渦巻きセミロングちゃん
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「よぉ、無事だったかお二人さん」
「俺がいるのだからあたりまえだろう」
学校にやって来ました。もうお昼です。
神威さんのお陰で無事に戻ってこれました。感謝でいっぱいです。
しかし、私の頭のなかはとあることで埋め尽くされていました。
『決めた。キミを貰うよ』
『俺の怪我の責任をとるんだよ。キミは俺のそばにずっといるんだ』
からかっているのでしょうか……。
私にはこんな経験がないのです。
でも神威さんは怪我をしています。私が覚えていなかった約束を覚えていて、守ってくれました。
彼の怪我の理由は私です。
何故ここまでしてくれるのでしょうか。
……誰かに相談してみましょうか。
本人に聞くのは何だか気恥ずかしいです。
「めい」
「なんですか」
「一緒にお昼御飯を食べよう。キミに拒否権はないからね」
「……はい」
まんざらでもない私がいました。
「教室は雑魚共がうるさいからね、屋上へ行こう。阿伏兎はついてくるなよ」
「言われなくてもいきませんよっと」
そして屋上へ行き、空を眺めながら二人でもぐもぐとお昼御飯をつまみました。
私はお手製のお弁当、神威さんはパンを食べています。
「めい、さっき言ったことだけどね」
どきん、と胸が打ちました。
体がぽかぽかしてきます。
「嘘だから」
「へ」
「キミは本当に馬鹿だね。あんなの怪我のうちに入らないよ」
私は呆然としました。
同時に疑問と少し怒りが芽生えました。
「あんなこと冗談でいっちゃダメですよ……」
「なんだい。期待していたのかい」
「ちっ違いますよっ!私、本当に悩んでいたのに馬鹿みたいじゃないですか…」
「期待していたんじゃないか」
「していませんっ!!!神威さんの馬鹿!!!」
ひどいです。からかうだなんて。
私は神威さんに背を向けながらお弁当を食べ始めました。
そのあとも神威さんは私に声をかけてきましたが、そんなの無視無視!
空のお弁当箱を袋に入れ、屋上を後にしました。
神威さんはついてきませんでした。
「不機嫌だね、春菜」
「今日はとんでもない日です。朝の占いが当たりすぎてます」
「あれすごい当たるよなぁ。俺は6位だったから普通の日だ」
「普通が一番いいと思いますよ。それより聞いてくださいよ山田くん」
「どうしたんだい。例の三つ編みの先輩かい」
「そうです。神威さんはとても失礼な方なんです。いい人だと思っていたのに」
「春菜あの人のこといい人だって思ってたんだ…」
「見損ないました」
「……春菜、最近先輩の話ばかりするね」
「神威さんが私の頭にこびりついて離れないんです」
「え」
「おかけで大迷惑ですよ。気づいたらあの方のことを考えているんです」
「……忘れたい?」
「そうですね。簡単にできたらいいのですが」
「俺に任せて」
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