鈍感黒セミロング星人の瞬足
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逃げ足だけは早いとは昔から言われています。
50m走が9秒99というギリギリひと桁の私ですが、誰かから逃げるとなると5秒くらいになると言われています。
「めいはやいよー」
「ひいいぃぃぃい!!!」
こやつ平然と追いかけてきおった!!自慢ではないですが、私、陸上大会に後ろからわんこがかけてきてそれに逃げていたらいつの間にか優勝していたことがあります。
あれですね、あれ。火事場のなんたらかんたらみたいなの。
私たちはこの広い入れ物の中をすたこら走っていました。
恋人と砂浜で追いし追われをすることは私の夢、My dream(発音良く)なんですが、こんな閻魔大王よりおっそろしい青年と追いし追われをすることは非常に恐怖です。No my dremです。今転べばどんな拷問が…。
「あっ」ズシャアアア
「フラグ回収乙」
「キャ・・・キャラじゃないですよ……それ」
見事に転びました。
さらば麗しきMy life(発音良く)。来世出会えれば会おう。
「やっと捕まえたー」
「ひえええお助けをー」
「お前には友達がいないんだろう。だから助けてくれるやつなんているはずがない」
「――――死んでやるウゥゥゥ!!」
「死なせないよ。俺が生きている限り」
「かっこよさそうなのに恐怖しか湧いてきません」
よっと神威さんは私を抱きかかえ、どこかへと歩きだしました。
そんな私は恥ずかしくて顔がまっかっかです。多分。
神威さんはスラリと長い脚を地につけ、さっそうと歩きます。
「あの、」
「ねーめい」
私が話しかけようとしたのに見事に遮られてしまいました。
ここは、彼の言うことを聞いたほうが良いのでしょう。
「何ですか」
「めいってさ、彼氏とかいるの」
この人、急になんなのでしょうか。
疑問を抱きながらも私は神威さんの腕の中で言葉を放ちます。
「そんな大層なものいませんよ。私にそんなのいたら今すぐビックバンが起こります」
「じゃあ、俺がビックバンが起こるくらいの大層なものになってやるよ」
「やめてください。私異性に免疫がないので騙されてても好きななってしまいます。嫌なんです、都合のいい女になりたくありません」
というか、これ神威さんが私の彼氏になりたいってことなのでしょうか。
よくわからない人です。
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