押して駄目なら押し倒せ | ナノ


次の日のこと、執務室で仕事をしていた柱間と扉間は書類を出しに来たマダラの機嫌の良さに動きを止めた。此処最近はアリスの監禁云々についての話になるため最初から最後まで不機嫌であることが常なのだが今日は違うらしい。それはもうスキップでもしそうな浮かれ具合である。

「相変わらずシケた面をしているな柱間。扉間はいつもより顔の影が濃いぞ」
「黙れただの寝不足だ。仕事をしない兄者のせいでな」
「やけに機嫌が良いじゃないか、マダラ。今度は何だ?」
「どうせアリス絡みだろう。それ以外考えられん」
「ふふん、何があったと思う」
「そのテンション鬱陶しいな・・・」

この男の機嫌がよくなる時は大抵、というより絶対にアリスと何かあった時だ。物を貰ったというのは監禁されている故ありえない。結婚を承諾されたなら本人を連れてくるはずだからそれもない。となると手放しでここまで浮かれる原因はただ一つ。

「また抱いたのか」
「そうなのか!マダラ!」
「ふっ、童貞のくせに中々勘が鋭いな。いや、童貞ゆえに鋭いのか?」
「一言どころか発言そのものが余計だ。獣は森に帰れ」
「嫉妬とは情けない。あぁ、お前は相手さえいない童貞独身だったな。ならば仕方のないことか」
「・・・帰り道は後ろに気をつけろ。水難の相が出ているぞ」
「まぁ二人とも落ち着け」

睨み合うマダラと扉間の間に入って両者を宥める柱間。
改めて椅子や机に腰掛けて三人は一応話す体制になった。

「──で、お前の機嫌が良いのは合意の上で出来たからか?」
「いや?いつも通りだ」
「だったら何故そんなに機嫌が良いんだ」
「フッ、今回は一晩中ヤれたからな。全身に俺の精を浴びたアリスを思い出すとどうにも気分が高揚してしまう」
「一晩中!?マダラお前やり過ぎぞ」
「アリスの体は大丈夫なのか?」
「全身が痛いと言っていたな。だが仕方ないだろう。俺のを咥えて泣き叫ぶあいつを見たら止まらなくなった。男の性というものだ」

しれっと言うマダラに二人が頭を抱えて項垂れる。止めなくてはと思うが声を掛けようと腕を引こうと止まる気配がない。元々行き過ぎたところはあったがアリスを失いかけた一件から更にそれが激しくなってもう手に負えないところまで来た気がする。

「お前はともかく、よくアリスが一晩ももったな」
「気をやるたびに口に入れて喉の奥を突いてやったからな。苦しそうにえずいて直ぐに起きてくれる。お蔭で今までやりたかったことが全て出来た」
「おい、いい加減にしろ。アリスの意思や負担も考えてやるべきだろう」
「俺とて待つだけ待った。時には羽目を外してもいいだろう」
「外し過ぎだ。本当に相手のことを思っているのであれば強姦紛いのことはしない」
「そんなことは俺達の勝手だ」
「お前は良いかもしれないがアリスは嫌がっている。今すぐあいつを開放してやれ」
「・・・やけに突っ掛ってくるな、扉間。どういうつもりだ」

マダラの雰囲気がスッと冷えて扉間は息をのんだ。
この俺からアリスを奪う気かと顔に書いてある。どうやら厄介な誤解をさせてしまったらしい。

「別に他意はな「黙れ。だいたい貴様は昔から俺の癇に障ることばかりしてくれる。イズナの次はアリスか?」」
「マダラ、言い過ぎぞ。扉間はあいつに思いを寄せているわけでもなければお前から奪うつもりもない。純粋に里の仲間としてアリスを心配しているんだ」
「そんなこと分からないだろう。俺が今までどれだけ害虫を潰してきたと思っている。中には扉間のように心の内が読み辛い奴もいた」
「だから違うと言っているだろう!」
「ふん、どうだかな」

