あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  心とは裏腹に 12




結局、その日はふたりして講義を欠席した。
カガリの顔は見られたものではなかったし、
俺も結局カガリに釣られて涙を零してしまったから、
講義に出られる状態じゃなかった。

感情の渦に戸惑ってお互い身体を寄せ合って、
落ち着いてから互いの身体から手を離した。

「何か飲むか・・?」
「・・うん」

カガリの声は掠れていて思わずつぶやいた。
冷蔵庫を覗いていると、先日カガリが看病に来てくれた時に置いといてくれた飲料を見つけた。

「あったかいものがいい」
「・・・」

俺は手に持っていた飲料を戻して、
どうやらこれも先日持ってきたものらしくハチミツとレモン汁がそれぞれ置いてあって
ポットのお湯があることを確認した。

「レモネードでいいか?」
「うん」

湯気が立ったレモネードが入ったマグカップをカガリに手渡すと、
カガリはそれを両手で受け取った。
一口飲んで、カガリがほっとする。

「なぁ、アスラン?」

せっかくなので自分のレモネードを作っていると、
カガリから声を掛けられる。

「治療はどこで受けるんだ?」
「ん、あーー」

思わず言葉を濁した。

「本格的に治療を受けるなら、ユーレン医師がいるメンデルだな」
「メンデル・・。
メンデルかーー。
私行ったことないな」
「俺だって一回行ったきりだよ」

少しの間離れ離れになるだけだ。
不思議と怖さはなくて、もう一度会えるからと安心して欲しくて
安心したくて、カガリの手をぎゅっと握った。

「なら、ふたりとも知らない場所での生活だな。
なんか楽しみだな」
「え・・・・」

カガリが本当に嬉しそうに笑った。

「一緒に住もう?」

カガリのくれる言葉はいつだって、泣きたくなるほど嬉しくて
ただただ眩しい。
光のようだった。


・・*・・


「ほんとにいいのか・・?」

ふたり揃って退学届けを書いた。
お互い書類を封筒に入れたところで伸びをした。

「ん?」

恋人に声をかけるとかわいらしくこちらを見上げる。
カガリは実にサバサバとした様子でアスランの隣に座り、
アスランの手に自らの手を絡めた。
ほんのりと赤くなる頬を悟られまいと向こうを向く。

「確かに軍人にはなりたかったけど、」

ぎゅっとカガリの手が強く握られる。

「憧れだったんだ、
あのとき、辛かったときに手を差し伸べてくれたのは軍人さんだったから、
それに兄も軍人で、生きてるのか死んでるのかさえ分からないから何か手がかりが掴めるんじゃないかなって考えてた。
でもさ、こんなに音沙汰なくて学校とはいえ同じ軍に入っても何も連絡がないんだもん。
もう、諦めろってことなんだよな」

カガリが明るく微笑んだ。

「だからさ、もうひとつの夢をアスランと一緒に叶えるんだ。
約束果たしてくれるんだろう?」

顔をほんのりと染めてカガリが笑った。
目尻はまだ赤くて瞼も腫れたままだったに、
それが堪らなく綺麗で。
この人の笑顔を一生守りたいとそう願った。
その思いが反映されたのか自然にカガリの手を握る手に力を込めた。

「ああ、守るよ、
約束、必ず」


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