▼ 2日目
『やった!!え?!トリップ成功!?』
1人池袋の夜に舞い上がる少女――――――名無し。
夜と言っても、12時などとっくに過ぎており日が昇ろうとしていた。
いうなれば、明け方だ。
帝人と別れ、池袋の路地裏を一人歩く。
『そういや、携帯ってあるのかな?』
と、やけに大きい独り言を言いつつポケットに手を入れ確認する。
『あ、あった!しかも、イヤホン着いたままだし!ラッキーっ』
音楽が聴けるものと、ネット世界と繋がれるものがあれば大抵は生きていける名無しは、ブラブラと街を練り歩く。
「ちょっといい?こんな時間に女の子一人で何しているのかなぁ」
すると突然、池袋の夜に澄み渡る声が名無しの背後からした。
(ちょ、待て待て。この声知ってるぞ)
内心わくわくしているのを表面に出さないよう、名無しはゆっくりと後ろに振り返った。
そこには、案の定想像していた顔があった。
『(うわぉ、やっぱりね...)...折原臨也』
「ん?なーんで、俺の名前知っているのかなぁ?」
思わず、口に出てしまった相手の名前。
『(えっと、こういう時はあれだ。言い訳というもの使おう)...勘、ですかね?あはは...』
「へぇ〜。俺、そこまで顔は知れてないと思うんだけどなぁ。もしかして...そっちの人?」
『い、いえ、そういう者ではなくてですね...というより、何か私にようですか?』
「いーや、違うけど...俺、君のこと気にいっちゃった」
そう言い、新しい玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべる臨也。
『(あの笑顔殴りたいわー)気にいるのは勝手ですが、私は帰ります。ではこれで』
名無しが去ろうとした瞬間、臨也に腕を掴まれた。
しかも、かなり爪を立てて。
(いっ!!!)
「勝手に帰ってもらわれると困るなぁ。というより、君何者?明らか、こっち側の人じゃなさそうだけどさぁ...」
『どこの人間でもいいですけど、帰りますかっら!』
痛む腕をバッと振り払い、ダッシュでその場を去る名無し。
角を曲がろうとした瞬間...
―シャキンッ
折り畳み式のナイフが飛んできた。
そして、名無しの腕に刺さった。
(っ、こわっ!!、てかあぶな!!!)
名無しに隙ができた途端、臨也が彼女の腕を再び握った。
血が出ている上、握られているとなるとかなり痛い。
痛さに名無しは顔を歪めるが臨也はお構いなしと言わんばかりに、握ってくる。
「だからさぁ、勝手に逃げないでよ。君が何者か知りたいだけだし...」
『っ、わかりま、した。話すので、何処か人気の無い場所に行きたいで、す』
「ん、了解」
そう言い、名無しが連れて来られたのは臨也の高級マンション。
『すご...これが臨也のマンション、か』
あまりにも大きなマンションに息を飲む名無し。
痛む腕を押さえながら、臨也のオフィスに入れてもらった。
『あ、お邪魔します』
「どーぞ。あ、腕、平K『いいえ、全く』」
『たく、誰のせいで...』
「君が逃げなければ、こんなことにならなかったんだよ。はい、軽傷だから包帯だけだけど、痛むようなら教えてね」
『あ、ありがとう...ございます』
「いえいえ。それで、君はいったい何者なんだい?」
『あぁ、えっと...驚かないでくださいね?』
「池袋は異邦人がたくさんいるからねぇ、今更驚かないよ」
『そうですか...あ、私の名前は無名名無しって言います。異次元、つまりこの次元とは違う空間から来ました。』
♂♀
数分後
「なるほどね、つまり名無しちゃんはトリップしてきたというわけだ」
『はい。...ん、今、臨也に名前で呼ばれた!!』
「・・・・。」
『あ、すいません、話し続けてください』
「ということは、名無しちゃん泊まるところないじゃん」
『はい、ないですね!』
にこやかに答える名無し。
「なんでそんなに、にこやかなのさ」
『あはは、静雄さん家に泊まろうと思いましてー』
屈託のない笑みで答える。
そんな名無しに対し、臨也は心底嫌そうな顔をしてこう言った。
「そんな単細胞バカの家より、俺の所に泊まりなよ」
『え、いいんですか!?』
ガタッと立ち上がる名無し。
「うん、いいよ」
『では、遠慮なく泊まらさせて頂きます!』
こうして臨也家に泊まることになった名無し。
その夜、といってももう朝に近いが、臨也のマンションの風呂場を借り、暫く仮眠をとることにした。
2日目 End.
.
前の日 / 次の日