冷めた目で扉間を一瞥したマダラは踵を返して部屋を出ていった。
この前は自分のことなど歯牙にもかけない様子だったのにと項垂れる扉間の肩を、柱間は労わるようにポンポンと叩く。

「兄者・・・」
「心配するな扉間・・・墓は作ってやるぞ!」
先に兄者の墓を作ってやろうか
「じょ、冗談ぞ!」

ドスの利いた声で言われた柱間が慌てて謝って話は一段落した。
そしてしばらくの沈黙が続く中、互いが考えることは同じだ。

そろそろアリスの救出に行かなくては。

「ま、いくらマダラを応援していると言ってもアリスを蔑ろにするわけにもいかないからな」
「あいつの行為は既に犯罪だ。少し灸を据えてやらねばならん」

それから計画を立て始めて、意外にも扉間が仕事の後回しを承諾したために作戦会議は夕方まで続いた。

──────────

その日の夜、布団に入ったマダラは未だ疲れてぐったりとしているアリスを抱きしめてその腹を優しく撫でた。

「早く子を孕め。そうしたら足と目の呪印を解いてやれる。家族三人で仲良く暮らそう」
「馬鹿おっしゃい・・・」

ため息を吐くように言ったアリスは体勢を変えようとゆっくり体を動かす。体、特に膣に激痛が走って呻く。性行為を行った証だとマダラは嬉しそうに、背を向けたアリスのうなじに唇を這わせるが本人からしてみれば一連の行為は迷惑千万だ。
それでもまだ此方が折れなければならない状況ではない。妊娠する確率は意外と低いもので年齢や時期、状態などの条件が合っていても20%前後である。無論このようなことマダラが知っているはずもないが。

「なぁアリス、愛していると言ってくれ」
「消えてちょうだい」
「死ねとだけは言わないんだな」
「貴方も木ノ葉の人間だから」

淡々と呟くように言葉を発したアリスは最後に一つ大きなため息を吐いて会話の終わりを示す。流石のマダラもこの状態のアリスに無理強いはしないようで、抱きしめたまま大人しく眠りに入ったのだった。

──────────

そして次の日、仕事が休みだという事で朝からゆったりとアリスに寄り添って過ごすマダラの姿があった。無駄に過ぎてゆく時間にアリスは勿体ないと文句を垂れたがマダラは感慨深げに首を振る。

「こうして何もせず、ただ寄り添っているだけでも幸せだ」
「寄り添うだけなんて分身体でも出来るでしょう。他に何かすることはないの」
「・・・お前への贈り物でも考えるか」
「先ほどと変わらないじゃない。それに一昨日簪を貰ったばかりだわ」
「ならば今度は菓子にでもするか。別の国まで足を延ばして美味いものを買い付けてこよう」
「いらないったら。余計なことをして世間を騒がせないで」
「菓子も気に入らないか?なら何か欲しいものを言ってみろ。お前のためなら世界すら手に入れてみせる」

そこまで言うならやってごらんなさいよ。

喉まで出かかったその言葉を必死に呑み込んだ。他の者が言えば笑って流せる言葉だがマダラの場合はこれっぽっちも嘘に聞こえなくて怖い。下手をしたら自分の発言一つで忍界大戦が起きそうだ。
忍界VSマダラ・・・何故だろう、マダラがボロ負けする姿が思い浮かばない。まぁ柱間がいる限り最悪な事態にはならないと思うが。

それにしても欲しいものか。此処は適当に答えてマダラを満足させてしまった方が良いだろう。このままだとマダラの妄想が独り歩きをしてとんでもないところに行き着かねない。

「欲しいもの、欲しいもの・・・」
「何が良い。──そうだ、尾獣を知っているだろう。あれなんてどうだ。ちょうどミトに九尾が封印されているからすぐに狩ってきてやれるぞ。それともお前は政に優れているから火影の座もいいかもしれんな。柱間など蹴落として俺と共に思い通りの里を造っていこう」

もう危ないところまで来たか。ちょっと黙ってほしい。欲しいものなんていきなり言われても思いつかないし強いて言えば知識を得るための本が欲しいけど今の状態では読めないと思うとそれも・・・あ、

