非日常を求めて | ナノ


▼ 池袋最強



ゴミ箱。
ゴミ...箱...

ゴミ??


―あ!!!

そんな中、傍観者の私の細胞が急に騒ぎだし、ぼーっとしていた私を呼び起こす。

キタ!!!
俺の愛しき人!!!

そう、身体の全細胞が騒ぎ出す。

正臣に逢った時よりも遥かに興奮していた。
出会えるシーンが有名とあるだけに。

飛んできたゴミ箱に帝人くんは挙動不審になり、杏里は怯え、正臣は冷や汗をかいている。

「いぃぃい、ぃやっべぇー」

正臣の声が震えている。
ということは、確かに、あの人だ!

吹き飛ばされた、臨也が起き上がった。

『あれ、死んでなかった』

おうふ、思ったことが口から出たよ、おい。

「死んでないって、まぁ...かすったけど」

当たった肩を押さえつつ立ち上がる臨也。
そんな会話を交わす中、突然聞こえたこの声。


「いーーーーーざーーーーーーーやーーーーーーーくぅーーーーーん」

その場にいた者が、声のした方を向く。

―キタ!!!!

私の全細胞が騒ぎに騒ぐ。

そして現れた彼は、私たちの前でかけていたサングラスを外しつつ、こう続ける。

「池袋には二度と来るなって言わなかったっけか、いーざーやーくんよぉ」

きゃあああああぁああぁあぁぁぁぁぁっ!!!
かっこいい!!
イケメン!!!!
臨也なんか殺せ!!!
ふぉおおぉおおぉおおおお静雄おおぉぉぉぉおおぉお!!

やば、泣きそう。
めっちゃかっこいいんすけどー!!
なにこれ、怖い。

一人騒ぐ。
あくまで、内心でね。

「っちょ、忍音?」

急に、正臣に声をかけられる。

『はいはーい、なんでしょう?』

幸せオーラ満載で、答える。

「お前なぁ、さっきから言ってることダダ漏れだぞ?」

うっそん!?
そんなことない筈!!

「いや、だから、それも聞こえてるって」

私は、口あんぐり。
まさかまさか、聞こえてたなんてorz
オワタ、いろんな意味でオワタ。


\(^O^)/



まぁ、シズちゃんに聞かれていないことをただただ願おう。

そして、2人の喧嘩に目を移した。



「君が働いているのは、西口じゃなかったっけぇ?」

冷や汗をかきながらも、臨也は挑発する。

「とっくにくびさ。それに、その呼び方やめろって言ってんだろ...」

シズちゃんは、ただただ、静かに言う。
臨也が居るだけでも、キレる寸前なのに、それを更に臨也が挑発する。

「俺には...平和島静雄って名前があるってよぉ」

「っえ!?」

帝人君が驚いたように言う。

あぁ、まだ知らんかったっけ?
かっこいいよね、シズちゃん。

大丈夫。
今度は内心で言ったから。

一人会話をし、またまた傍観する。


「居た!!あいつだ!!」


突如、別の声が響いた。

この安●さんの声は...そうそう、ヒロシだ。

先ほど、逃げて行ったヒロシは仲間を連れ
臨也に復讐するため戻ってきたのだ。

その人数の多さと持っている武器の危険さに
杏里と帝人くんは後ずさり
正臣は戦闘態勢に入りかかり
私も、念のためポケット内のナイフをいつでも出せるよう、構えた。


「てめぇ、よくも恥かかせてくれたな」

「ダラーズをなめるとどうなるか...あ?てか、バーテン服?」

「嘘!?」

「いや!さっきは居なかった」

「へ、平和島静雄!?」


男たちが次々と喚きだす。
そんな男たちに、シズちゃんは振り向く。


「あ゛ぁ?んだ、てめぇーら?」

シズちゃんの怒りに触れ、男たちは気圧される。


「うおおおおぉぉおおああおああぁぁあああ!!!」


男たちの一人が恐怖を目の前にし
冷静な判断を失ったのか、木刀でシズちゃんの頭を殴った。

シズちゃんがこけ、頭を押さえる。


っ、いったそう...


