押して駄目なら押し倒せ | ナノ


光と足を失ったその日から、アリスの行動範囲はほぼ布団の上のみとなった。一日を過ごすにおいて俺の手を借りなければ何も出来ないアリスが愛おしい。唯一残念だと思うのは宝石に劣らない美しさを持つ気に入りの双眸に自分が映らないことである。しかしまぁこれは仕方がないと割り切るしかないだろう。

「喉が渇いたわ」

そっけない態度をとられるようになったがそれも気にならない。置いてあった水差しを手に取り口移しで水を飲ませてやって、再びじっとしているアリスに抱きつく形で時間が過ぎで行く。

「ねぇ、暇じゃないの」
「お前と一緒にいて暇だと思うものか」
「わたくしは暇だわ。暗い世界で、外の様子も分からず、好きに動くことも出来ず、人形のように過ごす一日。あぁ、柱間達ったら早く来ないかしら」
「・・・俺以外の男の話をするな。殺したくなる」
「冗談はやめてちょうだい」

こうしたやり取りが続いて数日、アリスはうんざりしたようにため息を吐いた。見えなくても分かるくらい豪奢に着飾った着物と装飾品が重い。なんだかもう本当に人形になった気分だ。
そんなことを思っていたら本体が仕事から帰ってきて分身体が消える。襖を開けたマダラは箱を手にしていた。

「アリス、今帰った」
「・・・おかえり」
「手を出せ」

彼がこういったときは大抵自分へのお土産を買ってきた時だ。深い口付けが終わった後、素直に手を出せばコトリと軽い何かが置かれたためそれをなぞってみた。造花が飾られた紐で縛ってある木箱だと理解したところでマダラから「開けてみろ」と声が掛かる。
蝶結びになっている紐を解いて中身を取り出し、形を確認するため手を這わせた。

「・・・簪?飾りは椿の花かしら」
「正解だ」
「もう。この前も菊やら鳳凰やらの簪をもらったじゃない。こんなにあっても使わないわよ」
「そんなことはない。毎日使うものだろう」
「貴方が勝手に飾り付けているだけでしょう。どこに行くわけでもないのに」
「妻が夫の前で着飾るのは当然だ」
「誰が妻ですか」

呆れた表情でため息を吐くアリス。唯一の救いは化粧をされないことくらいだろうか。流石のマダラも化粧品を扱うことは出来ないらしい。

「・・・アリス、いつまで意地を張っているつもりだ。俺はお前を好いているしお前も俺を好いている。一族も里の奴等も俺達が結ばれることを望んでいるらしい。何より裸の付き合いで既に契りも籠んだ仲だ。これだけのことがあったというのにまだ俺の手を取らないつもりか?」
「わたくしの行動はあの時一言想いを告げたことだけじゃない。それに貴方とは結婚しないと何度も・・・。何より貴方の言い分では色々とあったように聞こえるけれど、でもその全ては貴方からの一方通行だったわ。両者同意の上だったことなんてないでしょう」

押し倒されて馬乗りになったマダラの顔辺りを見上げてアリスは毅然と言い放つ。しばらくの無言が続いたが不意にマダラは体をどかしてアリスを起き上がらせるとため息を吐いた。

「やめだ。この話をするといつまで経っても決着がつかん。要するに結婚せざるを得ない状況を作ってしまえばいいのだろう。
 ・・・今夜にでも抱いてやろう」

グッと引き寄せられて耳元で低く囁かれる。どうしようか。マダラが同じ過ちを二度も繰り返すわけがないし正直チャクラも目も足も使えないのではお手上げだ。
食事の時間も湯浴みの時間も、アリスはマダラをどう退けようかということで頭がいっぱいだった。

そして夜、いつもより気持ちが高ぶっている様子のマダラにアリスは内心冷や汗を流していた。
“禁欲の反動は怖い”
それはアリスがここ数年マダラと攻防を重ねてきたて学んだことだ。こういう時のマダラは何をしでかすか分からない。何とか切り抜けられないだろうか。

