非日常を求めて | ナノ


▼ 放課後デート兼ナンパ



――――池袋西口公園

「今こそ俺〜!?今から俺〜!?いーまーっ、俺!モテ期到来ー!!みたいなーーーっ!!」

うおぉぉぉおっ!!
正臣のナンパ台詞いただきましたっ!

正臣がナンパする中、私と帝人君は少し離れたところで
ナンパする様子を見守っている。
帝人君は呆然と立ちすくんで見ているだけ。
一方私はというと、内心興奮しながら見ています。

でも、なんというか飽きてきた。
見てるのってつまんないし
ナンパされた女の人たちは正臣スルーしているし。

いーなー、いーな、私も正臣にナンパされたい。
いや、前されたけれども!

『帝人君、あれ何時になったら終わる?』

「えぇっと、...当分終わらないかな?」

『...ですよねー(苦笑)』

まぁ、そろそろOLさん方が立ち去るシーンなんだと思うんだけど
やけに長く感じる。

―長いorz

『「はぁ...」』

二人して、ため息をつく。

『あ、終わったみたい。またフラれてる』

「そりゃ、高校生に誘われたってね...」

そして、二人して呆れた顔をしてまたため息をついた。

正臣ー、ナンパするならこの私にしてくれよー。

とほほ、といった感じでフラれた正臣を見つめる。
隣にいる帝人君に目をやると、目の前にある梟のオブジェを見つめていた。

『帝人くn...』

あぁ、今は自分の世界にいるっぽいな。
街が変わろうと、そこにいるのは昔の儘の自分
...とか考えているんだよね。

そう思うと、自分にも言えてくるようなことではないのかと思う。

現実が嫌だから、別世界を望んだ。
場所を変えたら、人だって変わると思っている。

自分のそんな思いに目を向けると
帝人君と自分が重なるような気がした。
でも、私はまだここにきてから
大きな変化など見受けられていない。
まだ時間はある。
変われる時間などいくらでもある。

そう思い直し、バチンと自分の頬を叩いて気合を入れ直した。
そして、正臣に目を戻すと再びナンパをしていた。

『今度は女の子かぁ〜』

呆れてきた。
というより、飽きた。

「え!?あぁ、正臣どうした?」

私のため息交じりのぼやきに、ボーっとしていた帝人君が驚いたように反応した。

きゃわ...じゃなくて、可愛い。
癖で、言いそうになりかけたわ(笑)

『正臣、次は女の子ナンパしてるよ』

「はぁ...またか」

暫く正臣のナンパ台詞に、耳を傾けていると、
“ダラーズ”
という単語が耳に入った。

帝人君、この時どんな顔してるのかな?

興味本位で顔を覗いてみた。

帝人君も私と同様。
その単語に耳を奪われている。

やっぱ反応しますよね、そりゃ。
心中で、ふむふむと頷き再び正臣たちの会話に耳を向けた。
そして聞こえたこの単語。

“切り裂き魔”“切り裂き事件”

あれ...?
この時期って...辻斬りの件についてやってたっけ?

アニメの3話の話など毎日見ていても
詳細まではあまり載っていないから覚えていない。
それに、ここ最近はいろいろと忙しかったから
多少記憶も飛んでいるのだろう。

不思議と考えながらも、帝人君と二人で正臣を見守っていた。

♂♀

――サンシャイン60階通り

「あーあー、まったくーお前らが暗い顔してっから逃げられちゃったじゃねーか」

『いや、フラれるのはもう既に正臣のシナリオに書いてあったから。』

「なぬ!?あんなに優しかった忍音が冷たいだとっ!?」

『いや、元の性格こんなんだからs...「紀田くーん!忍音ぷー!」』

『「「??」」』

突然名前を呼ばれて前を見る。
と、そこには見慣れた顔があった。

「こんちわーっす」

『門田さん!狩沢さん!遊馬崎さん!』

ワゴン組の3人だ!
あれ?
渡草さん...いないんだ(笑)

3人は私たちに近づいてきて挨拶をしてきた。

「えぇーっとぉ...名前がマンガみたいな......帝人君っすね!」

遊馬崎さんが両手を大きく広げて目を細めて笑っていった。

遊馬崎さん、かわいい!!

『えっと...3人はどこ行くんですか?』

そういえば、何しているのかと不意に疑問になったので聞いてみた。
よくよく考えたら、聞かなくても知ってるし
もしアニメを見てなくても彼らの行く場所は大抵は決まっているだろう。

行くならやっぱり、アニメイトorとらのあな...かな?

「とらのあなだよ、一緒に行く?」

やっぱり、当たったw
確か、今日は....
スージー・ヤスダ先生の―――

「今日は、スージー・ヤスダ先生のサイン会っすよーっ!」

あ、そうそうサイン会だよ(笑)

「そういう話を大声でするな!!」

ドタチn...じゃなくて、門田さんがすかさず突っ込む。
というより、怒る?

