非日常を求めて | ナノ


▼ 虐め



「あんたさぁ、張間美香が居なくなったのに、デカい顔しているみたいじゃない」

「クラス委員になったんだってぇ?」

おっとっと、見逃すとこだったよ
ここのシーン。
あれだな、リアルにみると
マジでベッタベタな虐めだよな、これ。

「あ、虐め...。しかも、もの凄くベタな」

『ベッタベタだよね、ある意味すごい』

「ここまでコテコテだと、流石に怖くないかも...」

壁から、3人で覗き見。

リアルの方の学校でも
ここまでこってりしてなかったぞ?
と、他人事のように内心で思う。

というより、俺のエロティカル杏里に近寄んな!!
って、もの凄く言いたい。

虐められている少女、“園原杏里”を見つつ奥歯を噛む。


「ヒロシ!」

ふと呼ばれた名前に、3人して不意に顔を上げる。

あぁ、安元●貴さんが声やっているよね!
●執事のア●ニ!!
おっとっと、ここはアニメが違う違う。

不良の声に怖さも見せず、若干興奮気味な私。

その間も、虐めは続いている。
というより、ヒロシがなんか
アホなことを言っている。

『ぷっwww』

ヒロシのオーバーアクションに思わず吹きそうになる。

「おい、何笑ってんだよばーか」

吹きそうになった私に、正臣が軽くチョップを交わしてきた。

『あはは、ゴメンwwだって、面白かったからついね、ついww』

そんな私に正臣は「はぁ」とため息をつき、虐めに目を戻す。
笑いをこらえながらも、自分も目を戻した。
だが、未だにヒロシはアホなことを続ける。

「かぁー、ここまでベタだと清々しいね」

『逆にねww』

帝人くん助けるのかな?

気になり、視線を帝人くんに向ける。

ふふ、迷ってる迷ってる。

悩んだ顔をする帝人くんは
いつも以上に、きゃわ...可愛かった。
ん...待て待て、来るとそろそろ彼奴くるだろ。

ふと、アニメの3話を思い出し、一時頭の中で回想。

「虐め?」

私が回想し
帝人君が杏里を助けようとし
正臣が様子見をする中
澄み渡るような声が聞こえた。

―!?

振り向くと、案の定臨也が私たちの後ろに立っていた。
そして、私に軽く微笑むと帝人君に視線を移し、こう言った。

「止めさせに行くつもりなんだ?」

そう言った臨也を、帝人君は不思議そうな目で見つめる。
そう言った臨也を、正臣は警戒した目で睨む。
そう言った臨也を、私はうざったそうに見つめる。

すると臨也はニィッと笑い、立ち上がった帝人君の肩を組んだ。

「あ、あの?...え、ええ、!?」

テンパる帝人くん。

来たら、もう流れを待つしかないかなぁ...。

一人呆れ、正臣を見る。

やっぱり、警戒しているな...そりゃそうか。
過去の事、許せないもんn...
やめろ、彼奴の事は考えたくない。
忘れろ。

不意に脳裏に浮かんだ大大大嫌いな彼奴と正臣。
許したくても許せない、二人の関係とあの子の性格。
性格はともかく、二人の関係を未だ許せない自分が、私は嫌いだ。

懸命に忘れようとしていたら、目の前に人の気配を感じた。
そこにいたのは正臣で、心配そうに私を見つめている。

『まさ...おみ?』

「あぁ、いや。お前が俯いていたから心配になった。大丈夫か?」

『あ、え、っと...大丈夫。心配ありがとう。特に何もないから!』

そう言って、偽った。

あーあ、正臣だけには心配させたくなかったのに...。
というより、嘘は付きたくなかったけど
どっちにしろ嘘は付かなきゃ此処ではやってけそうにないから
あまり変わりはないかな。