「さて、アリス・・・」
「ねぇマダラ?」
「・・・なんだ」

布団に押し倒して寝衣の帯を解いたマダラはいつもとは違う様子で己の名を呼ぶアリスに胸を弄りながら聞き返した。

「貴方は子を作ろうととても張り切っているけれど、もしもわたくしに子が出来たとしたら、それはそれで貴方は後回しになるのよ」
「・・・」
「だってそうでしょう。子供は目が離せないのだから数年間は付きっ切りになるわ。もちろん夜は大人の時間だなんてことも言ってられないわよ。二十四時間三百六十五日、全て子供のために使うことになるわね。そう、例えば・・・朝は貴方の食事もそこそこに子供の食事に付き合い、昼食はお弁当だったのが食堂になり、夜仕事に疲れて帰ってきても一言労うくらいで後は子供の食事に湯浴みに付きっ切り。夜中もいつ夜泣きをするか分からないから寝られるときは寝てしまうし・・・。あらまぁ、これまでで一番擦れ違う生活になってしまうわね。マダラ、貴方はそんな生活をご所望かしら」
「・・・・・」

少々大袈裟に子供のいる生活を語ってみたところ、案の定マダラは黙り込んでしまった。「アリス・・・結婚・・・子供・・・」などと何やらブツブツ唱えている。数分かけてようやく答えが出たのか「アリス」と呼びかけてきた。

「俺は忍だ」
「え?えぇ、そうね」
「影分身でも幻術でも何でもできる。術を駆使すれば子供に付きっ切りになるとは思わない。二人の時間を十分とることが出来る。最悪使用人に任せてしまえばいい」
「子供をなんだと思っているの。そのように考えている人と子を作るなんて絶対にお断りだわ」
「俺は餓鬼ではなくお前が欲しいんだ。他はどうでもいい」
「わたくしはどうでも良くない」

イライラしながら返したアリスをマダラは鼻で笑うと、腕を拘束して唇で体をなぞり始めた。時々感じる生暖かい感触に体が跳ねる。鎖骨、胸、腹と順に降りてきて、腰まで来たところでハッとした。

「ちょっと待ってマダラ、」
「前戯に時間を掛ける余裕はない。だが少しは濡らしておかなければお前も辛いだろう」
「辛いとかそういう問題じゃ、っあ、」

陰核を擦るように舐めあげられて反射的に甘い声が出た。ジワリと滲む愛液に唾液を絡ませて割れ目に塗ったくっていくマダラ。十分に濡れたと思ったところで寝衣の前を肌蹴させて反り返った自信を取り出した。
入口に宛がえばアリスは顔を蒼くして騒ぐが別段気に留めずに奥へ押し入る。数年ぶりに堪能するアリスのナカは震えるほどに気持ち良かった。

「ん˝ん˝っ!い、ったい・・・痛いったら!馬鹿!痛いって、言ってるのがっ、聞こえないの・・・!」
「聞こえてはいる。が・・・っはぁ、やめるわけないだろう」
「最っ低っ。碌に抵抗できない相手にっ、ぐっう、無体を働くなんて、」
「ふん、せいぜい早く終わるよう俺を満足させるんだな」

根元まで入ったところで一度大きく息を吐く。キュッと収縮するナカに昇り詰めそうになるがそれでは勿体ないと何とか耐えて痛みに顔を歪めるアリスを見た。
そういえば此奴が快楽に乱れる姿は見たことがない・・・いや、毎回入れる前に余計な事をするせいで不完全燃焼で終わってしまうのだ。同じ過ちは繰り返したくない。

「おい、そろそろ慣れたか?動くぞ」
「駄目、うぁっ、っ、やだったら!っつ、アアァ!っうぐ、馬鹿ァ!」
「お前はいつも否定の言葉しか言わないな」

遠慮なく突いてくるマダラにアリスはシーツを強く掴む。初めて最後までいった時から数年が経過しているのだ。あれ以来全く使っていなかった膣に無理矢理入れられて、こうも乱暴に腰を動かされては激痛しか走らない。
反対にマダラはというと兎に角快楽を貪っていた。痛がっているのは分かっているがどうしても理性よりも本能が勝ってしまう。

「ア˝ア˝ッ、いっ、たい、んっ、くっうう、」
「っは、あ、──っ、アリス・・・!」
「っ、やだ!抜いて!外で出して!」

マダラがアリスの奥に男根を押し付けた瞬間、弾けた欲がナカに注がれてアリスは焦って彼を押したり叩いたりする。しかしそれを気にすることなく精を吐き終えたマダラは深く息を吐いて脱力すると繋がった状態のままアリスに被さるように体を倒した。

