お誘い桜桃少年
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めいと学校に来て、彼女は教室へ行ったが俺はそのまま屋上へ上がった。
誰もいない、少し肌寒い風がふわふわとしているだけだ。
俺は手すりに座り、彼女の様子を伺った。
ちょうどここからよく見える。何やら最初の授業が移動教室らしいから、後を目で追った。
「団長、ここにいたのか」
「何だよ阿伏兎」
「そんなにあの嬢ちゃんが気に入ったのか」
「違うよ。あいつが俺につきまとってくるんだよ」
「自分から家調べさせて迎えに行ってるあんたが言えることか。軽いどころじゃない結構なストーカーだ」
「別にめいの家調べろって言ってないだろう。家が知りたいなって呟いたのを阿伏兎が勘違いしたんだろう」
「悪魔だ。こいつ悪魔だ」
「小悪魔系だよ」
「大魔王だったよ」
阿伏兎と話すことをやめ、俺はめいに視線を戻す。
しかし、彼女はそこにいなかった。
「嬢ちゃんは今理科室だろう」
「うわストーカーだ」
「誰のためにやっているのかわかってんのか」
「五月蝿いなあお前は。いいから理科室まで連れて行ってよ」
「はいはい。つーかあんた3年なのに場所覚えていないんですか」
ぶつぶつ文句しか出てこない阿伏兎。なんてつまらない男だ。
しかし、こいつをこんなふうにした本人はわざと自覚していないふりをする。何故なら、そのほうが面白い。
阿伏兎もこんな俺に慣れているだろう。
さて、彼女のもとへ行こうか。
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