「目・・・目が欲しいわ」
「目?俺は今のが気に入っているからあまり気が進まないのだが」
「貴方は良いかもしれないけれど、わたくしは嫌なのよ。それで?貴方はわたくしが欲しいと言ったものをくれるのかしら」
「・・・仕方ないな。半分だけやろう」

半分?なんて中途半端な。どうせなら両目とも呪印を解いてくれたらいいのに。片目だと遠近が分かりづらくて色々と苦労してしまう。
不満に眉を顰めていると突然マダラが馬乗りになってきて両腕を足で押さえつけられる。

「マダラ、何をしているの」
「片目だけくれてやる。イズナから貰った何物にも代えがたい大切な目だが、お前となら揃いにするのも悪くない」
「──っ!ちょっと、待って!」

この男、ありえない方向に勘違いをしている。自分は呪印を解いてほしいと言う意味で「目が欲しい」と言ったのに何故目玉そのものが欲しいという解釈になった。しかもこの体勢、奴が次にとる行動など目に見えている。

「少し痛むだろうが我慢してくれ」
「いやっ!違うったら!話を聞きなさい!」

動かないように頭を掴んで目に手を伸ばすマダラ。愛おしげに瞼をなぞって、息の荒いアリスに「大丈夫だ」と声を掛ける。そして強引に目を開かせると眼球を抉り出そうと指を差し入れた。

「ッ、イヤアアアアァァ!!!やだっああああアア!!」
「大人しくしろ、アリス。すぐに終わる」
「誰かっ!!誰かいないの!!!あ˝あ˝ああああ!!!」

麻酔も消毒もしないまま、マダラの指が眼球を這う。痛みと恐怖で出来うる限りの悲鳴を上げるも足音ひとつしなかった。
ぐり、と指が目の奥まで差し込まれてそれを取り出そうと圧力がかかる。

「やめっ、ひっ!あぁぁ!っく、ハッ・・・、」
「落ち着いて、呼吸をしろ。大丈夫だ」
「ちがっ!いっ、やぁ!ぅああああ!!」

「何事ぞ!」

劈くような悲鳴の中、突如襖がスパーンと勢いよく開いた。マダラが動きを止めて其方に視線を移す。そこには声の主──柱間が険しい顔で立っていた。

「お前か。今日は来ると聞いていなかったが?」
「俺もいることを忘れてくれるな。アリス、助けに来たぞ」
「柱間、扉間・・・」
「助けに来た?アリスを?馬鹿言うな」
「本気だ。それより早くアリスからどいてやれ。酷く嫌がっていたじゃないか」
「お前等には関係ないことだろう」

柱間の言葉を跳ね除けるマダラに扉間が「兄者」と小さく呼びかける。それに頷いた柱間が印を組んだ。
途端、アリスとマダラがいる周辺の畳から樹木が生えてきて二人の間に割り入る。

「くそっ、柱間ァ!!」

後ろに跳んだところを更に追撃する樹木にマダラが声を上げて柱間に向かって走り出した。そのまま交戦に持ち込んだのを扉間は確認してアリスに駆け寄る。

「アリス、大丈夫か」
「えぇ・・・ギリギリと、いったところね。助かったわ・・・」
「取り敢えずここから出て俺達の家へ行く。いいな」

コクリと頷いたアリスを横抱きにした扉間は直後、飛んできたクナイを身を捩ってそこから飛びのいた。殺気を感じて振り向けば柱間と戦いながらも何とか此方へ来ようとしているマダラの姿が。

「扉間ァァ!俺のアリスから今すぐ離れろ!!」
「早く行け扉間!」
「ふざけんなよ!テメェなんぞに渡して堪るか!!」

振り下ろされた須佐能乎の腕が家の屋根を破壊して扉間に襲い掛かる。しかしあと一歩というところでアリスを抱えた扉間は飛雷神の術を使ってうちはの屋敷から脱出した。



零れ落ちる華
(掠め取ったのは)
(またあの白い男だった)

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