『んー、私はいいや!帝人君と正臣いるし!また今度、メイト行こうよ!!』

と、断っている間遊馬崎さんと門田さんが言い合いをしていた。

断って正解かな?
今日は、アニメ上進むとシズちゃんに会えるしね!うん!


♂♀


―――ヒューマックス パビリオン外

あの後、帝人君が門田さんに聞きたいことがあると言ったので
3人とは別れずに近くにあったヒューマックス パビリオンのベンチに座っている。

「ダラーズ??」

遊馬崎さんが、首を傾げる。

ピピルピルピル天使とかそんな内容しか記憶無いなこの辺(笑)
ほら、あれね、狩沢さん曰く
“パンツを見せながら空を飛ぶ、ピピルピルピル天使”

あと、遊馬崎さん曰く――――

「サンシャイン60の地下に封印されたフレムヘイズと日夜戦いを繰り広げているんすよねぇ?」

あぁそうそう、それそれ。
よく、んな長いセリフ言えるか不思議だわ。

一人、心中で納得する。
そんな中、遊馬崎さんと狩沢さんはなんか
ダラーズについて変な仮説を立てあっている。

「どうしてダラーズの事なんか聞くんだ?」

俯いている帝人君に、門田さんが問う。

「あっ、どうしてって言われても...」

この時の帝人君、まだいろんな迷いが見れて
凄く純粋だな。

どう見ても、今も帝人は純粋という言葉を
具現化したようにしか見えない。

これが、あんな風になるなんてね...
ま、純粋だからこそああなるのかも、だけど。


♂♀


忍音たちが話している間も、街は動く。

そして何より、街は危険で溢れている。
此処も。
其処も。
何処も彼処も。

何かを信じ、何かを求め。
街は、動く。


♂♀


――池袋 埼京線 線路付近

結局、門田さん達と別れ暫く
正臣のナンパに付き合い、ここに着いた。
相変わらず、帝人君は落ち込んだ様子のままで元気がない。

んー...どうしたものか...。

正臣も、正臣でどうしたものかと思っているに違いない。

「ん...?」

ふと、正臣が帝人君から目をはずし
一つのカラーギャングに目を向けた。
連れて、私も目を向ける。

―っ、黄色い...布...

なるほど、黄巾賊か。

先ほどと同様に、興味本位で正臣の顔を除く。
帝人君とは、ちょっと違うが
やはり難しい顔をしていた。

ん〜...やっぱり“過去”かなぁ...。

頭の片隅でそう思う。
なるべく、あの子の事は頭に浮かべたくない。
嫌な気分になるから...。

そう思い、自嘲気味に笑って歩き始めた二人の後を追った。

帝人君が考えるなか、この男が口を開く。

「お前の気持ちは解る!」

「『え?』」

そして、私たちの方を向き両手を広げてこう言った。

「電車に乗れば、痴漢扱い!街を歩けば、怪しげな勧誘!家に帰れば、ご近所トラブル!」

大げさなアクションをしてマシンガントークをする正臣。

なにこれ、可愛いww
というより、これってあれですよね、

―東京コンクリートジャングル!!

「それが、東京コンクリートジャングル!!」

心の中で、正臣のセリフを叫ぶと当時に、正臣はビシッと帝人君の目の前で指をさす。

「だが!!乗り越えろ!立派な池袋人になると誓ったなら、この試練を乗り越えてみせるのだ!帝人っ!竜ヶ峰帝人!」

そう言い、また指を指し直す。
そして、ニヒっと笑った。

―っ////
って、私が照れてどうすんじゃ!

内心で自分に突っ込んでいると
今度は私に正臣が突っかかってきた。

「おぉっと、俺に惚れるのはまだ早いぜ?」

そしてさっきみたいに笑った。
かっこいい。

「んまっ、俺がついてっから2人とも心配すんなって」

キザなセリフを吐く正臣に、またしても惚れそうだ。

『正臣...』

「紀田君...」

先を歩き始めた正臣を苦笑しつつ見つめる、帝人君と私。
後を追ったら、また口を開いた。

「それから、ナンパんときは明るく笑顔。笑顔だ」

「でも、社会人をナンパするのはさすがに無理があると思うけど...」

んま、確かにそれは思う。
でも、正臣は違うんだよな、これが。

「何言ってんの?話しかけるのが目的だからいいんだよ」

やっぱり言うと思った。

心中でため息をつく。

流石正臣だな。
うん。


♂♀


ふと、帝人君が止まったのがわかった。

『帝人君、どうしたの?』

「ん?どうかしたか?」

帝人君が見ている方に目をやった。

そこで見たものは...。


.

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