非日常を求めて | ナノ


▼ オフ会/2


♂♀臨也side♂♀

俺の目の前には3人の女 っていうより、一人は女の子って感じだけど。

今の状況は、俺が趣味で立ち上げた自殺オフの掲示板に自殺志願者として同意した3人の女(女の子)と今後の死について語っているところ。

俺が質問すれば2人の女は食らいつくように話に乗ってくる。が残りの女の子は黙りこくったまま。

――面白いことが起きそうだ

俺は頭の中でそう思った。


「ふ〜ん...それで3人とも死んだ後はどうするのかな」

俺がそう聞くと2人の女たちは我先にと話しているが女の子はボーっとしている。
というか、今なんて言った?
天国?

自殺するくせに天国ときた!なんて図々しさだろう。これだから人間は面白い。

とりあえず、黙ってる子も含めて3人に天国について尋ねることにした。

「3人はどう?信じてない?」

そう聞くと1人の女の子を除いてあれこれ意見を言う女たち。

俺が予想したとおりに2人は返答をする。

「狂壊さんは?」

返事は来ないだろうが一応聞くことにした。

『私は別にどうでもいいです』

「「「え?」」」

予想外の答えに俺も思わず声を出してしまった。

『別に今から死ぬんだからあの世なんてどうだっていいことじゃないですか。死後の世界を信じることができるのは今、一生懸命生きている人に与えられた権利だと思いますが。だから、2人のように死後の世界に甘えないで死ぬんだったら何も考えないで死んでいけばいいと』

つらつらと長い言葉を並べる女の子。
まるで言ってることは俺みたいだ。


そうして彼、折原臨也は顔を歪めた。


♂♀忍音side♂♀

自分の意見を言ったら、名倉さんが椅子からズズズっと落ちた。っていうより滑った?

「あー、大外れ」

やっぱり言うんだ。
心の隅でどこかそう思う。

「名倉さん...今なんて?」
「名倉さん...どうしたんですか?」
『・・・・。』

黙っているが本心はどうにでもなれと思ってる。

「駄目だよ、これから自殺しようとしている人たちがあの世なんてきにしちゃ。狂壊さんのようにね」

ねっといった瞬間寒気が襲った。
ただ単に気持ち悪いという意味の寒気。

「さっきも、狂壊さんが言ってたけど死後の世界を信じる事ができるのはね、生きている人に与えられた権利なんだよ。それか、死を考えて考えて考え抜いた上で出した結論なら、俺は文句言わないよ。でも、貴方たち、っというより2人は違うよね。自分で死を選んでおきながら死後の世界に甘えるなんて許されないことだよ」

そういいながらブラックベルさんとジュリエットさんを指さす。
私は関係ないらしい いや、関係あるのかな?。

「あ、あの.....お二人は....死ぬつもりあるんですか?」

ようやく、私たちが死ぬ理由を語ってないことに気が付いたのか、彼女たちは聞いてくる。

『ないです』
「ないけど」

くそう、臨也とハモりやがった。


私たちは顔色一つ変えずに答えた。

―沈黙―

この個室にはテレビから流れ出る音やほかの部屋から漏れる音以外何も聞こえなかった。
その内、女の一人が堰を切ったように喚きだした。

「酷い!私達の事を騙してたの!?」

「ちょっと....アンタ達それは洒落にならないよ」

私たちのことをキイッと睨みつける女たち。

あらら、自分の欲のために叫んでるよ。
私は傍観者としてその場を見ていた。

「あーやっぱりこうなるかー」

「やっぱりって...」

「ここで冷静でいられる人間は最初から“同行者”なんて求めてないだろうしね。いるとしたら冷やかしか、もしくは......俺と同じ種類の人間。あ、あとこの子みたいなのも」

笑えない顔で笑っている臨也。

「最っ低!! 何様なのアンタたち!酷過ぎっ!」

『えっ?どうしてですか?』

思ったことが口に出てしまい、臨也の言葉を遮った。

『どうして?何が酷いんですか?』

「何がって.....」

『貴方たちはもう死ぬんでしょう?だったら何を言われても気にすることなんてないじゃないですか。騙されるのが苦痛なら今すぐ消えてしまえばいいじゃないですか。』

高校生が言えるような言葉じゃない。
そんなことわかってる。
でもこれは、自分に向けられた言葉でもあったような気がする。

『それなのに酷いなんて酷いですよ』

臨也のセリフをパクってやった。

「そんな事は解ってるわよ!でも....」

「解ってない」

彼女の言葉を臨也が遮った。

「解ってないよ、全然解ってない。君はあの世には“無”しかないと言った。そこがね、違うんだよ。もう苦しまなくて済む、そういう意図で言ったのかもしれないけれど――――死ぬっていうのは――――無くなるってことさ。消えるのは苦しみじゃない、存在だ」

臨也の笑顔に気圧(ケオ)され何も反論できない彼女たち。
生で聞いた臨也の理屈には私の心にも少しは響いたのかな?

「でも君の“無”にはその無を知覚している。自分という存在がいる。全然そんなの無じゃないよ。つまり、君達はあの世を何一つ想像できていない」

臨也は語るっていうより喋ることを止めない。
そんな臨也に、一人の女が反論し始めた。

「でも.....だって....それは貴方がそう思ってるだけでしょう!?」

振り絞って出てきた言葉だと思うがそんなも臨也の笑顔が淡々と食らい尽くしていく。

―怖い

私は本当の怖さに陥ったのかもしれない。
私に向けられた言葉じゃないのにな。

「その通り。正確にはわからない。俺が勝手にあの世をないと思っているだけさ。まあ、あったらラッキーと思うだけさ。そんな程度のもんだよ」

ハハ、と無機質な笑いをこぼす臨也。
その明るい調子で話し続ける。

「でもさ、君らは違うじゃん。あの世も中途半端にしか信じていない。それとも君の信じる宗派は自殺を肯定した上に“就職や恋愛に失敗したら死ねば良い”とでも教えるのかな? それならば俺は何も言わないし立派だとさえ思うが――――そうでないのなら、まあその、黙れ」

時間にしては数秒だったが言われてる立場にしてみれば長く感じられた。
だって傍観者でいた私でさえそう思えるから。

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