長編、企画 | ナノ

東峰旭



「あれ?跳子ちゃん、持ってきた紙袋は二つだけ?俺の分は…?」

東峰が跳子の手元を見て不思議そうにそう言うと、それを見ていた妖怪姿の二人組はニヤッと笑った。

「ホントだ。旭の分はないってこと?」
「新手のイジメか?」
「えっ?!そんな!ヒドくない?!」

急に泣きそうになる東峰の姿に跳子が慌てて口を開いた。

『いやいや、そんなわけないじゃないですか!もちろん旭先輩のも用意してあるんですけど…ちょっと入らなくて…。』
「「「??」」」
『旭先輩、ちょっと来てもらえますか?』

紙袋に入らないくらい大物なのか、と疑問に思いながら東峰が跳子についていく。



「………。」
「「ぶっ。あははははははは!!」」

入口に急にぬーんと現れた影に驚き、思わずそちらを見た澤村と菅原がたまらずふき出す。
大きなその身に影を背負ったかのように、東峰の顔まで暗くなっていた。

「似合うじゃないか、旭!」
「うぅっ。ヒドイ…!」
『ちょっと気合入れて作りすぎて、入口通れなくなっちゃったんですよね。』
「跳子ちゃん、そんな気合いらないよ!」

その後ろからひょっこり顔を見せた跳子がそう言えば、東峰が涙目で反論する。

真四角の巨大なグレーの岩から顔と手と足首だけが出ているその姿は、まさに"ぬりかべ"だった。

『えっ、でも正直一番大変だったんですよ?!決まった衣装もないし!』
「まぁ、衣装というよりハリボテだもんな。」
「これ作ったのか。跳子すごいなぁ。」
「うぅぅ。」

結局人のいいぬりかべは、頑張ってくれたという跳子に涙目のまま「ありがとう」と言った。


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