ありがとう。
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「めい!!!」
俺は春雨高校のアジト内を走り回った。
向かってくる敵をうまくかわしながら前へ進んだ。
俺がこんなやつらに負けるはずがないだろう。めいのことが絡んでいるのならなおさら。
自分の気持ちはもうほほとんどわかっていた。
なんであの女のことが気になるのか。気にしてしまうのか。
だが、まだ完全ではなかった。知らないふりをしている自分がいた。
俺にもまだ恐怖心が残っていたんだ。とうの昔に捨てたと思っていたのに。
そして、一番奥へたどり着いた。
きっとこの先にめいがいるはず。
俺は扉を蹴破った。
「神威さん!!!」
めいは手をロープで縛られていた。
部屋には男が5人いたが、無事みたいだ。
「めい……大丈夫かい。すぐに行くから」
「おい神威!!!お前の女を返してほしければ俺達を倒すんだな!!!」
「おじさんたち離してください!!!私神威さんと帰りたいです!!!」
「一応高校生なんだけど!!?」
めいが俺と帰りたいって言ってくれた。少し心が暖まった気がした。
「はやくめいを離してよ。キミたちを相手している暇はないんだ」
「だから俺達を倒さないとは離さねぇよ!!!」
そういって一人の男が俺を殴った。
それに続いて仲間たちも殴りかかってきた。
「神威さん……?」
俺はそのまま拳を浴び続けた。
「どうしたんですか?」
やり返したら、約束を破ってしまうからネ。
でも、さすがにこのままだとらちが明かないから殺気をまとわせた。
「ぐっ……今日はここまでにしてやらァ!!!」
「覚えとけよ神威!!!俺たちは唯一神威を殴ったんだからな!!!」
足音は遠ざかっていった。
体が少し痛い。血もでている。
殴られるってこんな感じなんだな。
「ロープはずしてあげるよ。じっとしてるんだよ」
「神威さん……なんでやり返さなかったんですか。神威さんならちょちょいのちょいでしょう……」
「約束をしたからね。もう誰も殴らないって」
「……そんなこと覚えていたんですか」
「ロープはずしたよ。行こう」
俺はめいへ手を差し出した。
めいの手は少し冷たかったけど、俺の鼓動がうなりをあげていた。
もう俺の全身は迷いがなく、繋がっていた。
「ごめんなさい迷惑をかけてしまって。怪我もさせてしまいました」
「……そうだね」
いいことを思い付いた。
「めい」
「なんでしょう」
「決めた。キミを貰うよ」
彼女は固まった。
俺は話し続けた。
「俺の怪我の責任をとるんだよ。キミは俺のそばにずっといるんだ」
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