さーって、教室戻るかー、っと……。
あーあ、Aクラス大変なことになってる……。
黒板には春歌ちゃんに対しての悪口が書いてあった。そしてクラスにいる人達は次々と春歌ちゃんの悪口を言いつづけた……。
割って入ったほうが、いいかな。私が教室に入ろうとしたときに誰かがそれを制した
「やめなさい」
「……林檎」
「ああいうのは自分でなんとかしなきゃいけないの。貴女も分かっているでしょ?」
「分かってるよ」
そうだ。これから先、誰かが助けてくれるなんて、そんなことないんだから。ここで助けたら春歌ちゃんのためにはならない。
Aクラスに入ることはやめ、私はSクラスに入った。
「響大丈夫だったか?」
「へ?ああ、別になんもなかったぜ?」
「ならいいんだけど、」
私が教室に入るといちはやく翔が話し掛けてくれた。
「おまえら、席つけー」
私が教室に入ったのと同じタイミングで龍也が入ってきた。
「えー、授業を始める前に、そこにいる響だが、アイドルコースから作曲家コースに変わったから、一学期終わりのペア決めの際は気をつけてくれ。
それでは授業を始める」
龍也がそんなふうに言うせいでまわりの視線を集めてしまった。
「響、アイドルコース辞めたのか?」
ご飯を食べているときに翔に言われた。さっきからずっとそわそわしていたのはこれを聞きたかったからか……。
「うん、なんかさ、俺には作曲家コースの方が向いているんだって。」
「いいのか?響也と共演すんの夢だったんだろ?」
「そうだけど、もしかしたら楽曲提供って形でなんとかなるかもしれないし、」
「あの人、自分の曲しか歌わないってこないだテレビで言っていた」
「知ってる。たとえ響也に曲を提供できなくても、曲作ることは好きだし!
俺はこれで満足してるから」
「なら、いいけどよ。」
翔はまだ納得していないのか。不満そうに私を見つめた。
翔に嘘ついていることに私は罪悪感を抱いた。
午後の授業も終わり寮に帰ろうとするとサックスの音が聞こえてきた。
音のする方へ向かうと、女の子に囲まれている中心で神宮寺くんが吹いていた
サックス、すごく上手だ。
演奏が終わると周りにいる女の子達が我先にと神宮寺くんに話しかけた
「キャー素敵ー」
「ねーレン、今度私とデートしようー」
「美しいレディが俺をときめかせてくれるならね?」
「キャー」
これがなければいい音楽を響かせれるすごい人なのに。
「……春歌ちゃんと、聖川くん?」
寮に戻るために歩いているとピアノの音が聞こえた。音の聞こえてくる部屋を見ると聖川くんがピアノを弾いており、それを春歌ちゃんが聞いていた。
聖川くんがAクラスだと、神宮寺くんが馬鹿にしていたが、ただの財閥の長男じゃないってことがわかった。素敵な演奏だ。
演奏が終わると同時に私は部屋に入った
「素敵な曲だね。」
私は聖川くんに話しかけた
「ありがとうございます。」
「春歌ちゃんの演奏も聞きたいなー、俺」
「……えっと」
春歌ちゃんは手を抑えている
「……んー、じゃあ、二人で連弾でもいいよー。なんか、楽しいって雰囲気が伝わるそんな演奏を聞きたいなー。
ピアノ弾くの楽しいでしょ?」
私が問い掛けると春歌ちゃんは頷いた。聖川くんは大丈夫かと春歌ちゃんに問い掛けた。大丈夫です。そう笑った彼女を見てこのあとの演奏が素晴らしいものになるということは予想できた。
「二人とも、素敵な演奏をありがとう。」
「弾けた……、」
「よかったな」
「……ありがとうございました!」
春歌ちゃんは聖川くんに頭を下げた。
「俺は何も」
聖川くんが、春歌ちゃんをなんとかしたということくらい私にも分かる。
「素敵な演奏のお礼に俺も一曲弾いて行くかなー」
「響くんの演奏を聞いてもいいの?」
「いや、そんな大層なもんじゃねぇよ。」
俺はピアノに手をかけた。
QUARTET NIGHTへの曲をかいているときに、彼らには合わないけど、いいものができたと気に入っている曲。
あー、ここで弾いちゃったから天音としては使えなくなるなー。残念。今度の課題の提出にしよう。
「す、すごいです」
「この曲はなんという曲なんだ?」
「あはは、ありがとう。うーん、曲のタイトルとかは決めてなくて……」
「自分で作曲された曲なんですか?」
「え、ああ、そうだけど?」
「すごいです……!!」
「確か、アイドルコースではなかったか?」
「あー、今日づけで俺、作曲家コースになっちゃいましたー」
「そうなんですか?」
「うん!だから春歌ちゃんと一緒だねーって、もうこんな時間!!今日は邪魔してごめんね、またね!」
今日は収録があったんだった!こんなところでゆっくりしている場合じゃなかったー!!
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