「そうか、まぁなんかあったら、遠慮なく俺にどっどーんと言ってくれ!忍音のそんな顔は見たくねぇからよ」

―っ///

おもいっきし笑う正臣。

『ありがとう、流石は私の王子様だね!』

照れつつも、そう言ってやると
正臣はパァーっという効果音が付くかと思うほど笑う。
そして、またいつものようにマシンガントークを始めた。

『あ、ねぇねぇ、そういえば虐めはどうなったのかな?』

「おっと、すっかり忘れてたぜ」

言い出したのは私だが、実を言うと私もすっかり忘れてた。

どうやら、あの“妖怪鎌鼬参上”の名台詞は
既に終わっていて、不良とギャルたちももう逃げ終わっていたところだった。

あーあ、臨也の携帯潰し見たかったorz

そんな状況を見ながら私は思った。

♂♀

「いやぁー、本当に偉いよねぇ。虐められている子を助けようとするなんて」

現在、私たちは臨也に付き合い裏通りから出た道にいる。

帝人君と杏里は不思議そうに臨也を見つめているが
それとは正反対に、正臣は心底嫌そうな顔をして臨也を見つめ
私は何事も知らぬように無表情でその場を傍観していた。

杏里は臨也の言葉に反応したように虐めを助けようとしていた帝人くんを見た。
そんな杏里に、帝人くんは照れる。

可愛いなぁ、二人とも。

傍観者の私はつくづくそう思う。

臨也は顔の向きを変え、私たちの方を見る。

「久しぶりだねぇ、紀田正臣くん」

話を振られた正臣を見ると硬そうな表情をし、臨也を見ていた。
そして、隣にいた帝人君のも何やら反応した。

やっぱり気になるのかな。
ま、人間そんなもんか。

臨也と正臣が会話を交わす中
私は帝人くんの表情を暫く観察していた。

正臣が、臨也の名前を口にしたとき
帝人くんも正臣と同様に表情が硬くなった。

んー、面白いね、帝人君の表情。
内心もろ丸出しって感じで、ほんとに純粋だな。

あくまで、無表情のまま内心で笑う。
そんな傍観者の私に、臨也は話を振ってきた。

「やぁ、忍音。朝ぶり」

『朝ぶり。まさか臨也に会うとは思わなかったなぁ。仕事?』

嘘。
臨也に会う事なんてもともとわかっていたけどそう言ってみた。

「んまぁ、人探しだよ。といより、俺に会うことはもともと知っていたんだろう?」

あららー、やっぱり臨也には嘘がつけない。
ダメもとの嘘だが、やはり見抜かれてしまった。

「で、そっちの方こそここで何しているの?」

『あぁ、私は正臣たちと放課後デートなうだよ。邪魔すんな』

私が普通にかかわってはいけない人間と話しているからだろうか?
凄く、みんなが不思議そうに見てくる。

「あはは、邪魔なんてしないさ。多分だけど」

『邪魔したら、ぜってぇ殺す』

女の子が使うような言葉ではないが、これは癖なので仕方がない。

ふと、臨也が帝人くんの方を向いた。
そんな臨也に、正臣は帝人君を庇うように、紹介する。


「ふ〜ん。俺は折原臨也。よろしく」

そういい、臨也は庇う正臣を無視して自己紹介。

そんな臨也に流されてか
帝人くんも自己紹介をした。
そして、臨也は帝人君の名前を
“エアコンみたいな名前だねぇ”といった。

帝人くん可哀そう。
エアコンなんかと違うし、あれは霧●峰だし。

臨也の発言に内心、そう思った。

「それでー...人探しって...」

そんな状況を正臣は遮るようにして質問した。

「あぁ、それならもう会えた」

臨也は肩をくすめ、帝人を見つめる。

「え!?」

勿論、見つめられた帝人は吃驚仰天とだけに驚く。


―ヒューゥ

ん??

―ガスッ

「うおっ!!!?」

突然、鈍い音と臨也の呻き声と共に、臨也が吹っ飛んだ。

へ??

全員が全員その場が理解できない。

あるのは、向こうから飛んできたゴミ箱。


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