●●●ぼーいずとーく。
※ちょっとだけお下品です。
どれだけ広かろうと、男風呂とはかくにむさ苦しいものだ。
そして思春期男子高生がこれだけ集まれば、自然と飛び出るのは"悪ノリ"と"下ネタ"だ。
音駒の黒尾が湯船に浸かっていると、リエーフが思い切り飛び込んでくる。
「リエーフ!飛び込むんじゃねぇ!」
「だってでかい風呂楽しいじゃないですか!」
見た目の通りの外国人の初めてのお風呂ならまだ解るが、リエーフは日本生まれ日本育ちだ。
黒尾がリエーフの頭をガッと掴む。
「お前は毎度毎度いい加減にしないと沈めっぞ…!」
「(ぶくぶくぶく…!)」
既にちょっと沈んでいたが、黒尾はすぐに手を離す。
リエーフはちぇーっと言いながらスイ〜っとお湯の中を移動する。
大浴場には各校がそれぞれの学校のメンバーの様子を見て入るので、割と分散されて入ってくる。
その為、なかなかギューギューになる事はなかった。
今この湯船にも黒尾とリエーフの他には、生川と森然の各主将が入っているだけだった。
黒尾が風呂の中で肩を回してストレッチをしていると、そこに梟谷の小見・木葉・猿杭が入ってくる。
「チッス。お邪魔しまーす。」
「おー。」
軽く挨拶して湯船に入ってきた三人が息をつく。
「あ、そういや黒尾。烏野のマネちゃんの一人音駒にいるよな?」
「んあ?あぁ。跳子ちゃんね。うちにゃマネージャーいねーからな。」
「そーだけどっ!あの子可愛いよな!烏野主将とデキてんのかなー?」
小見が黒尾に話しかけたことがきっかけで、梟谷の3人の間で烏野マネの話に花が咲く。
「俺としてはあの美人マネの清水さんに攻められてー!」
「何、お前そっち系!?むしろあぁいうS系女子が実は自分の前でだけMっぽくなるのがいいんじゃん!」
「俺は正統派でMなら鈴木さんか谷地さんに求める!」
「お前ら風呂でそーゆー話やめろよ!ヤバイだろ!」
「えーナニがー?(笑)」
黙って聞いていた黒尾に、木葉が話を振る。
「黒尾はどの子がいーの?」
「あ?俺?烏野でって事か?」
コクコク頷く3人に、黒尾はニヤリとして答える。
「…3人ハーレムで酒池肉林だな。」
「最低!黒尾、最低!」
「…冗談だよ。そりゃ手伝ってもらってっし、跳子ちゃんだろ。…なぁ、お前らはどーなの?」
黒尾が、会話に参加しないようにしていた生川と森然の両主将を捕まえる。
黒尾の悪い顔に、逃げるのは得策じゃないと悟った二人も観念して話に入った。
「…はぁ…。まぁ全員可愛いし、キレイだと思う。誰と言われれば、チョコチョコ不思議な動きをする谷地さんが可愛い、な。」
「元々レベルの高いうちのグループのマネちゃんズをさらに上げたくらいだしな。俺は正統派美人の清水さんのがタイプだなー。」
へぇぇ、と笑っている黒尾を見て、木葉がふと思ったことを口に出した。
「…なんか黒尾ってマニアックなプレイとか要求しそうだよな…。」
「あぁ?」
「「「なんかわかるわー。」」」
「てめーら…!」
全員からなんだか失礼な同意を得てる。
「コスプレとかくらいならわかるけどなー?看護婦とか!」
「女教師!」
「メイド…」
「女子高生!」
「いや、それ普通だから!」
(あ。)
次々に出てくるコスプレ案の最中に黒尾がある事に気付き、その輪からスーっと消えるように離れて端に寄っていく。
「リエーフは?誰がいい?」
「俺は跳子なら何でもいい!絶対何着ても可愛いし、何も着てなくても可愛い!」
「「「ぶっ!」」」
リエーフの発言にビックリして梟谷の3人が吹き出す。
「そんなん当たり前だわ!清水さんだってヤバイっしょ!」
「いや、谷地さんもなかなか脱いだら…!」
途端に背後から、突然冷たい冷気が押し寄せる。
(?お湯に浸かってんのにおかしーな?)
疑問に思って振り向くと…
「お前ら…うちのマネたちを捕まえて、何の話をしてるんだ…!?」
「「「!!」」」
冷気を放つ黒澤村と烏野軍団の一部が大浴場に入って来ていた。
「いや、今のは、その…」
「−問答無用〜っ!!!」
「ギャーー!!」
田中と西谷が湯船に突撃し、菅原も笑顔だが青筋が見えるので止める気配はない。
大騒ぎになる皆を、我関せずと傍観する黒尾。
怒れる烏が落ち着いた頃にニヤリと笑って息も絶え絶えの全員に聞く。
「…つまりお前らは全員、烏野のマネがいいの?」
全員がキョトンとした後、いや、と声を揃えて当然のように答える。
【自分んとこのマネージャーが一番です!!】
「…あーそーかい。」
結局支える人の努力は、支えられる人が一番よく知っている。
聞いた黒尾が興味なさそうに舌打ちするのを見て、澤村が思わず声に出して笑った。
−そして、隣の女子風呂では、烏野以外の女子が顔を赤くして湯船に浸かっている。
「アイツらぶん殴ってやろうと思ってたのに…!」
「怒れなく…なっちゃいましたね…」
「バカ…!」
「…まぁ明日からも頑張りますか〜」
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