非日常を求めて | ナノ


▼ オフ会/3


PRRRRRRRRRRRRR

突然部屋の電話が鳴った。

臨也が話している内容から残り時間を教えるためにフロントから来た電話だろう。
てことは、残り10分。

「いやー、ははは、さっき言ったさ、“死んだ後はどうする”っていうのはぶっちゃけ、お金の話なんだけどさ」

「...........え」

言っている意味の解らない2人。
そんな2人の様子を見てか臨也が続ける。

「俺って、無駄が嫌いなんだよね。だからさ、保険とかは最近チェックが厳しくなったから無理だけど――お金とかをさ、できるだけいろんなとこから借りたりしてさ、そのお金を僕に渡して死んで貰えない?君達の死は無駄になっても、君達のお金は無駄にならないよ。あと、君達の書籍とか体とかも残さず売り尽くせば、その、かなりの額になるしさ、んで、俺はそういう事ができるルートも知ってるし」

どんだけ金が欲しいんだよコイツは。
金なら情報料として貰ってるだろ。

そんなことを考えながら2人の女を見つめる。
すると、1人の女の手が反対の女の服を軽く引っ張っているのが見えた。

ガチでこれやってたんだ....
っと、今はそれどころじゃないよね。
さて、そろそろこのシーンの名場面がくるよ!

女が口を開こうとしたときまたもや臨也が大声を出して遮る。

「さて問題です。第一問。俺はどうして一番入口に近いところに座っているんでしょう?」

まるでドアの前に塞がるような形で座っている臨也に、女たちは恐怖に満ちた顔を見せ始める

「第二問、このテーブルの下にある、三つの車輪付きスーツケースはなんでしょうか」

それがあることを知っていたのにまるで気が付かなかった私はなんて馬鹿だ

『え....マジであったんだ.....』

おっと、思ったことが声に出てしまった。

「え?何?知ってたの?」

こっちに目線を変える臨也。

どうせ後から知られると思い、『別に』と返した。

「ふ〜ん。まぁいいや。さっきの問題のヒントね。ヒント1。このスーツケースの中身は空です」

彼女たちの顔色がだんだんと悪くなる。

「ヒント2。このスーツケースのサイズは君達に合わせてます。さらに、言うと一つは必要性がなくなったってこと」

さらに顔色を悪くする彼女達。
目の焦点が合ってない。そろそろ回ってきたのかな?

「誰か来て!」
「誰か助け―――」

―ガクッ

床に膝をつける彼女達。
どうやら効いてきたらしい。

「なに....これ....」

「第三問」

3つの指を立て、ニッコリと笑う臨也。

「君達が3人がかりで俺に向かってくれば助かるかもしれないのに、何でそれができないんでしょうか。ヒント、ワンドリンクを運んできた時、俺が君達にコップをまわしました。あ、3人じゃない2人かも。あの子、やる気なさそうだし」

また私に話を振ってくる臨也。
やめてくれ、ダルいから。

彼女たちは焦点が合わない目で臨也を見つめる。

「愛だよ。君達の死には愛が感じられないんだ。駄目だよ。死を愛さなきゃ。そして君達は無への敬意が足りない。そんなんじゃ、一緒に死んではやれないなぁ」

女の一人が最後の力を振り絞って臨也を睨みつけた。

「絶対許さない....殺して...やるっ」

そんな女の頬を臨也は優しく撫で呟くように言った。

「いいね。大変結構。恨む気力があるなら生きられる。すごいな俺、君の命の恩人じゃん。感謝してくれ」

そう言って手を放した。
女たちは床に倒れたまま。

「あー、でも恨まれるのは嫌だな。やっぱ殺しておいたほうがいいかもね」

そう言って私に向き直る。

『何ですか? 帰っていいんですか?名倉さん?えっと、甘楽さん?それとも折原臨也さん?』

私の心の中は絶賛ドヤ顔なう。
そんな私とは裏腹に臨也は驚いてる。

「さっきから気になってたんだけど、君って何者?なーんで、俺がスーツケース隠し持ってたこと知ってるの?それから、俺の名前も」

質問多っ!

『まず、私は人間です。スーツケースを持っていたことはなんとなくそんな気がしたからです?名前もかな?』

「なんで、最後の2つは疑問形なわけ?」

『さぁ?知りませんよ』

と言って私は飲み物を飲んだ。
って、飲んじゃったよ!

『あ.....飲んじゃったよ....衝動的に飲んじゃった。なんで睡眠薬入ってるの知ってて飲んだんだろう?私ってバカ?いや、バカだけど...』

「ねぇ、君って本当に何者?というより、睡眠薬入ってるのわかったんだ。へぇ、すごいね」

『だから、人間ですってば。あなたが大好きな人間。ってなんでこれを言ったんだろ?』

「なんでそのことまで知ってるの?てか、他問自答しながら自問自答しないでよ」

『知ってるから知ってんです。とゆうか、薬回る前に帰らないと....って、家あるのかな?いや、ないでしょう』

「だから、自問自答しないで。ふ〜ん、家ないんだ。とりあえず、俺の家ではなそう?」

『嫌です。新宿まで行くなんて面倒な...やべ、これは言っちゃいけなかったかも』

「俺が新宿住んでることも知ってるんだぁ〜。とりあえず、此処を出よ。話はそれからだ」

と言って店を出ることにした。

う〜クラクラする。
くらくらり くらくらる あなたを想っているそれだけで....ってなんでサー●レーション出てきたし。

「ありがとうございました〜」

お会計を済ませ、店を出た。さっきの人たちは黒バイクが公園に運んだらしい。セルティ可哀そう。

「んで、君は何者なの?あ、人間っていう意味で聞いてるわけじゃないから。って大丈夫?」

臨也の言ってることが全く聞こえない。というより耳に入ってこない。
駄目だ、眠い....。

『ごめんなさい、言ってることよく聞こえないです...』

―バサッ

その瞬間私は睡魔に負けてしまい、臨也によっかかっていた。

「っと..ん〜、ちょっとジッとしててね?」

―ひょい

急に体が軽くなった。
顔を上げれば漆黒に包まれていてその状況理解するのには数秒かかった。
背中に手が回っていてひざ裏にも手が回っている。いわゆる、お姫様抱っこの体制。

『い、臨也...さん...?』

そこまで言って私は意識をはなした。

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