこいいって認めるんだな」
「まぁ、俺の方が一億倍かっこいいけど」
「つーか、あんた。絶対嬢ちゃんのこと好きだろ」
「なんで俺があんなボケボケめいを好きにならなくちゃいけないんだよ」
「はいはいすみませんでした」
そして俺は教室内に入った。周りにいるガラの悪い奴らは会話をやめ俺の方を見ている。しかし、めいたちは俺に気づいていないらしい。とりあえず近くまで行ったがまだ気付かない。なにやら、誰かの話題らしい。めいが最近知り合った怖い人だ。誰だそいつ。殺しちゃうゾ。
「最近…というか、昨日知り合った方なんです。怖い方ですよ〜」だから誰だ。俺が殺す。
「喧嘩強いとか、見た目とかか」お前は黙れ。
「全部です、全部。あ、でも背はだーやま君と同じくらいでしょうか。それでも威圧感はハンパないです」そんな奴ひと捻りだ。俺は強いから。
「…なんかあまり思い浮かびたくない人物が出てきたぞ……」さっさと教えてくれ。
「そういえば、今日名前を知ったのですが、思い出しました。私すらも噂をチラホラと耳にしたことがあるくらいですから、相当有名なんでしょうね」お前がわかってて俺がわからないってどういうことだよ。
「あんた何気にすげえよな。周囲のことあまり気づかなくせに。ところで、そいつってアホ毛はえてるあの人か?」えっ。
「そういえば、ぴょこぴょこしてますね」…。
「三つ編みの」……。
「そうそう」………。
「うわあ…あの人か……。つか、お前すげえな。あんなおっかない人と」もしかして。
「運命なのですよ。運命」俺か。
「嬉しいのか」はらはら。
「運命と嬉しいは全く違いますよう」………。
「まぁそうだな」死ね。
「でも、お話できる方が増えて嬉しいです」!!
「嬉しいんじゃないか」お前は消えろよ。
この糞男が実験を進めている最中、彼女は何か思いを巡らせていた。
しかし、俺と知り合えて嬉しいだなんて変な女だ。俺はお前と知り合えてく全然嬉しくない。
……いや、ちょっと嬉しい。
「うふふ…」
「何ニヤニヤしてんだよ。春菜これ持ってて」
「合点承知の助」
「めいって髪の毛ふわふわだね」
「あっ、それ第一印象だったわ。髪ふわふわ」
「別に大したことしてませんよ。だーやま君も神威さんもサラサラしてていいじゃないですか」
「でもボリュームがないだろう」
「そうそう。特に俺なんかアホ毛が嫌で」
「あまり気になりませんがねえ」
「ていうかさ、これいつまで続くの。さすがに突っ込んで欲しいな、俺」
「━━━━神威さん!!!??」
「ゲッ」
「君ら今気づいたの。わざとかと思ってたよ」
つーかこの男、ゲッって言っただろ。あとで殺してやる。
その時、チャイムが鳴った。どうやら授業の終わった合図らしい。このアイズを最後にこいつの息の根を止めようか。
「あっチャイムなっちゃったんで私行きますね!!」
めいはそう言って走っていってしまった。しかし、速かった。陸上部か。
俺はすぐ追いつくが。
「あいつ…片付けも手伝えよ」
男は苦笑いして彼女が出たあとのドアを眺めていた。
こんなやつなんてどうでもいい。はやくチーター並みの逃げ足を持つ女を追いかけなければ。
「ていうかさ、あんた誰」
「成績優秀な山田です」
「めいとはどんな関係なの」
「ただの友達。やましいこと一切なし。春菜はかわいいけど」
「ねぇあんた、もしかして好きなの」
「…だったらどうします」
「殺す」
俺はそう言ってあいつを追いかける。
俺だってそんなに鈍感じゃない。でも、認めたくない。
俺は何色にも染まらない。邪魔なものは潰すだけだ。
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