その場の空気が一瞬にして凍りついたかと思った。

頭を押さえるシズちゃんに対し、男たちから若干笑い声が聞こえる。


うおぅ、あの血持って帰りたい


シズちゃんの額から滴る血を眺め、私はずれた感想を心に留めた。
そして、シズちゃんは静かに口を開いた。


「...お前今、頭狙ったな...?打ち所が悪けりゃ死んじまうってわかってるよなぁ?」


静かに、怒りを込めて言う。


「わかっててやったんなら、殺す気だったってことだよなぁ?」


淡々と、淡々と。


「じゃあ...何をされても、文句はねぇよなぁ?」


あ、キレた。

そう思った瞬間、男の顔面に、シズちゃんの拳が入った。
そして、男が宙に舞った。

その勢いは、男をパンツ一緒にするほどのもので
目の前で見た私は、息を飲んだ。


すごい!これが、平和島静雄の力!


投げ飛ばされた男は、きっと良くて骨折だなと私は思った。


ご愁傷様。


シズちゃんは荒い息を上げ、男たちを次から次へと殴り倒した。


「じゃっ、お疲れー!!」


そう言い、臨也は何処かへ去って行った。
それを逃さなかったシズちゃんは
近くにあった自販機を持ち上げた。
周りにいた者、全員が息を飲む。
ただし、私以外。


『きゃっぁああああああ!!!それ、俺に投げてほしいいぃいいぃ!!!』


やばい、真面目にあれに当たりたい!!


「は?忍音、お前死ぬぞ!」


正臣に止められるが、無理。
私の興奮は止まらない。

いいタイミングで、行こうとしたら正臣に腕を引かれた。
この方は、俺の王子か。


「行くな、死なれたら俺困る」


あれ?このセリフ、前臨也から言われたような...

―ドンッ

ん?
地面に着地する音だよ、これ。

ふと見ると、すし屋のサイモンが
シズちゃんの投げた自販機を受け止めていた。


サイモンやばばばばば


たしか、サイモンはお得意さんのとこにいたんだよね。
運いいわ。


「サイモンてめぇ...」

「シズオーケンカヨクナイネー」


片言の日本語ではあるが、シズちゃん宥めるサイモン。


二人がマジ喧嘩したらこえーだろうなー...


そんな私とは、正反対に杏里は凄く怯えている。


「おぉい、帝人、忍音、今のうちに...」

今度は迷うことなく、帝人くんは杏里の手を引き走り出した。
杏里の手を...ん?
杏里の手しか引いてないじゃん!
否、私と正臣を置いて帝人くんは走った。
杏里の手を((ry


「えっ!嘘!?帝人―!」

『ちょ、帝人くーん!!』


カンペキ置いてけぼり食らった。

そして、手に違和感があると思ったら、私は走っていた。
正臣に手を引かれ。


っは、こんなのもアリかもね


♂♀

時は夜。
道路沿いに、池袋の都市伝説と池袋の最強が語り合っていた。

まぁ、都市伝説の方は聞いていただけだが。

「....臨也の奴が池袋にきててさ、今度こそ息の根を止めてやろうと思ったら、サイモンに邪魔された...」

そんな最強に対し、都市伝説は肩をくすめる。
まるで、笑っているかのように。

「しかし彼奴...何しに来やがったんだ...?それと、あそこにいた来良の嬢ちゃんも...なんで俺の名前を...?」

[来良の、嬢ちゃん?]

「あぁ、なんかすっげぇ俺の名前呼んで叫んでたぜ?」

[まぁ、静雄は有名だからな]

最強は静かに煙草をくわえ、息を吐く。

♂♀

男は歩く。
淡々と。

怪しく、携帯の液晶画面を見つめながら。
そして、笑う。

「帰ったら、忍音にいろいろ教え込まないと」

そう言って、街に姿を消した。

♂♀

この街は、異邦人で溢れている。

何かを捜し、何かを求め、この街へやってくる。

何かを変えようと。

.

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