「馬鹿!最っ低!毎回毎回無理矢理・・・!わたくしは人形じゃないのよ!」
「だが心は通っている。そして体も繋がった。なぁアリス、これでもまだ他の男に嫁ごうとするか?」
「政略結婚に愛は必要ないわ。他に想い人があったとしても結婚相手との間に子供が出来れば問題になることはない」
「そう言うが時期的に見てももう里外には手を組むような一族や村は残っていないだろう。今じゃ里の中で相手を見つけるのが当たり前になっている」
「本来ならわたくしもマダラも里の創設者として相応の相手を見つけるはずだったっ。なのに貴方が余計なことをするせいで・・・!」
「過ぎたことを言っても仕方ない」

マダラはアリスの頬を一撫ですると再び腰を降り出す。ナカに納まっていた欲が溢れてきて、動くたびにグチュグチュと音を立てた。

「痛っ、マダラ!もうっ終わった、でしょ!早く抜いて!っぅく、痛いったら!」
「我慢しろ。俺はまだヤリ足りない。まだしばらくは付き合ってもらうぞ」
「やだっやだぁ!ふっう˝、く、アアッ!ったい、痛いって・・・いやぁぁ・・・!」

奥を突かれて体が揺れる度、意識が混濁してくる。胸を掴まれて口付けられて、何が何だか分からないまま痛みに悲鳴を上げていた。そんなアリスさえも愛しくてマダラのモノはどんどん固く大きくなっていく。

「はっはぁっ・・・っく、愛して、いる、アリス」
「うあ˝っ、アアッ、ぐっぅ、いたいぃ!やめっ、ぅっあああっ!」
「嫌がってばかりいるせいで良くなれないんだ。少しは俺を受け入れてみろ」
「やっ、むりっ、くっふぅ、は、あぁぁ!痛い、ったら!ひっく、」
「おい、泣くな」
「馬鹿、痛いって、アアッ、っく、言ってるのに・・・!早くっ、抜いてっ!」
「俺があと数回イったらな。それまでは泣こうが喚こうが抜かん」
「っは、ああ˝っ!このっ、外道!いやあああ!」
「なんとでも言え。はぁっ、くっ、出すぞ・・・!」

肌と肌がぶつかり合ってマダラが二度目の射精を終えた頃、アリスの体からくたりと力が抜けた。頬を軽く叩いて名を呼ぶが起きそうにない。

「チッ、気をやったか」

まだ満足したとは言えない状況だが全く反応のない相手に突っ込んでも面白くない。せっかくアリスと繋がることが出来たのに。

「・・・仕方ないな」

マダラは自分のモノを抜いて一息ついた。タラタラと欲が流れ出るアリスのソコを見て口角を上げた後、荒い息を繰り返すアリスを引き寄せて首元に赤い花を咲かせていく。
十ほど付けたところで頭を掴んで自分の下半身に近付けた。口をこじ開けて男根を咥えさせると思い切り腰を振る。

「ん˝っ、ぐっ、ぅえ、──んんっ!?ぐえっ、げほっ!ん˝ぇっ、あう˝っ」
「あぁ、起きたか」

無理矢理起こしたところで口から自分のモノを出す。また噛まれるのは御免だ。

「はっ・・・けほっ・・・マダラ・・・?」
「誰が寝ていいと言った。さっさと続きをやるぞ」
「待って・・・体が痛くて、ひぃっああああ!」

うつ伏せから腰を持ち上げてイチモツねじ込む。シーツを掴んで悲鳴を上げるアリスに「あの頃と同じだな」と囁けば腕を使って逃げようとした。引き戻すついでに奥を突けば再び襲ってくる痛みに体が強張る。

「さぁアリス。俺のために踊り狂え」
「だ、誰か・・・いやあああああぁぁぁ!!」

月が里を淡く照らす晩、うちは邸にアリスの悲鳴が響き渡った。



獣と快楽と痛みと
(身を捩り泣き叫ぶ姿に欲情する)
(そういえば最近笑った顔を見てないな)
(・・・まぁいいか)

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