非日常を求めて | ナノ


▼ チャットルームと現実と




―新宿某マンション―

『あれ?なんで新宿に戻ってきたんだっけ?』

「忍音ちゃん、こっちの世界に家ないでしょ? だから、俺の家に住めば?」

『いや、そうですけど...なんで、そんな流れになるんです?』

「ん〜、強いて言えば君を俺だけのものにしたいから。」

『独占欲ヤバ...本当はコマの一部にしたいとかなんとかじゃないんですか?』

「いや、そんなことないよ〜」

と言いながらも口に弧を描く。

『...まぁ、一番に私を救ってくれたのは臨也さん。たくさん我儘聞いてもらったし、もしそれでいいならここに住まわせてもらいます。というより、住まわしてください』

今、家がない私にとってみればおいしい話だし
一日中とはいかないが神●さんボイスが聞けるという
なんたる特典があるので正直に言えばここに住みたい。
もし、来良に通うことになっても一駅だから問題はないし。

「忍音ちゃんがそう願うなら、いいよ」

『ありがとうございます!』

「今日は、まだ部屋用意してないから俺と寝ることになるけどいい?」

『あら、独占欲の強い臨也さんが優しいことを言ってる。びっくり』

「俺はいつでも優しいから」

嘘つけ

『ですよね〜w』

「とりあえず、パジャマはないから俺の服になるけど...」

まじかよ...ある意味嫌で嫌でたまらないです。

と言いたかったがこれ以上我儘を言うわけにもいかないので仕方なしに承知。


「はい」

渡されたのは臨也がよく着てるVネックのシャツ。
部屋を出て一回着てみるとワンピースを着てるみたいになった。

『洋服、貸していただきありがとうございます...ワンピース着た気分...』

「そんなかしこまらなくてもいいよ。タメ語でいいし、俺のことは呼び捨てで構わないよ」

『わかった。んじゃ、呼びタメで。私は、別にちゃんつけてもつけなくてもいいから』

「うわー人格が見事に変わったね」

『これが俺の素の人格さ☆』

「一人称何とかしてくれない?何処かの変態闇医者を思い出すから」

『あぁ、新羅ね...。これで、私が僕を使えば新羅みたいになるね!』

「ああ、そうだね。...さてと、俺はちょっとパソコンやってから寝るから、先に寝てていいよ」

『チャットでもするの?』

「そうだけど」

『わー!甘楽ちゃんみたい!甘楽ちゃん大好きだから生の甘楽ちゃんみたい!』

言い切ってしまったが、かなり甘楽ちゃん連呼してしまった(笑)

「俺のことは嫌いなのにチャットのキャラは好きなんだ」

『甘楽ちゃんは可愛いから許すの臨也、ちょっとだけチャット風景見せて!』

「わかったから、そんなに燥がないで」

『わー!本物の甘楽ちゃんktkr!!』

おぉっと、ネット用語出てしまったが...まぁ気にしないでおこう。
生甘楽ちゃんに比べれば大したことなさそうだし!

♂♀

チャットルーム

―甘楽さんが入室されました―

≪こんばんはーっ☆甘楽ちゃん参上ーっ!≫

【こんばんは、甘楽さん】

[ばんわー]

≪あ、今ログ見ましたけど、東京に来たんですか? おめでとうございますー! 今度オフ会でもしますか?≫

【あ、いえいえお構いなく。 あー、でもオフ会はやりたいですねえ】

♂♀

『え?田中太郎さんが東京に?』

「ん?どうかした?」

『い、いや別に...』

臨也のパソコンの画面を覗いていたら
チャットの会話とその人物名が頭に引っ掛かった。
臨也には不審がられてしまったけど
取り敢えず“別に”と流し、バックの中の小説を漁った。

小説を取り出し、ある程度の所までパラパラ捲る。

『あっ!やっぱりこうなるんだ...』

「忍音?急にどうしたの?」

『あ、いや。別になんでもないよ...』

予想が当たり、思わず大きな声を出してしまった。
そのせいでまた臨也に変な目で見られた。
いや、変なんだけれども。


♂♀

チャットルーム

≪そうですよねえ≫
≪あ、そうそう、オフ会と言えば、自殺オフってあるじゃないですか≫

[あー]
[去年流行りましたねえ。ネットで知り合って心中]

【嫌な話ですよね】
【でも、最近はあまりニュースになってませんよね】

[未遂で終わってるのか、あるいはもう珍しくなってニュースにならないのかもね]

≪いえ、あるいは沢山あるんだけど誰も気付いて無いだけかもしれませんよ!≫

【え?】

≪もしかしたら、まだ死体が見つかってないとか≫

【うわぁ】

[不謹慎ですよ]

≪そういや、最近失踪事件も多いし≫

【?そんなニュースが?】

≪えーと、大抵不法滞在してる外国人とか、地方から家出して来た子とか。池袋から渋谷の間あたりで多いみたいだよー。もしかしたら、『ダラーズ』の連中が取って食ってるんじゃないかって噂もあるぐらいですよフフウ?≫

【あ、やっぱりダラーズって有名なんですね】

≪ダラーズは凄いんですよ!こないだチャイニーズマフィアと話をつけたらしいし、こないだヤクザが刺された事件も、そのダラーズの下っ端の仕業なんだって!≫

[甘楽さんってどこからそういう情報仕入れてくるの?]

≪知り合いに詳しい人がいるから、それでですよう≫

【うう、詳しく聞きたいけど、明日は早いから今日はこの辺で】

≪あ、お疲れさまでっすー!≫

[田中太郎さん、おやすー]
[あ、私もちょっと用事があるんで、今晩はこれでー]

【すみません・・・・あー、ドタチンって人の事も今度教えて下さいね】
【ではではー】

≪あー、じゃあ今日はこれで解散ですねー。他に誰も来ないですしー≫
≪おやすみなさーい☆≫

――田中太郎さんが退室されました――
――セットンさんが退室されました――
――甘楽さんが退室されました――

♂♀


「っと...よし、終わったよ。寝ようか?....え、忍音...?うわぁ、寝ちゃってるよ。チャット見たいつったのはどこの誰だ。あんだけ、甘楽ちゃん甘楽ちゃん騒いでた人が...」

いつの間にか寝ていた少女。
何時寝てしまったのかは誰もわからない。
そう、情報屋の彼でも。


「おやすみ。忍音。明日からもっと楽しい日になるね」

そう言って彼は歪んだ笑みを浮かべ少女の頭を撫でながら、自らも眠りに堕ちた。

.



Prev / Next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -