長編、企画 | ナノ

縁下力&木下久志&成田一仁



残った2年生3人が、跳子と目を合わせてため息をつく。

「跳子…、もう俺ら悪い予感しかしてないんだけど…。」
「もっとこう普通なのないのかよ。」
「いつの間にか百鬼夜行っつかゲゲゲシリーズになってない?」
『最初は違ったハズなんだけど、なんか妖怪っつったらあのイメージ強くってさー…。』

そこまで言った跳子が、「しかし心配なさるな!」とチチチと3人に向かって人差し指を振る。

『3人にはセットである妖怪を演ってもらうよ!』
「跳子もちょっとキャラ壊れてきてないか…?」
『だって考えてる時、気分は演出家!だったんだもんー。』

最後に残った袋を上機嫌で渡しながら跳子が言った。

『縁下には"透明人間"とか一瞬思ったんだけど、あれって妖怪?とか思ってさー。』
「オイ!透明人間ってどういうことだよ。」
「「ぶっ。」」

笑いながら3人が着替えてみれば、確かに3人ともお揃いっぽい恰好。
動物の耳のようなものと大きな尻尾から、縁下が「…リス?」と首を傾げる。

『イタチだよイタチ!3人セットで"鎌鼬"!』
「へぇ。確かに聞いたことあるかも?」
「なんだっけ?つむじ風の正体とかだっけか?」
「しかし見た目じゃわかりづらいなぁ。」
『まぁねー。確かに解りにくいから迷ったんだけど、でも個人的にちょっと好きな妖怪だから入れたかったんだ。』
「へぇ。どんな妖怪なんだ?」

その言葉に嬉しそうに笑った跳子が縁下に壺を渡す。

『長男が人を転ばして、次男が小さな傷をつけて、最後に三男が傷を治していくの。』
「ふむ。つまりこれは三番目の薬壺か。」
『正解!ひっそりと人里に暮らしながら、そうやって縄張りを守るんだって。三位一体の優しい風の妖怪なんだー!』
「…まぁお前が楽しそうで何よりだよ。」

受け取った縁下が二人と一緒に優しく笑った。


|

Topへ