やっぱり、銃に変えるべきなんだろうか。
と、手元の鈍く光る刃を見ながら思う。
やだなあ、何だかあの男の言葉を真に受けているみたいで少し悔しい。
第一銃なんかじゃあ、公衆の面前で乱闘をするのにはちょっと法を踏み越えすぎている気がするし。
そんなモノじゃあ、あの怪力男を殺す立ち回りにいろいろ無理が生じる…なんて、
コレも全部言い訳なのでは、と、やはり若干あの言葉を真に受けてしまっている自分は考えるのだ。
分かってた。判ってた。解ってた。
わかっちゃいるんだけれど。
「他人から言われた言葉っていうのは、自分の言葉よりも自分を揺らすんだよねえ。」
刃を軽く翻らせて、一閃。
標的は自らの腕。
「こんなもんじゃあ死なない、か。」
否、正確には。普通の人間の腹にコレを突き立てれば死ぬのだ。
ただ、彼の腹には突き刺しても死なない。(むしろ刺さらない)
ぷつりと、皮膚が裂けて赤い線が腕に刻まれる。
うん、思ったより深いかも。
苦笑。
俺は何をしたいんだろう。俺はこれから何をするべきなんだろう。
彼の事は。まあ、死ねばいいと思っているのだ。が。
「特に自分で手を下すことに拘りがあるわけでもない。」
あの男曰くそれは逃げであるそうだ。
うーん、もういっそ開き直ってもいいか。
「ああ、俺は臆病者だよ。臆病者で、何が悪い。」
情けない自分の言葉を聞く。
そしてそれを他人に突き付けられて、また心を揺らされる自分を想像して。
俺はもう一つ苦笑を漏らすのだ。
腕の赤い線は、線と云う形を崩して雫になって、ぬるりと俺の腕を這っていった。
臆病者のプライド(これだから、人間は、面白い。)
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