あなたを想うだけで傷だらけです | ナノ
パロディノベル



  心とは裏腹に 08




いつだっただろう。

泣きじゃくる私にアスランはひとつのおにぎりを持ってきてくれた。
それを二人で半分にして食べたけど全然おいしくなくて、
私は隣のアスランに「お母さんのごはんが食べたい・・」と言った。
アスランは一瞬困った顔をして、

「いつか、俺がごはんをつくってやるから。
それまで我慢してろ」

と微笑んだ。
不安そうなわたしに自信なさげに言葉を交わしてくれたアスランに私も釣られて微笑んだ。

あの頃のように泣いている私にアスランはおにぎりを持ってきてはくれないし、
たぶん泣いていても笑顔にしてはくれない。
ずっと・・そうだった。
私がいつも泣いて、けどアスランの言葉で私はいつでも笑顔になった。
私はアスランのことが大好きで、だからこそいなくなったと知ったとき悲しくて・・。
アスランはカガリは俺を嫌っていると言った。
憎んでいると・・。
本当に、そう?
学校で会ったときアスランは私のことを『アスハさん』と呼んだ。
私はそれが悲しくて、『ザラ君』と呼ぶことにした。

「なんだよ、一番最初に名前で呼んでくれなかったのはお前じゃないか。
アスランのバーカ」

もうベルはとっくに鳴った。
今頃優等生のアスランは授業を真面目に受けているのだろう。
いつもと変わらない態度で。

「・・・」

確かにその後、アスランに優しくされるたびに私は反感した。
けど、そのたびアスランは笑ってた。
どんな気持ちで笑ってたんだろう・・。
そう考えると胸がツキンと痛んだ。
『嫌い』と叫びもした。
つい最近のことだ。『迷惑』だとか、『ほおっておけ』とか・・。
だって、アスランが悪いんだ。
他人行儀だったから、忘れられてるって思ってた。
だから怖くて言えなかった。

「あっ!」

そっか。
一緒だったんだ。
私もアスランも同じ。
怖かったんだ。
臆病だったんだ。
カガリは空を眺めて呟いた。

「お互い、弱かったんだ・・」

そして、目をきゅっと瞑ってカガリは立ち上がった。

・・*・・

「あっ、カガリ。
心配したのよ?どうしたのザラ君も授業休んでるし
あの後、何かあったの?」
「フレイ・・」

暫くして屋上を後にしたカガリはフレイと会った。

「アスラン、授業に出てなかったのか?」
「うん。
風邪が長引いて保健室かなっていう話をしてたんだけど」
「・・ごめん、フレイ」
「?」
「終わってから話すな」
「・・・・分かった。なんかしらないけどカガリすっきりした顔してる。
いってらっしゃい」
「うん!」

カガリはフレイと別れてアスランの部屋に向かったどこか晴れ晴れとした様子で。
アスランの部屋の前に来たはいいが、部屋にはロックが掛かっていた。

「いないのかな・・」
「アスハ」
「ジュール先生?」
「どうした、確かここはザラの部屋だろ?
何か用事か?」
「あっ、はい」
「そうか、なら後でザラに保健室に来いと伝えといてくれないか?
軍医からの伝言だ、頼むな」
「はい」

イザークは手をひらひらとさせて去っていった。

・・*・・

「・・ん」

カガリはふと目を覚ました。

「私、寝てたのか・・」

カガリはあの後どうやら寝てしまったらしい。
慌てて時計を見ると2時間も時間が経過していた。

「うわっ!!こんなに、ってアスランは!?」
「・・・・やっぱり俺を待っていたのか?」
「へ?」

カガリは声をする方を見上げた。
するとそこには不機嫌そうに立っているアスランがいた。

「そんな扉の入り口で寝られたら邪魔なんだけど」
「あっ、ごめん!」

カガリは慌てて扉から立ち上がり離れた。
アスランは無言でキーを差し込み扉を開けて、部屋の中に入った。

「って、アスラン。私お前に話が」

閉じられる前の扉に腕を差し入れてとまるカガリは話しかける。

「俺はないと言わなかったか」
「アスラン!!」
「うるさい!」

カガリは辛辣なアスランの言いように口を噤んだが、
ここで負けては駄目だとカガリはしゃべり始めた。

「・・・・わかった。じゃあ今から言うことは私の独り言だから。
本当にごめん。
私お前にひどいことをした。
私もお前に忘れられてるんだって思った。
だから、忘れられていることが悔しくて、悲しくて。辛く当たった。
だけどアスランは私を知らない癖に変に優しくて、イライラして。
昔のアスランを今のアスランは違うって思い込もうとした。
謝りたいとか、お礼を言いたいと思っても、アスランは聞いてくれなくて。
・・・・・」
「・・・・・・で、言いたいことは終わった?アスハ」
「っ!」
「終わったなら、早く出て行ってくれないか。
俺は君と違って暇じゃないんだよ」
「・・・・んでっ!」

ドスン

カガリはアスランをベットに押し倒した。

「痛っ!何をす・・・!」

頭をベットの衝立にぶつけてアスランは体を起こそうとするが、
カガリが上に乗っているため体が動かせない。
アスランはカガリを見上げる。
そこには両目にボロボロと涙を流すカガリがいた。

「なんで、さっき。本音ぶつけてくれたのに!
なんでそうやって私を遠ざけようとするの!
私嬉しかったのに。
アスランが私のこと覚えててくれてて、
・・・・・・だって、好きだもん。
アスランのこと。
昔の優しかったアスランも、今の意地悪で、優しくて頭よくて、そんなアスランが大好きだから」
「・・・・・・・」
「・・・っふ・・え・・ん」

自分の上で泣きじゃくるカガリを見てアスランはため息を吐いた。

「とりあえず、どいてくれないか」
「・・・・・・」

カガリはアスランから降りて、ベットの上に座った。
アスランの変わらない態度にやっぱり無理なんだ。
もうアスランと昔みたいに笑い合うことは出来ないんだ。
あんな風に一緒におにぎりを食べあうこともない・・・。
カガリの目にはさらり涙が溢れる。

「だから、もう泣くな。
俺がカガリの涙に弱いことは知ってるだろう?」
「・・・え」

カガリが顔を上げるとそこにはふわりと微笑むアスランの顔。

「・・・・・んっ、」

そして、そのアスランの顔が近づいて、気が付いたら唇が触れ合っていた。

「アス・・ッ・・???」
「俺も意地を張ってた。
・・・・・・・俺もカガリのこと好きだよ、昔も今も」
「アスラン!!!」

カガリは嬉しくなってアスランに抱きついた。
アスランは飛びつくカガリの体を抱きとめた。
頭を撫でる大きい手はアスランのものでカガリは気持ちが温かくなるのを感じた。

「カガリ、看病してくれてありがとう」
「・・・・ううん」
「・・・・あのさ」
「ん?」

まるで猫のように体を擦り付けるカガリにアスランは顔を赤く染めた。
成長したと思っていたけどやっぱりカガリはカガリなんだなとアスランは思った。

「約束覚えてる?」
「約束?」
「・・・『世界が平和になったら、俺と・・』」
「『結婚してください』」
「・・・・・・////」
「覚えてる、忘れるわけないだろう?」
「うん」

アスランとカガリは見詰め合ってキスをした。
角度を変えて唇を何度も何度も重ね合わせた。

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