5-1 「ねぇ君、お友達と待ち合わせ?」 八雲雲雀、人生初のナンパにあっております。 事の発端──というか雲雀がナンパ男に話しかけられたのは、LI○Eで話題に出たカフェに行くために五条と待ち合わせをしている最中のことだった。 任務を終えてこちらに向かっているはずの五条を待っていたところで、横から顔を覗き込むようにして話しかけてきたナンパ男。 雲雀は職業柄なのか嫌な顔をせず笑顔を向けた。 「そうですけど・・・どうかされました?」 「さっきからここにいるじゃん?俺も友達待ってるんだけど中々来なくてさー。話しながら一緒に待たない?」 ニコニコと人当たりのいいナンパ男に、雲雀は話すだけならいいかと考えてこちらも人当たり良く了承する。 「今日は休み?っていうか学生?社会人?」 「社会人ですよ。今日はお休みです」 「おー、オトナだ!何してる人?」 「神社で巫女をしています」 「え、マジ!?写真ある!?」 ないです。と答えると大袈裟に残念がられた。 明らかに下心のある様子のナンパ男だが、雲雀は何を考えているのか考えていないのかニコニコと会話を楽しんでいる。 「じゃあさ、今度仕事終わりにご飯行こ!神社まで迎えに行くから巫女さんしてるところ見せて!」 「夜ご飯ですか?うーん、そうですねぇ・・・」 会話だけならまだしも、流石に下心があると分かっている男と夜ご飯は良くない。 酒の出るお店に行くに決まっているからだ。 「うん?あ、もしかして彼氏持ち?」 「いや彼氏はいないんですけど・・・」 「彼氏候補はいるからナンパはお断りだよー」 「あ、五条さ、んっ!?」 ナイスタイミングです。 そう思って、肩に腕を回して横に並んだ五条を見上げた雲雀の言葉が跳ねた。 誰ですかこのイケメン。 いつも目に巻いていた布が首元に落ちていて、綺麗なご尊顔が見上げた先にあった。 あのふざけた性格からは想像もつかない容姿に目を見張ったまま固まった雲雀。 ナンパ男も高身長イケメンに気後れしたのか適当に話を濁して去っていった。 「いやーまさかナンパされてるとは思わなかったよ。遅くなってごめんね」 「う、あ・・・だいじょうぶ、です」 「んー?どうしたの?もしかして僕が格好良すぎてびっくりしちゃった?」 ズイ、と顔を寄せる五条に雲雀は一歩二歩後ずさる。 この人顔良すぎる。あの性格でこの顔とか想定外すぎる。ドキドキしてしまうからあまり見つめないでほしい顔近づけないでほしい。なんなら私じゃ釣り合わないから隣歩けない。 雲雀の心境としてはこんな感じで大荒れだった。 「アッハッハッ!顔真っ赤!なになに初心なの?雲雀ちゃん初心なのー?ゴジョーサンが初めての人になったげようか? ──って、え、なんで急に真顔?さっきの真っ赤な初心雲雀ちゃんはどこ?」 「やっぱり人って顔より性格が大事なんですねぇ」 五条さんは五条さんだった。うん、目が覚めました。 ニコリと笑みを浮かべた雲雀は「お仕事お疲れ様です」と何事もなかったように声を掛ける。 「あ、はい・・・」と態度の変化についていけないまま返事を返した五条に構わず、彼女は予定のカフェへ向かい始めた。 「もー、照れなくていいのに」 「顔が良いぶん悪質ですよ。夜道を歩く時は背後に気を付けてください」 「大丈夫大丈夫。僕最強だから」 首元に落ちていた布を直しながら隣を歩く五条が笑って言う。 実際最強なため後ろから刺されるようなことはあり得ないが、それを知らない雲雀は「(いつか女の子から報復されてもおかしくない)」などと割と本気で考えていた。 ────────── 少し歩いて到着した今回のカフェの目当てはビッグパフェだ。 メニューを開いて楽しそうに悩む雲雀だが、五条は何か気になることがあったのか彼女をジッと見ていた。 「甘酸っぱいフルーツ系もいいけど、もったりした甘さのキャラメルとかも捨てがたい──ん?五条さんどうしました?」 「いやー、雲雀って甘いものよく食べてるなぁって思って。結構頻繁に写真送ってくれるじゃん?食べてる割に太ってないよね」 「・・・五条さん、デリカシーって言葉覚えたほうがいいですよ」 上から下までを一瞥して、遠慮なしに女性の体形に突っ込んでくる五条に雲雀は呆れ気味に言葉を返す。 「知ってる知ってるー」と笑いながらメニューを捲る彼は一通り見た後チョコパフェに決めていた。 雲雀も苺パフェに決めて、店員にオーダーを通した。 [ back ] |