2週間の池袋 | ナノ


▼ 1日目


少女は時々考える。
たまには違った日常を味わってみたい...と。

無名名無し、16歳。
今日もいつもと同じ日々をつまらないとばかりに退屈している。
学校から帰ってもする事はなく、ゴロゴロとマンガを読んだりネットを使ってチャットをするばかり。

『ほーんと、世の中って暇だな』

そんなことをベランダで呟く名無し。
ため息をつき、ふと空を見上げた。
そこには無数の星たちが街のイルミネーションに負けんばかりと輝きを放っていた。

『デュラのような非日常が溢れてる楽しい毎日を過ごしてみたいなぁ』

空に文句でも言うかのように呟く名無し。

―キラッ

ボーっとしていると、一瞬星が流れたように見えた。

『え...、気のせい??』

もう一度空を見上げると、沢山の星が流れている。

『流れ星かぁ〜、何年ぶりだろ? あ、お願いしてみよっかな...叶わないだろうけど』

そう思いつつもダメもとで、なんとなくお願いしてみた。

“このつまらない毎日が変わりますように”と。

『本当に、叶ってデュラの世界に行ったら...』

なんて、1人勝手に妄想をし始める名無し。

―バキッ

『え!?は??何っ!?』

―バキバキッ

妄想していた名無しが寄りかかっていたベランダが突然崩れだした。


『えっ!?っちょ、嘘っ?! まっ、キャ―――っ!!!』

部屋の3階から落ちてくる名無し。

(あ、私......死ぬ)

少女の視界が目まぐるしく変わる中、彼女はそう思い強く目を瞑った。


♂♀

――――――――――
     ―――――――――――――

暫く経っても、体に衝撃が来ないことに名無しは気づいた。

『...え?』

恐る恐る目を開けると、そこには見覚えのある少年の姿があった。

『え、ゆ、夢?...てか、帝人君!?』

「そ、そ、そ、空から人っ!?って、何で僕の名前知ってるんですか!?そんなことより、大丈夫ですか!!?」

突然の出来事に、パニックになる2人。

『う、うん...助けてくれてありがとう(とは言ったものの、何故帝人君が...?)』

驚きを隠せないまま苦笑しつつ帝人にお礼を言う名無し。

「い、いえ...大丈夫でしたか?」

『あ、うん。全然平気!帝人君のおかげだよ!』

「それならよかったです(苦笑)」

落ち着いて対応している帝人も混乱している様子だ。

『あ、そうそう一つ聞きたいんだけど、ここってどこだかわかるかな...?』

「ここは、池袋ですよ」

『うへぇ!?本当に??』

「そうですけど...どうして僕のこt『マジでえぇええぇええ!?!?』」

帝人の言葉を遮るほど嬉しかったのか名無しが声を上げて喜んだ。

『え、え、ホントだよね!?夢じゃないよね!?』

「正真正銘、池袋ですよ。というより、僕のこt『わ!嬉しい!!夢がかなった!!』」

というより、既に帝人の言葉は名無しの耳には届いていない。

『あ!私の名前は“無名名無し”っていうの!いつか会うかもしれないから覚えといてね!んじゃ!!』

自分の名前を名乗り、帝人の言葉は聞かずして笑顔でその場を去っていく名無し。

「“無名名無し”さん...不思議な人だな」
1人取り残された帝人は、こう想い、池袋の街へと足を再び運んだ。


1日目End.

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