長編、企画 | ナノ

1年4組の日常



帰りのHRが終わり、途端にざわつき始めた1-4の教室内に一際大きな声が響き渡る。

「鈴木ー!」

ちえとゆかと、帰り支度をしながら新しくできるケーキ屋さんにいつ行くかを話していた跳子は、呼ばれた声の大きさに肩を揺らす。
見れば同じクラスの山田がこっちに向かってきていた。
またか…、と小さくちえが苦笑する。

「今日こそサッカー部見に来てくれよ!」

キラキラとした目を跳子に向けながら、山田はいつもの台詞を口にする。

『う、うーん…』
「見てくれれば絶対面白いのがわかるから!」
『ちょっと今日はやめておこうかな…!』
「えーー!またかよー!!」

不満げな顔を隠そうともせず、山田はブーブーと口を尖らせた。
このやりとりもいつものことなのだ。
跳子がどうしたものかと思案していると、隣から舌打ちとともに不機嫌オーラを感じ、慌てて振り向いた。

「邪魔なんだけど。」
『つ、月島くん!ごめんなさい!!どうぞ!』
「…。」

無言で通っていく月島を皆で思わず見送る。

(…はっ!今がチャンス!)

『ご、ごめんね!じゃあ三人ともまた明日!部活、頑張ってね!』

逃げるが勝ち。
脱兎の如く。
早々と教室から出ていく跳子にはそんな言葉がピッタリだった。

「くっそー、なんでだよ…!」

落ち込む山田を見て、ちえとゆかはケタケタと笑いながら席を立った。

「ご愁傷さまー。山田も懲りないね。」
「だってマネやってほしいし!!俺は負けない!」
「空気読めない男としつこい男って嫌われるわよねー。」
「えっ…!」

さらにめり込んだ山田を尻目に、ヒラヒラと手を降りながら二人も教室を出る。

少し進んだ所で、ゆかが小さく口を開いた。

「…跳子は笑って今はまだ何も言わないけどさ」
「んー?」
「中学の時、部活で何かあったんだろうなって思うよ。」
「…そうだね。」
「早くふっ切れるといいね。」
「何か言ってきたらバシッと活を入れてやろ!」

お互いに頷いてちょっと笑いあってから、それじゃあとそれぞれの部活に向かった。


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