非日常を求めて | ナノ


▼ オフ会/1

メールに書かれたカラオケBOXに軽い足取りで向かう。

カラオケBOXに着くと2人の女性が立っていた。
マンガで見たあの2人。
確か、ブラックベルさんとジュリエットさんだった気がする。
2人とも私より大人だ。

『あ...の、ブラックベルさんとジュリエットさん...ですか?』

確認のため話かけてみた。

「?もしかして、名倉さん?それとも狂壊さん?」

黒髪の女性が聞いてくる。

『あぁ、狂壊です』

「そう、私はジュリエット」

自己紹介をしてくる茶髪の女性。

そんなことはどうでもよかった。
てか、このサイト作った張本人はどこだし。

そんなことを考えていると澄み渡った声が聞こえた。

「やぁ、君たちが自殺志願者の人たちかい?」

「「はい」」

2人が口をそろえて言う。

『そうですけど』

遅れて私が言う。

「そうですか、えっと...僕が名倉です」

自己紹介をする青年。

嘘つきめ

と心中で突っ込んでやった。

案内されたある一室。

中に入ると臨y...名倉さんはドアの端、そうあの席に座った。

名倉さんの隣は嫌だな、だって臨也だもん。
そんなことを考えていた。

―沈黙―

誰も話そうとはしない。

暫くして飲み物が運ばれてきた。

「とりあえず、死ぬ前にしたいことってあるかな?」
名倉さんが聞いてくる。

2人は首を横に振った。

「狂壊さんは?」

私に質問を投げかけてくる名倉さん。

『別にないです』

死に来たわけじゃないもんね。

「じゃカンパイでもしとこうか」

名倉さんがグラスを持ち上げる。
私たちも持ち上げる。

「僕達4人の初めての出逢いとこの世界との永遠の別離(ワカレ)に―――カンパイ」

聞いたことのあるセリフを言いグラスを打ち付けあう。

―チンッ

2人はすぐ口をつけたが私は一口も飲まなかった。

「飲まないの?狂壊さん」

名倉さんが聞いてくる。

『いらないです。喉乾いてませんし』

だって...ね?

「ふ〜ん」

っと呆気なく返された。

「ジュリエットさんもブラックベルさんも狂壊さんも本当に僕なんかでよかったのかな?心中するならもっと相手いるんじゃない?」

また聞き覚えのある言葉を言う名倉さん。

「いないから死ぬんです」

ブラックベルさんが返答する。
一方のジュリエットさんは飲み物を飲みながら頷いている。

「そりゃ正論だ。だから、あの掲示板を使いこのオフ会がある」

私は何度も見たり聞いたりしている言葉をただ単に流しながら聞いている。
名倉さんが何か言うとすかさず2人が答える。
ほら、また口を開いた。

「ダメなんですよね、こうしている間にも彼があの女と会ってると思うと...別れて3か月もたつのに 死んじゃえば全部忘れられるかなぁって」

俯きながらぼやくようにしゃべるブラックベルさん。

「私には何もないです。美大を出たって働くとこなんて一つも無い。毎回毎回 面接の度にお前は存在価値がないって言われてるようで...」

天井を煽るように呟くジュリエットさん。

「で、死に方なんですけど 練炭とか流行りましたよね」

私が言う前に死に方について話題を持ってくるブラックベルさん。まぁ、言う事はないけど。

「私はみんなで飛んじゃえばいいのかなぁって」

ジュリエットさんもすかさず話に入ってくる。

「狂壊さんは?」

ボーっと考え事をしていたら名倉さんに話しかけられた。

『ん〜、そうゆうようなこと考えてないな』

思うことを口にしてみた。


「ふ〜ん...それで3人とも死んだ後はどうするのかな」

また呆気なく返された。
死んだ後?あぁ、天国がどうこうって話か。

「えっそれって、天国ってこと?」

「名倉さんは、あの世とかって信じてるんですか?」

『・・・・・。』

「3人はどう?信じてない?」

なんかもう、飽きてきた気がする。
人間の欲で埋め尽くされた話なんて。
まぁ、流しとけばいいかな。

2人は真剣に話しているらしいけど多分、私と名倉さんは遊び半分だと思う。
てゆか、絶対そう。

「わっ...私は信じてます! あの世っていうか幽霊になって、彷徨うみたいな」

相変わらず我先にと返答を返すブラックベルさん。
自分一筋って感じだな。

「私は信じてません。死んだら何も無くてただの闇で―――でも、今よりはずっとマシ」

ブラックベルさんの後に続いて話す、ジュリエットさん。
人に流されやすそうなタイプだな。

「狂壊さんは?」

さっきから無口な私に同じ言葉で私のことを呼ぶ名倉さん。

『私は別にどうでもいいです』

「「「え?」」」

3人同時に声を上げた。

『別に今から死ぬんだからあの世なんてどうだっていいことじゃないですか。死後の世界を信じることができるのは今、一生懸命生きている人に与えられた権利だと思いますが。だから、2人のように死後の世界に甘えないで死ぬんだったら何も考えないで死んでいけばいいと』

そこまで言って、名倉さんの顔を見た。
名倉さんは、新しい玩具を見つけたような顔をして私のことを見つめている。

相変わらず、表情豊かなこと。

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